米陸軍大型揚陸艇、横須賀の海自護衛艦隊司令部前に停泊


横須賀・長浦港の海自護衛艦隊司令部前に停泊するLCUハーパース・フェリー(2020.2.3 頼 撮影)


長浦港に停泊するハーパース・フェリーのマストをよく見ると、えんじ色の米陸軍輸送科の旗がぶら下がっていた。(2020.2.4星野撮影)

 米陸軍大型揚陸艇(LCU)ハーパース・フェリーが2月初め、横須賀・長浦港の海上自衛隊護衛艦隊司令部前に約4日間停泊し、その後沖縄に向かった。
 海自も米軍も特に何もコメントを発表していないが、米陸軍LCUを海自護衛艦隊司令部前に停泊させるという運用は、これまで無かったことではないだろうか。市民にほとんど何も知らせず、市民の意見も聞かずに進む「日米軍事一体化」の一つの現れなのだろう。

 そもそもハーパース・フェリー(LCU2022)は、横浜ノースドックに「保管」されていることになっているはずの、10隻の米陸軍大型揚陸艇のうちの1隻だ。
米軍は、2002年にLCUなど揚陸作戦セットを横浜に運び込んだとき、外務省を通じて「@艦船は燃料を抜いて保管するA運航はしない」と横浜市に説明したはずだった。
しかし、米軍はその後、約束を平然と破り捨てた。そして、日本政府も横浜市も、米軍の約束など聞いたことがないかのような振る舞いを続け、明白な約束違反を咎めようともしない。
横浜に運び込まれたLCUは、米韓合同軍事演習で使用されるようになり、さらに、自衛隊との合同演習や自衛隊の車両の海上輸送にも使われるようになった。
また、近年は2隻ずつ沖縄に派遣され、東アジアや東南アジアの米軍基地及び演習地などを結ぶ小型輸送船として当たり前のように運航されている。ハーパース・フェリーも、昨年7月から米陸軍輸送科の旗を掲げる小型輸送船として沖縄を拠点に活動しており、1月25日に一時横浜に戻ってきていた。


ハーパース・フェリーの甲板上には、AMMPS(可搬式の発電装置)とみられる装置や複数のコンテナなどが積まれていた。


コンテナには「PACOM」「DJC2 004」「DJC2 006」の文字が見える。(2020.2.4 星野 撮影)

 ハーパース・フェリーが横浜ノースドックを出港して、横須賀の長浦港の海自護衛艦隊司令部前に接岸したのは、2月1日の午前中のことだ。
その翌日以降に現地で確認したところ、長浦港に停泊中のハーパース・フェリーの甲板上には、「PACOM」や「DJC2」などの文字が書かれたり貼られたりしている複数のコンテナと、複数のAMMPS(Advanced Medium Mobile Power Source)(可搬式の発電装置)と見られる装置などの物資が搭載されていた。
コンテナに書かれた「PACOM」は、The United States Pacific Commandすなわち米太平洋軍、現在のインド太平洋軍を意味しており、「DJC2」とは、Deployable Joint Command and Controlを意味している。組み立て式の野戦指揮所のセットが入ったコンテナなのだろう。発電装置も、野戦指揮所で使用するためのものだろう。
 1月31日の午後の比較的早い時間、横浜ノースドックにいたハーパース・フェリーの甲板上には、それらのコンテナや発電装置などの物資はまだ載せられていなかったことが確認されている。では、いつ、どこでハーパース・フェリーの甲板上に載せられたのだろうか。

 長浦港に停泊していたLCUハーパース・フェリーは、2月5日の未明に沖縄に向けて出港したのだが、その後の動きも妙だった。
 もともと速度の出ないLCUではあるが、普段よりもさらに遅い7ノット台のゆっくりとした速度で、本州、四国(高知沖)、九州(宮崎、鹿児島)、種子島、屋久島、奄美大島の海岸線をなぞるように航行したのだ。通常であれば、LCUといえども横浜と沖縄の間の航海の際に、海岸線をなぞるような航路を辿ることはしない。何かの演習の一環だったのだろうか。
 ハーパース・フェリーが沖縄のレッドビーチに入港したのは、2月9日の朝6時50分過ぎだった。しかし、そのわずか約3時間半後の午前10時30分前には、再びレッドビーチを出港している。南西方面、フィリピン方面に向かったようだ。

 なお、横浜ノースドックの10隻のLCUのうち、カラボザ(LCU2009)は、1月17日に横浜港内の船舶補修工場、横浜工作所に回航された。横浜工作所では昨年10月よりLCUフォート・マッケンリー(LCU2020)も整備工事を行っていたため、2隻のLCUが横浜港内の同じ民間工場に並ぶことになった。

(RIMPEACE編集部 星野 潔)


横浜工作所に並ぶLCUフォート・マッケンリー(「20」の船)と、カラボザ(「09」の船)。(2020.1.30読者撮影)


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