横浜NDにクウェートの基地からMCSを大量搬入


10月23日の朝、浮き桟橋(MCS)を満載して横浜NDに接岸したオーシャン・ジャズ(2020.10.23 読者撮影)


10月23日の昼前には、オーシャン・ジャズ備え付けの巨大クレーンを使って、MCSの陸揚げ作業が始まった。(10.23 星野 撮影)

10月23日、貨物船オーシャン・ジャズが横浜ノースドックに入港した。入港したオーシャン・ジャズの甲板上には、米陸軍が揚陸作戦に使用する浮き桟橋セットMCS(Modular Causeway System )が満載されていた。

今回、オーシャン・ジャズは、クウェートのシュアイバ港を現地時間の9月29日に出港して横浜にやってきた。ということは、大量のMCSはクウェートから運ばれてきたということだろう。

クウェートは、米軍が戦争するための兵器や資材を事前に集積配備しておく米陸軍事前配備貯蔵APS(Army Prepositioned Stocks)の拠点だ。米軍が海外で戦争する際の橋頭堡を作るためのMCSは、 APSで集積配備されるさまざまな装備のうちの主要品目の1つとなっている。

世界に5つあるAPSのうち、相模総合補給廠や韓国の大邱とともにAPS-4を構成している横浜ノースドックには、米陸軍の揚陸作戦用の資材が集積配備されており、既にMCSも大量に保管されている。 これらは21世紀に入ってから、多くの反対や懸念の声を無視して米軍が横浜に搬入を強行したものだ。

APS-5の拠点であるクウェートにも、MCSが大量に保管されていたのだろう。


10月24日も陸揚げ作業は続いた。ふ頭の先端部と倉庫の陰の2箇所に並べられているのが確認できる。(10.24 星野 撮影)


搬入され、仮置きされたMCSなどの資材の一部(10.25 星野 撮影)

さて、10月23日から24日にかけて、オーシャン・ジャズからMCSや関連物資などが次々と陸揚げされ、ノースドックのふ頭の先端部や倉庫の陰に並べられた。それらは10月29日までに、 ノースドック中央部のMCS集積保管場所にコンテナハンドラーなどを使って運ばれた。

その直前には、それまで横浜NDの中央部に置かれていたMCSの並べ方を変えて、新たに追加搬入される大量のMCSを置くスペースを確保する作業も行われた。

つまり米軍は今回、APS-4の拠点である横浜NDに、中東のAPS-5から戦争資材を大量に移動させて新たに追加配備した、ということではないか。そうであるならば、これは横浜NDの基地機能強化、 米軍の海外攻撃拠点としての機能の強化そのものだ。

しかし、不思議なことがある。横浜NDへの今回のMCS追加配備、基地機能強化について、日本政府からも横浜市からも神奈川県からも何も声が聞こえてこないことだ。何の説明もなされていないし、 米軍が何を言っていて、米軍とのあいだでどのような議論を行ったのかも明らかにされていない。
日本政府は、横浜市や神奈川県に事前に追加配備を説明したのか。横浜市や神奈川県は、追加配備の事実を知っているのか。

そもそも、横浜の市民をまったく無視して事が進められているのは、端的に言って民主主義の原則を踏み外している。

横浜港における基地機能強化、すなわち、米軍の戦争資材の拠点としての機能をさらに強化することを認めるのか否かが問われている。

(RIMPEACE編集部 星野 潔)


クウェートからの搬入前から、横浜NDの中央部には、MCSが大量に保管されていた。(10.1 星野 撮影)


新たなMCSの搬入直前に、それまで並べられていたMCSの置き方を変えて、追加搬入できるスペースが空けられた。(10.24 星野 撮影)


クウェートからの追加搬入か完了した横浜NDのMCS置き場。10月1日の写真と比べて、より「密」に、大量に保管されるようになった。
(10.29 星野 撮影)


2020-11-8|HOME|