横浜ノースドックの戦時備蓄倍増の恐れ (3)

クウェート(APSー5)に保管されている陸軍舟艇


2015年時点での陸軍舟艇の船種別分布状況

前稿(戦時備蓄倍増の恐れ−2)で掲載した、陸軍舟艇システムのプレゼン資料の「艦隊概観」には、正規部隊(AC)、予備部隊(RC)、事前備蓄(APS)の3つに配備されてい る陸軍舟艇の数が出ている。さらにそのプレゼン資料の次ページには、各舟艇の任務が書かれている。(下掲)

「艦隊概観」にあるように事前備蓄(APS)はAPSー4とAPSー5、つまり横浜ノースドックとクウェートのものだ。ノースドックに保管してある各船種の数はわかっているので、 残りがクウェートにある船の数ということになる。
一瞥してノースドックに保管されているのと全く同じ規模の舟艇セットが、クウェートに置かれていることになる。

この舟艇セットは、下図の任務表からも読み取れるように、大量の車両や物資を洋上の貨物船(事前集積艦)から陸上に送り込むのにそれぞれ役割が決まっている。このセットを構成す る舟艇たちが欠ければ、スムースな揚陸作戦の遂行は望めない。

例えば、10月に貨物船オーシャン・ジャズが運び込んだいかだセット(MCS)は、それ単独では文字通り動きがとれない。海上で移動させ結合させるために専門の平タグが必要だ。
組みあがった大いかだの上に降ろされた戦車やトラックなどを陸まで運ぶのが大型・中型揚陸艇だ。

要するにセットの中の舟艇はいくつかに分けて保管したのでは意味がなく、まとまって保管されるのがポイントだ。
今回のLCU2隻といかだセットのノースドックへの搬入は、クウェートのセットが根こそぎ横浜に持ってこられる流れの始まり、という可能性が高い。

(RIMPEACE編集部 頼 和太郎)


米陸軍訓練教義コマンドの陸軍舟艇システムのプレゼン資料より。ノースドックに備蓄されている陸軍舟艇の任務も書かれている


2020-12-1|HOME|