横浜ノースドックの戦時備蓄倍増の恐れ (7)

米軍の注視先、中東から中国・ロシアにシフト


クウェートから運ばれた浮き桟橋セットMCSが2日がかりでノースドックに降ろされた(20.10.24 星野 撮影)


運搬船が出て行った後のノースドックに仮置きされたMCSなどの資材の一部(10.25 星野 撮影)

2019年1月に明るみに出た陸軍上陸用舟艇と海上能力の縮小プランは、実際に進められた。

連邦政府調達局(GSA)の払い下げ装備品入札リストに陸軍上陸用舟艇が載せられた。小型タグ(ST)14隻、大型タグ(LT)6隻、クレーンバージ(BD)2隻、大型揚陸艇(LCU)18隻、 兵站支援艦(LSV)2隻以内、中型揚陸艇(LCM)36隻以内、という見出しが、GSAの入札リストに出た。(2019年7月12日付け gCaptain の記事)

装備の削減のための入札が進められようとした矢先に、この陸軍揚陸部隊削減の動きにストップがかかった。
入札リストが取り下げられ、削減計画の進行が「突然」止められた。(THE WARZONE,2019.7.29)

それ以降、予備役部隊が削減されたとか、LCUが売りに出された、という話は出ていない。ただ、コスト削減のための陸軍揚陸部隊削減計画が取り消されたわけではない。進行が ストップしたまま、という位置づけだった。


貨物船トライアンフに積まれてクウェートから横須賀沖まで来た2隻の米陸軍大型揚陸艇(LCU)(2020.11.7 木元 茂夫 撮影)

2020年10月にクウェートから、陸軍揚陸部隊の装備の浮桟橋セット(MCS Modular Causeway System)が横浜ノースドックに運ばれてきた。
同年11月にはクウェートからLCU2隻が特殊な貨物船に乗せられてやってきた。
陸軍揚陸部隊削減計画が見直された結果とみられる。部隊の削減は後回しにして、クウェートに備蓄してあった装備を動かし始めたのだ。

クウェートに置いてあった装備を全部横浜ノースドックに集めて、管理業務を一本化するのか、それとも一部は横浜に、その他は処分するという動きの始まりなのかは、まだわからない。今後、横浜ノースドックに上陸用舟艇がどんどん運び込まれたりすれば、ノースドックが揚陸部隊の装備の一大集積地になる。

MCSとLCUがクウェートから横浜に運び出されたのと時を同じくして、これまでペルシャ湾内でカタールやアラブ首長国連邦に物資を届けていたLSV2隻が、20年間滞在したクウェートを離れてスエズ運河、地中海を経由して大西洋を渡り、米本国の基地・ヴァージニア州フォート・ユーティスに向かった。

中央陸軍広報担当の少佐は、2隻のLSVが中央軍の責任エリアを離れて本国に向かっていると述べた後、これは中東における軍の再編成だとして次のよう付けくわえた。「米国は、長い目でみて紛争が終わりに近づいている地域から駐留軍を引き上げるようにしている。と同時に上層部は、中国やロシアの影響力が増している地域はどこであれ、注視し続ける。」(2020.8.7 ARMY TIMES)

クウェートから日本への戦時備蓄物資の移動は、その流れに沿っている可能性がある。(次回、参照資料などのリストでいったん中締め)

(RIMPEACE編集部 頼 和太郎)


クウェートから本国に戻ったLSVの同型艦クリンガー。4年半前に、一時ノースドックに寄港した(2016.9.18 頼 撮影)


2021-3-1|HOME|