横浜に陸揚げされたオスプレイ、米軍は説明を拒否


横浜ノースドックに陸揚げされ、駐機していたCV−22オスプレイ。 (2021.7.3星野撮影)


7月1日、オスプレイとその周囲で作業する兵士たち。(7.1星野撮影)


 6月29日に自動車運搬船グリーン・レイクから横浜ノースドックに陸揚げされたCV−22オスプレイは、7月6日の午前、ふ頭の先端部から離陸し、横田基地に向かった。横田基地に配備される6機目のCV−22となったようだ。

 しかし、横浜ノースドックは、飛行場でもヘリポートでも無い。航空法第79条は、航空機の離着陸の場所について、「航空機(中略)は、陸上にあつては空港等以外の場所において、水上にあつては国土交通省令で定める場所において、離陸し、又は着陸してはならない。(後略)」と規定している。「空港等」ではない横浜ノースドックのふ頭からの離陸、飛行は、この法律の趣旨に一見して明白に反している。

とは言え、確かに、航空特例法によって、日米地位協定にもとづいて運航される「航空機及びその航空機に乗り組んでその運航に従事する者」については、第79条を含む航空法第6章は適用されないことが規定されている。

 しかし、1999年8月13日付けで公表された「衆議院議員濱田健一君提出在日米軍による低空飛行訓練に関する質問に対する答弁書」によれば、「米軍は、低空飛行訓練を行うに際し、最低安全高度に関する法令を含め、我が国法令を尊重し、安全面に最大限の配慮を払うとともに、地域住民に与える影響を最小限にとどめるよう努めている旨、累次の機会に明らかにしている。この点については、昨年(1998年:引用者注)四月に米軍が公表した低空飛行訓練に関する記者発表文においても、「在日米軍は、最低飛行高度に関する規則(人口密集地三百メートル、その他の地域百五十メートル)等、日本の航空法令に自発的に従っている。」と述べている」。

 つまり、航空特例法の規定にかかわらず、「在日米軍は(中略)日本の航空法令に自発的に従っている」と米軍は説明しており、そしてそのことを、日本政府は、米軍の低空飛行訓練が実質的に安全だと認識する根拠として閣議決定し答弁しているのだ。であるならば、航空特例法にかかわらず、米軍は日本の航空法令の規定に従わなければならないし、日本政府は米軍を航空法令に従わせなければならない。

 航空法79条の規定は「飾り」ではなく、公共の安全の確保のための規定だ。この規定を無視して、緊急事態でも無いのに横浜ノースドックから航空機を離陸させることは、公共の安全を著しく脅かす行為であり、許されない。

 ところで、同じ7月6日、この横浜ノースドックに陸揚げされたオスプレイについて、福島みずほ参議院議員事務所が防衛省に行った質問への回答が、提出された。
 質問と回答は、以下の通りだ。

 この質問は6月30日に防衛省に出されたもので、当初は、7月2日15時までが回答期限だった。しかし、防衛省が「事実関係の確認のため」として、回答期限を7月6日に延期していたものだ。

 わざわざ「事実関係の確認」が必要になったということは、防衛省は6月29日のオスプレイの横浜陸揚げを米軍から知らされていなかったからなのだろう。そして、この件にかんして米軍に「事実関係の確認」をしても、「その詳細については米軍の運用につき、回答できない」というのが米軍の「回答」だったと、防衛省は福島参院議員に回答している。

 日本社会でその安全性について批判があり、注目されているオスプレイの新たな機体の日本への配備について、日本政府は米軍から何も情報を得ることが出来ていない、という驚くべき状況になっているようだ。そして、さらに驚くべき事は、そのような米軍の態度を防衛省が問題として認識している様子が見えないことだ。

また、回答には、(横浜ノースドックでは)「米軍の様々な物資の陸揚げや保管等を行うため、(中略)航空機の飛行等が行われているものと承知しています」と書かれている。しかし、港湾で「物資の陸揚げや保管等を行うため」、どうして「航空機の飛行等が行われている」ことになるのか、この文の中の論理のつながりが不明だ。それに、横浜ノースドックで今回行われたのは航空機の離陸だ。単に上空を航空機が飛行した、ということではない。

 さらに、「米軍の運用について、詳細は承知していません」と述べているにもかかわらず、「米側は、この規定(日米地位協定第3条3:引用者注)に基づき、適切に運用しているものと認識しています」と強弁している。米側から情報を得ることもせず、現場の状況を独自に調査せずに述べる「適切に運用しているものと認識しています」という言葉は、単なる願望の表明でしかない。きわめて無責任な態度だ。

(RIMPEACE編集部 星野 潔)



福島みずほ参議院議員事務所から防衛省への質問とその回答


2021-7-12|HOME|