横浜ノースドックでCBRN訓練


7月18日、横浜ノースドックに並べられたCBRN訓練部隊の車両(写真奥)。手前に見える、迷彩の幌を付けた
トラックは、陸上自衛隊のもの。その隣の2つの建物は、陸自が共同使用している建物だ。(2021.7.18星野撮影)


7月21日、横浜ノースドック内に展開したCBRN訓練部隊のものと見られる車両。翌日の訓練の準備か。(7.21星野撮影)

7月22日、米軍は横浜ノースドックでCBRN(化学、生物、放射線及び核兵器対応)訓練を行った。在日米陸軍がフェイスブックで明らかにした。

訓練を主導したのは、陸軍第340化学中隊。米本土のテキサス州ヒューストンに本拠を置き、今年2月から9月まで厚木基地に滞在してCBRN訓練を行っているとされる部隊だ。

たしかに、訓練の4〜5日前、7月17日の午後から18日の昼頃までの間に、厚木基地に展開していたCBRN訓練部隊の車両の一部が、横浜ノースドックに並べられているのが確認された。それらの車両は、訓練の翌日の7月23日には再び横浜ノースドックから消えている。どこに行ったのだろうか。厚木基地だろうか。

また、在日米陸軍フェイスブックによれば、7月22日には訓練の一環として、米海軍厚木基地の第12海上戦闘ヘリコプター飛行隊 (HSC−12)のMH−60Sヘリコプターもノースドックに飛来した。何度も繰り返すが、横浜ノースドックは飛行場でもヘリポートでもない。離着陸の安全を担保する施設は存在しない。大都市のど真ん中の、飛行場やヘリポートではない場所での離着陸は、航空法の趣旨に反するきわめて危険な行動だ。

 ところで、そもそも第340化学中隊が横浜ノースドックでCBRN訓練を実施したことについて、南関東防衛局も神奈川県も横浜市も、事前にも事後にも何も説明していない。

 確かに神奈川県は、厚木基地でのCBRN訓練開始直前の今年1月28日に、「米陸軍部隊による化学、生物、放射線及び核(CBRN)への防護対処訓練が」「2月から9月まで、厚木基地で行われる」ことを発表している。しかし、横浜ノースドックは厚木基地ではない。にもかかわらず、米軍は横浜で訓練を行った。これは一体どういうことなのか。

 また、横浜市も、今回横浜ノースドックでCBRN訓練が行われたことを何も市民に知らせていない。そもそも横浜市が、ノースドックでのCBRN訓練実施について知らされていたのかどうかも不明だ。

 ただし、横浜市基地対策課は、神奈川平和運動センターなどが今年3月16日に行った要請行動の際、CBRN訓練の車両が昨年12月から横浜ノースドックに集結していたことについては知らされていたと明言している。にもかかわらず横浜市は、その事実について、一般の市民には現在に至るまで何も公表していない。なぜ、市民には何も情報を知らせようとしないのか、強い疑問を感じる。

 今回、横浜港のど真ん中で行われた米軍のCBRN訓練については、明らかにされなければならないことがたくさんある。

 横浜ノースドックに兵士たちがやってきた際に、新型コロナウィルス感染防止のためにどのような対策を行ったのか。

 訓練では、危険な物質や兵器などは使用しなかったのか。仮に米軍が危険物を使用していないと口頭で説明したとしても、それが事実かどうかを日本政府や自治体は実際にどのように確認したのか。

 そもそもどのような想定、シナリオで、具体的にどのような訓練を横浜ノースドックで行ったのか。

 横浜港のど真ん中でCBRN訓練を行ったということは、少なくとも米軍は、横浜ノースドックがCBRN兵器の攻撃対象となり得ることを米軍は想定しているということなのか。であるならば、周辺で暮らし、仕事をし、観光をしている市民にどのような被害が出ることを想定しているのか。市民の避難はどうするのか。

 横浜ノースドックでのCBRN訓練実施について、市民には何も情報が公表されていないのはなぜなのか。神奈川県や横浜市には情報を知らせたのか、知らせなかったのか。知らせたとすれば、いつ、どのように知らせたのか。知らせなかったとすれば、それはなぜか。  当初の説明を覆して、厚木基地だけでなく横浜ノースドックでもCBRN訓練を行ったのはなぜか。今後、どのような訓練が計画されているのか。

 こうした疑問に答え、市民に公表すべきだ。日本政府や神奈川県、横浜市の基本的な姿勢が問われている。

(RIMPEACE編集部 星野 潔)


7月22日、ふ頭先端部の除染作業訓練を行う車両と兵士。(在日米陸軍フェイスブック動画より)


横浜ノースドックでのCBRN訓練の様子。夏の日差しの中、兵士たちは防護服姿で行動している。(在日米陸軍フェイスブック動画より)


横浜ノースドックに飛来した、第12海上戦闘ヘリコプター飛行隊(HSC−12)のMH−60Sヘリコプター。(在日米陸軍フェイスブック動画より)


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