フォレジャー21演習を振り返る(2)

横浜で行われた事前訓練と準備作業


6月14日、横浜ノースドックの一角に集まり作業をする、第7輸送旅団所属とみられる兵士たち。(2021.6.14星野撮影)


MCSの組み立て作業を、第7輸送旅団所属と思われる兵士たちが、コンテナハンドラーを使って行っている(6.22 星野撮影)


組み立て式の浮き桟橋(MCS:Modular Causeway System)を海面に降ろす際には、日本の民間業者のクレーンバージが使われた。(6.23 星野撮影)

 「フォレジャー21」演習は7月11日に開始されたと発表されているが、横浜ノースドックでは米本国から派遣されてきた陸軍部隊による事前訓練と準備が、遅くとも6月には開始されていた。

米本土のバージニア州フォート・ユーティスに本拠を置いている第7輸送旅団の遠征部隊(7th Transportation Brigade - Expeditionary)が、ハワイに本拠を置く第8戦域支持コマンド(8th Theater Support. Command)の指揮下に入り、遅くとも6月半ばには横浜ノースドックにやってきて、舟艇の運航訓練や準備作業などを行っていたのだ。

組み立て式の浮き桟橋(MCS:Modular Causeway System)を海面に降ろす作業などは、日本の民間業者の手も借りて行われていた。

 なぜ米本土の部隊である第7輸送旅団がわざわざ横浜にやって来たのか。それは横浜ノースドックが陸軍事前配備貯蔵(APS: Army prepositioned stocks)の拠点だからだ。APSは上陸用舟艇セットや移動病院セット、パイプライン・セットなど、戦争を開始する際に米本国から簡単には運べない戦争資材を、予め米軍が定めている地域ごとに事前に配備しているものだ。

 APSには番号が割り振られており、横浜ノースドック、相模総合補給廠、韓国の大邱基地がひとまとまりで北東アジアと太平洋地域のAPS、すなわちAPS-4として位置づけられている。

 2015年10月に発行された米陸軍省司令部の文書「Army Pre-Positioned Operations」(ATP3-35.1)の1-1頁によれば、「APSプログラムは陸軍の迅速な戦力投射能力の基礎である」(“The APS program is a cornerstone of the Army’s ability to rapidly project power.”: )。

 実際、今回の第7輸送旅団の横浜への事前派遣は、APSの拠点として上陸用舟艇や浮き桟橋セットが配備されている横浜ノースドックが、東アジア・太平洋における米軍の中国を視野に入れた軍事行動の基本的インフラとして位置づけられていることを改めて示す出来事だった。

 軍事行動を可能にする基本的インフラに位置づけられるということは、当然、その地域が重要な攻撃対象にもなるということだ。これは住民の安全に直接かかわる死活的な問題だ。にもかかわらず、これまで横浜の市民には、横浜ノースドックの位置づけにかんする米軍の方針について全く説明がなされていないし、いわんやその当否について相談もなされていない。

(RIMPEACE編集部 星野 潔)


6月24日付けの第8戦域支持コマンド(8th Theater Support Command)フェイスブックに掲載された写真。MCSを海面に降ろし、
それを組み立て式タグ(WARPING TUG)で移動させている。(8th Theater Support Commandフェイスブック6月24日記事より引用)


第7輸送旅団所属の兵士たちと見られる人びとが、私服姿でくつろぐ光景も目撃された。写真に写っている建物の2階部分が宿泊施設になっているのだろうか。
(2021.6.26 星野撮影)


6月30日、LCUフォート・マッケンリーはノースドックの係留場所から離れ、陸軍兵士により操作訓練が行われた。
フォート・マッケンリーは7月19日にグアムに到着、アベンジャーシステムを積み込みテニアンに向かった(6.30 頼撮影)


2021-8-12|HOME|