陸自戦闘車、米軍揚陸艇で横浜から「出撃」(1)

横浜ノースドックに現れた陸自機動戦闘車


2021年9月23日、横浜ノースドックに現れた16式機動戦闘車。


 2021年の出来事で、まだ記事にしていなかったものをいくつか書いておこう。
 まずは9月23日の横浜ノースドックの出来事だ。この日、横浜ノースドックに16式機動戦闘車やトラックなどの陸上自衛隊の車両と多数の陸自隊員が現れて、3両の戦闘車のLCU(米陸軍大型揚陸艇)への積み込みが行われた。

 9月23日に横浜ノースドックで確認された陸自の16式機動戦闘車は、4両だった。16式機動戦闘車は、74式戦車と同等の105ミリ砲の砲塔を持つ、装輪装甲車だ。とは言え、車輪部分がキャタピラでは無いことを除けば外観は戦車そっくりだ。陸自第6師団のHPによれば、16式機動戦闘車は「火力と機動力を駆使してさまざまな事態へ迅速に対応するため、公道での高い走行性に優れ、輸送機での空輸も可能」な最新の兵器だ。戦車よりも機動性があり、戦車並みの火力を持つとされるこの戦闘車を、陸自は近年編成された即応機動連隊などに配備している。

 米軍が画像サイトDVDISで報じた情報から判断すると、この日横浜に現れた16式機動戦闘車やトラック、多数の陸自隊員たちは、第22即応機動連隊、宮城県の多賀城に駐屯する部隊の所属だ。
なぜ宮城県に駐屯する部隊が横浜ノースドックに現れたのか。2021年9月15日から11月下旬まで行われた、2021年度「陸上自衛隊演習」の一環なのだろう。9月9日に陸上幕僚監部が発表した文書の言葉を使えば、「機動展開等訓練」として「米軍の輸送支援を受け」て、「全国規模での機動展開や補給品等の輸送を実施」したのだろう。
 しかし、そのためにわざわざ多賀城から横浜まで、4両の機動戦闘車などを連ねて公道を走ってきたのだろうか。それとも、別の船で仙台港あたりから横浜港あるいは近くの港に輸送されてきたのだろうか。


自走でバックしながらノースドックの「すべり」に向かい、LCUカラボザに積み込まれようとする16式機動戦闘車(赤丸で囲んだところ)

9月23日に確認された4両の16式機動戦闘車のうち3両は、米陸軍大型揚陸艇(LCU)カラボザ(LCU2009)の甲板に自走で積み込まれていった。3両の機動戦闘車の積み込みが終わると、カラボザの甲板上でそれらの戦闘車にカバーをかける作業を陸自隊員たちが行った。
カラボザの甲板上には多数の陸自隊員の姿が見えたが、16式機動戦闘車の上に登ってカバーをかける作業を行った隊員たちを、写真を拡大してよく見てみると、重装備でガスマスクをしていた。小銃を肩に掛けている隊員もいた。
 なぜ、戦闘車のLCUへの積み込み作業を、ガスマスクをした重装備の陸自隊員たちが行ったのだろうか。積み込み作業自体も、CBRN兵器(化学(Chemical)、生物(Biological)、放射性物質(Radiological)、核(Nuclear)を用いた兵器)による攻撃を受けることを想定した「実戦訓練」として行われたのだろうか。横浜のど真ん中に、そのような攻撃を受けつつ、米軍と陸自が出港することが想定される拠点があるということなのだろうか。横浜ノースドックがそのような攻撃を受けた場合、市民はどうなるのだろうか。

 作業が終わり、多くの隊員たちが埠頭上に戻り、しばらくしてトラックなどに散っていくと、やがて陸地に残された1両の16式機動戦闘車を先頭に、大型トラックや中型トラックなどが隊列を組んで基地のゲートから公道に出ていった。そして、瑞穂橋を渡って市街地へと向かった。戦闘車を先頭に、このまま宮城県まで走って行ったのだろうか。それとも、横浜港内の別の埠頭、あるいは近隣の港に向かったのだろうか。

(RIMPEACE編集部 星野 潔)(2021.9.23星野撮影)


LCUカラボザに積み込まれた16式機動戦闘車の上に重装備の陸自隊員が登って、カバーを掛けている。16式機動戦闘車の上に登った隊員は、ガスマスクを付けているようだ。


作業終了後、残された1両の16式機動戦闘車を先頭に、隊列を組んでノースドックのゲートに向かう陸自の車両群。

ノースドックのゲートから公道に出て、瑞穂橋を渡って市街地に向かおうとする16式機動戦闘車。


2022-1-1|HOME|