陸自地対艦ミサイル部隊、横浜からリムパックへ


6月28日、貨物船BBCエベレストに積み込まれる陸上自衛隊の12式地対艦誘導弾(ミサイル)発射装置(22.6.28 星野 撮影)

陸自第5地対艦ミサイル連隊のミサイル発射システムの車両を船積みするBBCエベレスト(22.6.28 星野 撮影)

 6月27日、ドイツ船籍の貨物船BBCエベレスト(BBC EVEREST)が横浜ノースドックに接岸した。
 翌28日には、陸自第5地対艦ミサイル連隊の12式地対艦誘導弾発射システムの車両群をBBCエベレストの船倉にクレーンで積み込む作業が行われた。
 そして6月29日の朝、BBCエベレストは横浜ノースドックを出港した。AIS(自動船舶識別装置)の情報によれば、目的地はハワイのホノルルだ。

 ハワイは、まさにリムパック2022の会場だ。つまり、第5地対艦ミサイル連隊は、やはりリムパックに参加するということなのだろう。
 この地対艦ミサイル連隊がリムパックで使用するミサイルの実弾は、横浜ノースドックに運び込まれていなかっただろうか。

 6月28日の積み込み作業には、陸上自衛隊員が参加している様子が視認された。米軍基地である横浜ノースドックで兵器を貨物船に積み込む作業を行い、それに習熟すること自体が、陸上自衛隊の訓練となっていたのではないか。


6月27日、横浜ノースドックに接岸しようとする貨物船BBCエベレスト(22.6.27 星野 撮影)

6月27日、BBCエベレストの接岸直前の横浜ノースドック先端部分。第5地対艦ミサイル連隊の車両が並んでいる(22.6.27 星野 撮影)

横浜ノースドックに接岸したBBCエベレスト(22.6.27 星野 撮影)

ところで、6月29日付けのUSNI NEWSは、リムパック2022に日本の陸自部隊が参加するものの、「日本はまだ、陸上自衛隊の部隊が演習で何をするのかを明示していない」と伝えている。
とは言え、陸自地対艦ミサイル部隊が「何もしない」ためにハワイに出かけるとは考えがたい。陸自は12式地対艦ミサイルをハワイでぶっ放すつもりなのではないか。
すでに2018年のリムパックでも、陸上自衛隊は12式地対艦誘導弾を発射して標的艦を沈没させる訓練を行っている。

ミサイルを発射して艦船を撃沈するということは、東アジアの軍事的緊張を高める行為であると同時に、直接的に海洋を汚染する行為でもある。

 海洋汚染は、現在、深刻な地球環境問題のひとつに数えられている。
 たとえば日本の海上保安庁も、海洋汚染の調査や防止に積極的に取り組んでいることをアピールしている。
 日本政府が海洋汚染防止を呼びかけながら、自らミサイルで船を沈没させて海洋汚染を進めるという矛盾を、どう解釈すれば良いのだろうか。
 真顔で「地球に優しくミサイルを発射して、地球に優しく撃沈します」とでも言うつもりか。
 それとも、「それくらいは、たいしたことでは無いのです」と言うつもりだろうか。日本政府は、実は、海洋汚染を深刻な問題だとは考えていないということだろうか。あるいは、「ハワイ周辺の海洋汚染などどうでも良い」ということだろうか。軍需産業の儲けにつながるならば、あとは野となれ山となれ、というところだろうか。

(RIMPEACE編集部 星野 潔)


6月28日、BBCエベレストへの積み込み作業が開始された(22.6.28 木元茂夫 撮影)

ミサイル発射装置が埠頭上で積み込みを待っている(22.6.28 木元茂夫 撮影)

クレーンで吊り上げられたミサイル発射装置。陸自隊員が作業に参加していることが分かる(22.6.28 星野 撮影)

BBCエベレストの船首横にもミサイルキャニスターを積んだ車両が待機しているのが見えた(22.6.28 星野 撮影)

第5地対艦ミサイル連隊の車両の積み込み作業は、暗くなっても続いていた(22.6.28 星野 撮影)


2022-7-2|HOME|