りゅう弾砲や車両等、横浜NDに陸揚げ(2)






砲身部分をシートで覆った155ミリりゅう弾砲が、トレーラーに載せられて横浜ノースドックから搬出されていく。この日、少なくとも6門の155ミリりゅう弾砲の搬出を確認できた(22.8.23 星野 撮影)

8月23日に横浜ノースドックに陸揚げされた海兵隊の155ミリりゅう弾砲や車両、資材は、8月28日から9月6日にかけて東富士演習場で行われるという「沖縄県道104号線越え155ミリ榴弾砲実弾射撃訓練」のために、富士山麓の演習場に向かったのだろう。この演習の実施は、7月15日付けで防衛省が発表していたものだ。
発表によれば、中隊規模の約330名と約70両の車両、6門の砲が参加するという。 確かに、少なくとも6門の155ミリりゅう弾砲がトレーラーに載せられて横浜ノースドックを出て、村雨橋をわたり、市街地に出ていくのが確認できた。


「沖縄県道104号線越え155ミリ榴弾砲実弾射撃訓練」に関する防衛省の7月15日付「お知らせ」より引用

ところで、米軍の火砲等が横浜ノースドックに陸揚げされることに対する横浜市の姿勢に変化が生じているようだ。

かつて、2019年4月までは、米軍が火砲や車両などを横浜ノースドックに陸揚げすることを防衛省から知らされた際には、横浜市はまがりなりにも「瑞穂ふ頭/横浜ノース・ドックにおいて弾薬の搬入が行われないこと、事件・事故が起きることのないよう万全の体制をとること、また施設の機能強化につながることのないこと等について、国に要請」したことを、基地対策課のHPに明示していた。


横浜市基地対策課HPより引用

ところが、2020年頃からその姿勢は変化する。横浜市としてそうした要請を行ったという記述が姿を消したのだ。
しかも、防衛省からの「お知らせ」には複数の「砲」を陸揚げすることが示されているにもかかわらず、横浜市基地対策課は、それを知らせるHPの記事のタイトルではなぜか肝心の「砲」の陸揚げについては触れず、「車両等を陸揚げする予定」としか書かないのだ。
「「等」のなかには「砲」も含まれるのだ」と強弁するかもしれないが、それが市民を愚弄する詭弁でしかないことは、担当者自身が十分認識しているはずだ。



横浜市基地対策課HPより引用

今回の海兵隊の155ミリりゅう弾砲等の陸揚げを知らせる横浜市基地対策課HPの記事も、この2020年頃からの変化を踏襲した内容だった。弾薬の搬入をしないことなどを市が要請したとは述べておらず、記事のタイトルでは「砲」の陸揚げについても触れていない。

「瑞穂ふ頭/横浜ノース・ドックにおいて弾薬の搬入が行われないこと、事件・事故が起きることのないよう万全の体制をとること、また施設の機能強化につながることのないこと等について、国に要請」したという記述が基地対策課のHPから姿を消したことは、横浜市が実際にそうした要請をしなくなったことを示している可能性がある。
もしもそうであるとすれば、これは横浜市の姿勢の、非常に大きな変化だ。
それは、弾薬の搬入などが市民にもたらす危険の回避や軍事基地機能強化の拒否よりも、米軍や「国」に従順であることを優先する方向への、変化だ。

なお、「お知らせ」として防衛省が公表している「砲」以外の重火器も、近年、横浜ノースドックに陸揚げされていることが確認されている。
つまり、防衛省は、米軍が横浜ノースドックに陸揚げする兵器をすべて公表している訳では無いのだ。


2020年10月17日、横浜ノースドックに陸揚げされたあと、富士山麓の演習場へと横浜市旭区の上川井インター付近の国道16号線をトレーラーに載せられて走る、海兵隊の多連装ロケット砲「ハイマース」(20.10.17 読者 撮影)

たとえば、2020年9月、防衛省は、翌月に東富士演習場で行われる「沖縄県道104号線越え155ミリ榴弾砲実弾射撃訓練の分散・実施」のために、「砲」12門が横浜ノースドックに陸揚げされることを発表した。
しかし実際には、米海兵隊は、155ミリりゅう弾砲以外に、多連装ロケット砲「HIMARS」(ハイマース)を横浜ノースドックに陸揚げし、横浜市内の一般道を通って富士山麓に運んだことを私たちは確認している。
「155ミリりゅう弾砲実弾射撃訓練」のはずなのに、なぜハイマースを持ち込んだのか、全く説明は無いままだ。「沖縄県道104号線越え155ミリ榴弾砲実弾射撃訓練の分散・実施」と掲げられた演習の目的自体が、「名目」に過ぎなくなっているのかもしれない。
また、防衛省が米軍の多連装ロケット砲の持ち込みと、一般道を使っての運搬を横浜市に伝えたのかどうかも、明らかになっていない。
ハイマースが横浜ノースドックに持ち込まれたのは、この2020年10月に限った話では無く、その後にも持ち込まれたことがあることを、私たちは確認している。
ただし、今回の陸揚げでハイマースが持ち込まれたかどうかについては、まだ確認ができていない。今のところは、今回ハイマースが持ち込まれたという証拠は得ていない。

(RIMPEACE編集部 星野 潔)


8月23日、155ミリりゅう弾砲が村雨橋を渡っていった(22.8.23 星野 撮影)


2022-8-27|HOME|