横浜ノースドックに海兵隊高機動ロケット砲


9月13日、横浜ノースドックで確認された海兵隊の自走式高機動ロケット砲システム、ハイマース。後ろ向きに停車している。
右隣にも少なくとももう1台、ハイマースが並んでいるようにも見える。その前の砂漠迷彩の物体が何であるかは、不明だ(22.9.13 星野 撮影)


9月17日の時点でも、ハイマースは同じ場所に置かれている(赤丸のところ)(22.9.17 星野 撮影)


ハイマースが置かれている場所には、9月6日に、軍用車両が並べられているのが確認されていた(22.9.6 星野 撮影)


しかし、9月12日、自動車運搬船「わかなつ」が入港した日にそれらの車両は姿を消したようにも見えた(22.9.12 星野 撮影)

9月13日、海兵隊の自走式高機動ロケット砲システム「ハイマース」(HIMARS:High Mobility Artillery Rocket System)が少なくとも1基、あるいはそれ以上の数、横浜ノースドックに置かれているのが確認された。

ハイマースが確認されたのは、横浜ノースドックの中央部の空間だ。この場所には、9月6日頃から8台以上の軍用車両が並べられていた。
しかし、自動車運搬船「わかなつ」が横浜ノースドックに接岸した9月12日には、それらの車両は姿を消したようにも見えた。
ところがその後、9月13日に、同じ場所にハイマースが置かれているのがはっきりと確認されたのだ。

ハイマースは、強力な破壊力と155ミリりゅう弾砲よりもずっと長距離の射程を持つだけでなく、目標を高精度で攻撃することが可能で、さらに小型軽量で迅速に輸送できて自走距離も長い、機動性の高いロケット砲システムだ。
最近では米国政府がウクライナに供与して、戦況に大きな影響を与えていることが報道されている。
また、ハイマースは、米軍に強い影響力を持つ米国のシンクタンク、戦略予算評価センター(CSBA:Center for Strategic and Budgetary Assessment)の2016年の提言で、南シナ海において米軍が戦闘を行う際に、海兵隊が「敵」に対して使用可能な兵器とされている。南西諸島から発射するというのだろう。ロケット砲発射への反撃にさらされるのは、そこに暮らす住民だ。

このハイマースがどこから横浜に運ばれてきたのかは、今のところ不明だ。
一つ考えられるのは、8月末から9月前半まで東富士演習場で行われた「沖縄県道104号線越え155ミリ榴弾砲実弾射撃訓練」で使用する155ミリりゅう弾砲や車両などを、8月23日に自動車運搬船「しゅれいU」が横浜ノースドックに陸揚げした際に、一緒に運ばれてきたという可能性だ。一旦、東富士演習場まで運ばれたのか、横浜にそのまま置かれていたのかは分からないが。
もちろん、それ以前からキャンプ富士に置かれていたものを、横浜に運んで来た可能性もある。
あるいは、8月23日以前から横浜ノースドックのどこかに置かれていた可能性も、はたまた最近になってノースドックにやってきた自動車運搬船などが持ってきた可能性もゼロでは無い。

いずれにしても、ハイマースの横浜ノースドック持ち込みが事前に公表されていなかったことは確かだ。
8月末から9月前半まで東富士演習場で行われた「沖縄県道104号線越え155ミリ榴弾砲実弾射撃訓練」についても、防衛省の「お知らせ」には「砲数:6門」とあったが、これは155ミリりゅう弾砲のことだ。ハイマースのことはどこにも書かれていない。

なぜ、ハイマースを横浜に持ち込んだのか、弾薬など危険物を持ち込んでいないか、横浜市や神奈川県は日本政府や米軍に確認し、調査も行うべきだ。

米軍は、横浜ノースドックに持ち込んだこのハイマースをどうするつもりなのだろうか。
ずっと置き続けるという訳でもあるまい。
10月1日から矢臼別演習場など北海道各地で、海兵隊と陸上自衛隊の大規模合同軍事演習「レゾリュート・ドラゴン22」(RD22)が実施される。
この演習では、「陸自MLRS部隊と米海兵隊HIMARSによる共同射撃訓練」やHIMARSを搭載したC-130輸送機による離着陸訓練なども計画されている。
この演習で使用されるハイマースが横浜で待機しているということなのだろうか。それとも、ノースドックに現れたハイマースは、RD22とは無関係なのだろうか。

(RIMPEACE編集部 星野 潔)


防衛省が9月2日に公表した、レゾリュート・ドラゴン22に関する「地元説明資料」(鹿追町HPより引用)


2022-9-18|HOME|