米陸軍ボート、横浜港内で航行訓練



11月10日、米兵が乗って横浜港内を走り回った2隻のWT(組み立て式タグボート)


みなとみらい地区、臨港パーク前の海域を走り回るWT。この海域は米軍の「施設及び区域」では無い


大さん橋の先端部の前を横切り、山下公園前の海域に向かう米陸軍WT。もちろんこの海域も、米軍の「施設及び区域」では無い(22.11.10 星野 撮影)

11月10日、横浜港内を2隻の米陸軍組み立て式タグボート(WT:WARPING TUG)が走り回った。

2隻のボートに乗っていたのは、米軍兵士たちだった。
これらのWTは、米陸軍APS( Army Prepositioned Stocks:陸軍事前配備貯蔵)の拠点として、横浜ノースドックに貯蔵されている揚陸作戦セットの資材だ。

この日、横浜港内を走り回っていたWTは、ノースドックの埠頭の周囲30メートルの海域を遥かにはみ出して航行しており、少なくとも1隻は大さん橋周辺や山下公園の前の方にまで「遠征」していった。
大さん橋や山下公園近くの海域に出張ったWTの行動は、どこをどう見ても出入港のための「通過」ではなく、「基地間移動」でもなく、横浜港内での航行訓練の実施だった。

1975年3月3日の衆議院予算委員会で当時の三木首相は、「地位協定にある区域の中に入っていないところで演習をすることは、安保条約の趣旨からして、これは違反と言えば違反ということになる」と答弁している。日本政府はこの答弁をその後も撤回していない。
つまり、日本の首相の国会答弁によれば、日米地位協定に基づく「施設及び区域」以外で米軍が訓練を行うことは、明白な安保条約違反なのだ。
いつから横浜港の大さん橋周辺は、日米地位協定第2条に基づいて米軍の使用が許される「施設及び区域」に指定されたというのだろうか。
もちろん、大さん橋周辺の海域が、米軍の使用が許される「施設及び区域」になったという事実は無い(はずだ)。
つまり米軍は、白昼堂々と衆人環視の中で安保条約に違反する行為をやってのけたのだ。
日本政府が独立国の政府であるというならば、米軍に厳重な抗議を行い、再発防止を約束させなければならないはずだ。

11月10日にWTに乗っていた迷彩服姿の兵士たちは、その前日の11月9日には、まだ横浜ノースドックの埠頭上に置かれていたWTの周囲で、翌日の航行訓練の準備作業を行っていた。
この兵士たちはどこから現れたのだろうか。
以前から横浜ノースドックには、APSの機材を利用して訓練を行うために米本土の輸送科の部隊が毎年のようにやって来ていた。
今回も、米本土の部隊が横浜にやって来て訓練を行っていたのではないか。





11月9日、横浜ノースドックの埠頭上で翌日のWT航行訓練の準備作業をする米兵たち(22.11.9 星野 撮影)

ところで、11月10日に横浜港内を走り回った2隻のWTは、11月13日まではノースドックの陸地側にあるV字型の泊地に係留されているのが確認できたが、14日の夕方には姿を消していた。 その11月14日の午後には、11月9日から横浜ノースドックに寄港していた貨物船オーシャン・グローリー(OCEAN GLORY)が米本土に向けて出港している。 この貨物船オーシャン・グローリーが、2隻のWTを積み込んで行った可能性がある。

(RIMPEACE編集部 星野 潔)


訓練を終えた後、11月9日、横浜ノースドックのV字型の泊地に係留されていた2隻のWT(22.11.12 星野 撮影)

11月9日、横浜ノースドックに入港した貨物船オーシャン・グローリー(22.11.9 星野 撮影)

貨物船オーシャン・グローリーは、11月14日の夕方近くまでノースドックに停泊していた(22.11.10 星野 撮影)

11月14日の夕方、横浜ノースドックを出港して東京湾を南下する貨物船オーシャン・グローリー(赤色の丸)。
その近くには音響測定艦インペッカブルも航行している(黄色の丸)。前方に広がる陸地は房総半島だ(22.11.14 星野 撮影)

オーシャン・グローリーの出港後、2隻のWTは横浜ノースドックから姿を消していた(22.11.14 星野 撮影)


2022-12-14|HOME|