横浜から沖縄に行った陸軍揚陸艇


2月20日、横浜ノースドックに停泊する陸軍揚陸艇カラボザ。マストにえんじ色の米陸軍輸送科の旗が掲げられている(23.2.20 星野 撮影)


2月26日、横浜を出港する前日のカラボザ。やはり陸軍輸送科の旗がマストに掲げられている(23.2.26 星野 撮影)


2月18日の夕方から22日の午前中にかけて、横浜ノースドックには高速輸送艦グアムが那覇軍港から来港していた。
写真は2月19日、揚陸艇カラボザとその近くに接岸していた高速輸送艦グアム(23.2.19 星野 撮影)

「無人の舟艇の保管であって、運航のための 部隊の配置はなく、運用はされない」、そして「燃料を抜いて保管」するだけで「運航はしない」という約束で横浜ノースドックに係留されているはずの陸軍揚陸艇のうちの1隻、カラボザ(CALABOZA LCU 2009)が2月27日の朝、横浜を出港した。

カラボザは約4日間かけて沖縄に到達し、まずは3月3日の朝、ホワイトビーチに入港した。その数時間後の昼過ぎにはホワイトビーチを出港し、同じ3月3日の夕方、那覇軍港に入港した。

既に本HPで紹介したように、2月1日には陸軍揚陸艇フォート・マクヘンリー(FORT MCHENRY LCU 2020)が横浜ノースドックを出港し、2月6日に那覇軍港に入港している。フォート・マクヘンリーは、その後フィリピンのスービックに向かい、3月5日の時点でもスービックに停泊しているようだ。

「無人の舟艇」が勝手に横浜から沖縄やフィリピンに出かけていくという、怪奇現象が起きているのだろうか。もちろん、これはそんな怪談話ではない。
カラボザもフォート・マクヘンリーも、横浜にいる時からマストに陸軍輸送科のえんじ色の旗を掲げていた。
つまり、米陸軍輸送科の部隊が横浜に来て、かれらが揚陸艇を運航して沖縄やフィリピンに向かったのだ。
また、2隻の揚陸艇が横浜を出港する前の1月後半から2月半ばにかけて、かれらは横浜港内や東京湾内でフォート・マクヘンリーやカラボザを使って何度も操船訓練を行っていた。

今年1月11日の日米2プラス2での、今年「春頃」の揚陸艇部隊の横浜への「新編」合意が発表されたが、実はすでに米軍は、揚陸艇を運航する部隊を横浜ノースドックに随時送り込んでいたのだ。もちろんそれは、今回発表された「約280人」というような大規模なものではなかったのだが。

2プラス2の合意の内容について、横浜市などが求めていた情報提供の要請に対し防衛省は3月3日、「船舶の入出港回数が一定程度増加する見込み」などとする回答書を出した。
相変わらずきわめて不十分な情報しか回答書には盛り込まれていないようだが、多人数の部隊を常時配置し、普段から横浜を拠点に複数の揚陸艇の運航や訓練を行うならば、「入出港」のみならず横浜港周辺での操船訓練などが増加することは当然の帰結だろう。

横浜港は、横浜市の経済活動や観光などの中核的な存在ではなかったのか。軍港化させて良いのだろうか。
「約280人」の揚陸艇部隊の配置は、港湾の交通も含めてさまざまな危険を市民にもたらすことになるのではないか。

そもそも、上述の約束を横浜市に伝えた外務省も、外務省を通じて上述の約束をした米軍も、市民への「説明」や「約束」の重みを全く感じていないのだろうか。
そしてなぜか、かつて上述の約束を市会で説明していた横浜市当局も、この約束を守るべきだという、当然の要求を日本政府に突きつけようとはしていない。

(RIMPEACE編集部 星野 潔)


2022-3-6|HOME|