横浜NDの揚陸艇、バリカタン23演習に


4月6日、バリカタン23演習の準備のためフィリピンのカシグラン港に接岸する米陸軍揚陸艇フォート・マクヘンリー
米軍画像サイトDVIDS記事「Combined Joint Logistics Over-the-Shore Begins Offload with Philippine LCU」より引用
https://www.dvidshub.net/image/7735130/combined-joint-logistics-over-shore-begins-offload-with-philippine-lcu


フォート・マクヘンリーの甲板には、陸揚げする米軍の車両が積まれていた
米軍画像サイトDVIDS記事「Combined Joint Logistics Over-the-Shore Begins Offload with Philippine LCU」より引用
https://www.dvidshub.net/image/7735096/combined-joint-logistics-over-shore-begins-offload-with-philippine-lcu


4月8日、バリカタン23に使う物資をフィリピンのカシグラン付近に陸揚げするために接岸する揚陸艇カラボザ
米軍画像サイトDVIDS記事「Balikatan 23 | U.S. service members offload LCU 2009 at Casiguran」より引用
https://www.dvidshub.net/image/7737604/balikatan-23-us-service-members-offload-lcu-2009-casiguran


4月8日、カラボザから第3海兵遠征軍の第3揚陸支援大隊(3rd Landing Support Battalion)の兵士が降りてきたところ
米軍画像サイトDVIDS記事「Balikatan 23 | U.S. service members offload LCU 2009 at Casiguran」より引用
https://www.dvidshub.net/image/7737622/balikatan-23-us-service-members-offload-lcu-2009-casiguran


車両などの陸揚げだけでなく、4月11日には、揚陸艇からボートを使った燃料移送システム(ABLTS:Amphibious Boat Liquid Transfer System)のテストも行われたようだ
米軍画像サイトDVIDS記事「Balikatan 23 | LARCs and LCUs execute ABLTS」より引用
https://www.dvidshub.net/image/7741657/balikatan-23-larcs-and-lcus-execute-ablts

陸軍事前配備貯蔵(APS:Army Prepositioned Stock)の装備の一部として横浜ノースドックに係留されてきた米陸軍揚陸艇(LCU:Landing Craft Utility)は、元来、「無人の舟艇の保管であって、運航のための部隊の配置はなく、運用はされない」という約束のもとに2002年夏以降、ノースドックに運び込まれたものだった。
だが、その後、米軍は約束を平然と破って運航を続けてきた。そして、現時点では少なくとも2隻が実際に運航され使用されている。
今年2月1日に横浜を出港して2月6日に那覇軍港に到着したフォート・マクヘンリー(FORT MCHENRY LCU 2020)と、今年2月27日に横浜を出て3月3日に那覇軍港に到着したカラボザ(CALABOZA LCU 2009)の2隻だ。

カラボザは3月21日に、そしてフォート・マクヘンリーは3月31日に、相次いで那覇を出て先島諸島の沖合を通過してフィリピンに向かった。
米軍画像サイトDVIDSに掲載された情報によれば、2隻はいずれも、米軍とフィリピン軍の合同軍事演習「バリカタン23(Balikatan 23)」で揚陸艇として運用されている。

バリカタンは米比合同軍事演習として毎年行われているが、今年のバリカタン23は、米海兵隊の情報によれば米軍、フィリピン軍に加えてオーストラリア軍も参加し、1万7500人以上の過去最大規模で4月11日から28日にかけて実施されている。報道によれば自衛隊もこの演習にオブザーバー参加している。

アメリカ海軍協会(U.S. Naval Institute)が発行するオンラインニュース、USNI NEWSによれば、このバリカタン23には、米海兵隊の第3海兵遠征軍傘下の第3海兵沿岸連隊(MLR:Marine Littoral Regiment)も参加している。
第3海兵沿岸連隊はハワイに本拠を置く部隊だが、昨年、海兵隊の部隊として初めてMLRに改編された連隊だ。
MLRとは、米海兵隊の新たな運用構想(EABO:Expeditionary Advanced Based Operations(日本の防衛省は「機動展開基地作戦」と訳している))を実行する中核となる部隊だ。

そしてEABOは、対艦ミサイル、対空ミサイルなど多様な能力の兵器を持った比較的小規模の部隊を、「前方地域に」設置される「簡素かつ臨時の場所(遠征前方基地:EAB)」に配置し、移動しながら戦闘を行う、海兵隊の新たな戦争の構想だ。USNI NEWSの記事には、「アイランドホッピング戦略」という表現も見られる。

この構想は、具体的にはまさに「第1、第2列島線」を戦場とする対中国との戦闘を想定した構想だ。つまり、南西諸島をはじめとする日本列島などを戦場として米軍が戦争を行う構想だ。戦場にされるのはあくまでも日本列島などの列島線であって、米本土ではない。
バリカタン23への第3海兵沿岸連隊の参加を報じたUSNI NEWSの記事は、第2列島線にフィリピンが含まれており、その意味で「海兵隊にとってバリカタンは重要な機会となっている」ことを指摘している。

米軍画像サイトDVIDSには、陸軍LCUカラボザが第3海兵遠征軍を輸送していることを示す写真も掲載されている。ただし、カラボザやフォート・マクヘンリーが輸送したのがMLRなのかどうかについては、今のところまだ不明だ。
とは言え、EABOを試行する機会としての意味も付与されたバリカタン23で海兵隊の輸送を担っているということは、EABを移動して戦闘を行うMLRを輸送する手段の一つとして、横浜ノースドックのLCUが位置づけられていることを示しているのではないか。

今年1月の日米2プラス2では、沖縄の第12海兵連隊を改編して第12海兵沿岸連隊(MLR)とすることと、横浜ノースドックに陸軍揚陸艇部隊を「新編」することが同時に発表された。
横浜に「新編」する陸軍揚陸艇部隊が、海兵隊MLRの輸送と関連していることをわざわざ告知するかのような発表だった。

「運航しない」という約束で横浜ノースドックに運び込まれて「保管」されていただけのはずのLCUが、20年後には、南西諸島をはじめ日本列島などを戦場として米軍が戦争を行う構想を支える重要な手段に位置づけられてしまった、ということではないか。

(RIMPEACE編集部 星野 潔)


1月30日、横浜港内で軍用タンクローリーを積んで操船訓練を行っていたLCUフォート・マクヘンリー(23.1.30 星野 撮影)


2月16日、横浜ノースドックに停泊中のLCUカラボザ(23.2.16 星野 撮影)


2023-4-19|HOME|