横浜ノースドックで陸自がクレーン訓練(2)


6月21日、横浜ノースドックの埠頭先端部に海上自衛隊の揚陸艇「輸送艇2号」が接岸し、
大型クレーンを使って陸上自衛隊によるコンテナの積み込み・積み下ろしの訓練が始まった(23.6.21 星野 撮影)


輸送艇2号の甲板に、クレーンでコンテナを積む訓練。輸送艇2号の艦橋上部には20ミリ機関砲が搭載されている(23.6.21 読者 撮影)


積み込んだコンテナを降ろすために、クレーンのワイヤーをコンテナに取り付ける作業を陸自隊員が行っている(23.6.21 星野 撮影)


暗緑色の迷彩服が陸自隊員で、青い迷彩服は海自隊員だ(23.6.21 星野 撮影)


クレーンの運転席には陸自隊員が座っているが、その横には民間企業労働者とみられる人がつき、操作の指導を行っていた(23.6.21 星野 撮影)


場所は大さん橋やみなとみらい地区の真正面。横浜港内遊覧船の航路の目の前で行われた軍事訓練だ(23.6.21 星野 撮影)


クレーンで釣り上げたコンテナの動きを、隊員たちが介錯ロープを使って制御している(23.6.21 星野 撮影)


訓練のさなか、埠頭先端部に並ぶ陸自隊員たち。訓示を受けていたのだろうか(23.6.21 読者 撮影)


6月21日の訓練の全景。陸上での、クレーンでコンテナを吊り上げる基本技術の習得訓練も行われていた(23.6.21 星野 撮影)

6月19日から20日にかけて、横浜ノースドックの埠頭先端部で、陸上自衛隊によるクレーンでコンテナを扱う基本操作の訓練が行われていたことは既に紹介したが、6月21日には、海上自衛隊の横須賀地方隊に所属する輸送艇2号(LCU 2002)が横須賀から横浜ノースドックにやってきて埠頭の先端部に接岸し、その後、クレーンを使ってコンテナをこの輸送艇2号に積み込んだり、降ろしたりする訓練が6月23日まで続けられた。

1992年に就役した輸送艇2号は、艦種記号のLCU(Landing Craft Utility)が示しているように、港湾以外の海岸にも車両などの物資や人員を陸揚げすることのできる揚陸艇だ。輸送艇2号は、1988年に就役した輸送艇1号(2022年に除籍)とともに長い間、自衛隊の保有する数少ない揚陸艇だった。

ごく最近まで自衛隊が保有していた揚陸艇が、長い間、海自の輸送艇2隻のみだったということは、陸自はこれまでは、揚陸艇を作戦行動において本格的に使用することは事実上想定してはいなかったのだろう。

しかし、2022年度予算から、陸上自衛隊は、米陸軍のLCUをモデルにしていると見られる新たな揚陸艇の取得を開始している。
陸自みずから揚陸艇の取得を開始したということは、揚陸艇を南西諸島で展開する作戦行動、すなわち戦争において使用していこうという意図があるのだろう。

とはいえ、揚陸艇を購入したからといって、それを運用するノウハウが即座に自然に身につくわけではない。
そこで、まずは「手近」にある、海上自衛隊の古参の揚陸艇を使って、揚陸艇を運用するための基本技術を習得する訓練を行ったということなのだろう。

クレーンを使った揚陸艇へのコンテナの積み下ろしの技術習得訓練は、一見すると地味な動きにも見える。
しかし、その延長上には、琉球弧などでの「実戦」での使用も視野に入れられているはずだ。そこで暮らす住民の生活や生命などお構いなしにだ。

横浜ノースドックには、今年4月から、米陸軍揚陸艇部隊が配備された。今年1月の日米2プラス2で配備の合意を公表した際、日本政府は、この米陸軍揚陸艇部隊の「意義」として南西諸島への部隊・物資の輸送を挙げている。
まさにその揚陸艇部隊が配備された米軍基地で、今回、陸上自衛隊はわざわざ揚陸艇の運用技術の習得訓練を行ったということなのだ。
陸自の揚陸艇を、米軍の揚陸艇部隊と一体の運用を行えるようにするための動きの表れではないか。
そしてそれによって、陸自は南西諸島での、米軍のEABO(機動展開前進基地作戦)の少なくとも一端を担おうとしていることを示しているのではないか。

ところで、そもそも横浜ノースドックの埠頭の先端部は、日米地位協定に基づいて自衛隊が「共同使用」することが可能な地域には指定されてはいない。
自衛隊は自衛隊であって米軍では無い。
横浜ノースドックの先端部は、確かに米軍の「施設及び区域」として提供されてはいるが、自衛隊の基地や訓練場として使われるために提供されている訳では無い。
今回の訓練のために、日米合同委員会で「一時使用」を認める合意がなされたという発表もない。
今回の自衛隊の活動が、やむをえない緊急事態への対応として行われていた訳でも無い。
つまり、横浜港のど真ん中で、衆人環視の中、自衛隊は日米地位協定の規定にすら反する行為を行ったということだろう。
実力組織による「法の支配」の無視は、極めて危険であり、見過ごすことはできない。

(RIMPEACE編集部 星野 潔)


6月22日にも訓練が続けられていたが、なぜか埠頭上には白いテントが立てられていた。
エラい階級の人物が視察にやってきたのだろうか。それとも「審査員席」か何かなのだろうか(23.6.22 星野 撮影)


6月23日の朝にも、訓練は行われていた(23.6.23 木元茂夫 撮影)


陸自トラックにコンテナが積み込まれて、訓練終了の準備も進んでいた(23.6.23 木元茂夫 撮影)


6月23日、訓練が終わり、横浜ノースドックを離岸する直前の輸送艇2号(23.6.23 星野 撮影)


海自横須賀基地に停泊する輸送艇2号。普段は、この横須賀基地の長浦港を定係港としている(23.6.25 星野 撮影)


2023-7-23|HOME|