在韓米軍防空砲兵旅団の車両、横浜からパラオへ?


6月18日、4台の米軍車両が横浜ノースドックの埠頭先端部近くに並べられた。
左側の水色の船体は、6月9日から19日まで横浜ノースドックに停泊していたタンカー「YOSEMITE TRADER」の後部




4台のうちハンビーとトラック各1台には、牽引車両が取り付けられている


トラックの前面に「35BDE 6-52ADA」と「E-404」の表示が見える。
在韓米軍の第35防空砲兵旅団、第52防空砲兵連隊第6大隊、E中隊を表しているのではないか


このハンビーにも「35BDE 6-52」の表示が貼り付けられているようだ


こちらのハンビーの表示には、「E」の文字がある。E中隊所属の車両のようだ(23.6.18 星野 撮影)


6月9日から19日まで横浜ノースドックに停泊していたタンカー「YOSEMITE TRADER」(23.6.10 星野 撮影)


6月21日、これまで並べられていた4台の近くに、別の3台の米軍車両が新たに並べられていた(23.6.21 星野 撮影)

6月18日、横浜ノースドックに米軍トラックやハンビー合わせて4台が並んだ。
うちトラック1台とハンビー1台は、後ろに牽引車両を連結している。
トラックの前面には、「35BDE 6-52ADA」と「E-404」の表示が貼り付けられていた。
「35BDE」とは35th Air Defense Artillery Brigadeすなわち第35防空砲兵旅団、「6-52ADA」とは6th Battalion, 52nd Air Defense Artilleryすなわち第52防空砲兵連隊第6大隊を表しているのだろう。この第6大隊は第35防空砲兵旅団に属する部隊だ。
また「E-404」は、このトラックが第6大隊のE中隊(整備中隊)の車両だということを表しているのではないか。

第35防空砲兵旅団は、韓国の烏山空軍基地に本拠を置き米陸軍第8軍に属する、在韓米陸軍の部隊だ。
その在韓米陸軍の部隊の車両が、どのように横浜ノースドックに現れたのかは不明だ。
6月16日から21日の早朝まで、米海軍車両貨物輸送艦フィッシャー(FISHER T-AKR 301)が横浜ノースドック近くの民間埠頭の鈴繁埠頭に停泊して、揚陸作戦資材の積み込み作業を行っていたが、その作業との関連も不明だ。

さらに6月21日には、新たにハンビー2台とトラック1台が、6月18日から置かれていた4台の車両の近くに並べられた。この新たに加わった車両の所属部隊は不明だ。

これらの米軍車両は、6月26日までは横浜ノースドックに並べられていたが、6月26日から27日にかけて寄港した貨物船が出港した後、姿が消えていた。この貨物船に船積みされて搬出されたのだろう。

6月26日に横浜ノースドックに寄港した貨物船とは、パナマ船籍の民間貨物船「HUGE SW」だ。
HUGE SWは、横浜にやってくる直前には、中国江蘇省蘇州市の張家港港に入港していた。米軍の物資の輸送の目的でパナマ船籍の民間貨物船が中国江蘇省の港に寄港することはあまり考えられないから、民間貨物船としての中国への貨物輸送を終えた後に、米軍とのチャーターに入って、米軍基地横浜ノースドックにやってきたのだろう。

横浜ノースドックに接岸した貨物船HUGE SWは、6月27日に船倉の蓋を開けて、クレーンを使って船積み作業を行った。そして同じ27日の夕方には横浜を出港した。
既に述べたようにHUGE SWが出港した後、それまで並べられていた米軍車両は横浜ノースドックの埠頭上から姿を消していたので、HUGE SWがこれらの車両を積み込んでいったものと考えられる。

貨物船HUGE SWは横浜出港後、7月1日の早朝に那覇軍港に入港し、同じ7月1日の夕方には那覇を出港してパラオのコロールに向かった。コロールには現地時間の7月5日の夜に入港した。

横浜ノースドックで貨物船HUGE SWに積み込まれた第35防空砲兵旅団の車両は、那覇軍港で降ろされた可能性もゼロでは無いが、パラオに向かった可能性が高いのではないか。
というのは、パラオではこの7月、米インド太平洋軍の演習「ノーザン・エッジ23-2」(Northern Edge 23-2)の一環として、PAC3ミサイルの実弾射撃演習が行われたからだ。
那覇軍港では、この演習に参加するPAC3ミサイル部隊の積み込みが行われた可能性が高い。なぜなら、パラオでPAC3ミサイルの実弾射撃を行ったのは、米軍画像サイトDVIDSのシリーズ記事「38th ADA Brigade Patriot Live-Fire in Palau - Northern Edge 23-2」によれば、嘉手納基地に配備されている第38防空砲兵旅団の第1大隊だったからだ。
つまり、パラオでPAC3ミサイルの実弾射撃演習を行ったのは、日本に配備されている、すなわち相模総合補給廠に司令部を置く第38防空砲兵旅団だったのだ。
とはいえ、「ノーザン・エッジ23-2」は米インド太平洋軍の演習であり、統合任務部隊(JTF)の一員として在韓米軍の第35防空砲兵旅団の第6大隊整備中隊もそれに加わっていたとしても、不思議ではない。

第35防空砲兵旅団第6大隊整備中隊が、「ノーザン・エッジ23-2」の実弾射撃演習に参加していたのであれば、この部隊は、韓国から横浜を経由して演習場のパラオに向かったということだろう。
このことは、米軍が東アジア、インド太平洋地域で実際に戦争を行う際にも、横浜ノースドックを軍事展開の拠点として使うということを示しているのだろう。

2018年10月に、米陸軍第1軍団前方司令部司令官が時事通信のインタビューに答えて発言していたように、横浜ノースドックは、米軍にとってRSOIを実行する重要な拠点となっているのだ。
(RSOIとは軍事用語。Reception(受け入れ)、Staging(駐留作戦準備)、Onward Movement(前方展開)、Integration(戦力統合)を意味する) (時事通信HP https://www.jiji.com/jc/v4?id=20181118campzama0003より引用)

(RIMPEACE編集部 星野 潔)


6月26日、横浜ノースドックに入港したパナマ船籍の貨物船HUGE SW


HUGE SWの入港直後の時点では、埠頭上に米軍車両が並べられている車両の一部がまだ辛うじて見えていた(23.6.26 星野 撮影)


6月27日、貨物船HUGE SWは船倉への積み込み作業を行った。すでに埠頭上の米軍車両は見えなくなっている


6月27日、HUGE SWが出港した後の横浜ノースドックの埠頭上。並べられていた米軍車両は姿を消している(23.6.27 星野 撮影)


7月17日、パラオで行われたPAC3ミサイルの実弾射撃演習
米軍画像サイトDVIDSの記事「38th ADA Brigade Patriot Live-Fire in Palau - Northern Edge 23-2 [Image 1 of 7]」より引用。
写真に写っている兵士は、第38防空砲兵旅団第1大隊の操作・整備担当者という説明が付いている
(https://www.dvidshub.net/image/7926024/38th-ada-brigade-patriot-live-fire-palau-northern-edge-23-2)


2023-7-27|HOME|