海兵隊実弾射撃演習、沖縄と東富士を横浜がつなぐ(3)
海兵隊の装備輸送を担った「ひまわり8」


7月10日、海兵隊の大砲や車両などを那覇軍港から運んで横浜ノースドックやって来た「ひまわり8」(23.7.10 星野 撮影)


8月4日に積み込みをした「ひまわり8」は、8月10日の夕方まで横浜に停泊を続けた。出港前日の8月9日、入港してきた音響測定艦エイブルが横を通っていく(23.8.9 星野 撮影)


8月10日の夕方、横浜をようやく出港し、那覇軍港に向かって東京湾を南下する「ひまわり8」(23.8.10 星野 撮影)


東富士演習場で7月15日から7月28日まで行われた「沖縄県道104号線越え155ミリ榴弾砲実弾射撃訓練の分散・実施」で使用された物資を那覇軍港から横浜ノースドックに運び、また、演習終了後に横浜ノースドックで船積みして那覇軍港まで運んだのは、日本通運の自動車運搬船「ひまわり8」だった。

NIPPON EXPRESSホールディングスのHPによれば「ひまわり8」は、2017年に進水式を行い、東京−北海道航路に就航したRORO船だ。
この船の特徴の一つとして、上甲板部に「危険品積載スペースを新設することで火薬類なども輸送可能」としたことが挙げられている(https://www.nipponexpress-holdings.com/ja/press/2017/20170331-1.html:2023年8月15日最終閲覧)。

「火薬類なども輸送可能」な「危険品積載スペース」があるということは、弾薬も輸送可能ということではないか。この船は、米軍や自衛隊によって徴用されることも視野に入れて建造されたのだろうか。
それはともかく、日本の民間輸送会社の貨物船ではあるが、弾薬輸送にも対応可能とみられる船が、今回、那覇軍港と横浜ノースドックの間の海兵隊の資材の輸送に使用されたということだ。

もちろんそのことが、今回の海兵隊の資材の輸送において、弾薬も横浜ノースドックに運び込まれたことを意味しているとは限らない。
しかし、いずれにせよ、今回「ひまわり8」が運んだものについて、情報は何も公開されていないのだ。

既に2022年8月27日付けの当HPの記事に書いた通り、かつて、2019年4月までは、米軍が大砲や車両などを横浜ノースドックに陸揚げすることを防衛省から知らされた際には、横浜市は「弾薬の搬入が行われないこと」などについて国に要請したことを、基地対策課のHPに明示していた。
しかし、その後、横浜市基地対策課は、米軍が横浜ノースドックに大砲や車両を陸揚げするという通告を受けても、弾薬の搬入を行わないことを要請した、とは記述しなくなった。

とはいえ確かに、横浜市もその一員である「神奈川県基地関係県市連絡協議会」(県市協)が毎年夏に国に対して提出している「基地問題に関する要望書」には、「瑞穂ふ頭/横浜ノース・ドックを経由しての米軍の北富士・東富士演習場での実弾砲撃演習に伴う物資の移送にあたっては、弾薬等の積卸しを決して行わないこと」という文言が記載されている。

しかし、実弾射撃演習のための陸揚げが行われるたびごとに、そして防衛省から連絡があればそのたびごとに、どれだけ煙たがられようとも、市民の安全を守るためにはっきりと要請して確認する必要があることは、市民の安全を確保するためには言うまでもないことだ。
横浜市基地対策課はそれをやっているかどうかを、明示しなくなったのだ。

この点について、神奈川平和運動センターが横浜市基地対策課に交渉の場で指摘したところ、基地対策課からは、「バランスをとった」という意味不明の言葉と、上記の「県市協」の毎年の要請には書き込まれているという回答が返ってきただけだった。

そして、今回さらに驚かされたのは、今回の実弾射撃演習のための海兵隊の横浜ノースドックでの陸揚げについて、横浜市基地対策課はHPに情報を載せることすらせず、市民に一切情報を伝えなかったことだ。
横浜市は一体なぜ、情報を非公開にしたのだろうか。
市民への情報の公開よりも、防衛省や米軍の顔色をうかがうことを優先させたということだろうか。これからは「米軍の行動」にかかわる具体的な情報は市民に伝えず極力隠す、ということにしたのだろうか。
それとも横浜市には、海兵隊の「実弾射撃訓練」にともなう陸揚げの情報すら、防衛省から連絡が来なかったとでもいうのだろうか。

ところで、今回、「ひまわり8」は、8月4日に横浜ノースドックに接岸して船積みを行った後、そのまま8月10日の夕方までノースドックに停泊し続けた。
おそらく、この思わぬ長期滞在は、沖縄に大きな台風が来ていたためだろう。
しかし、「ひまわり8」は、普段は東京−北海道航路で使われている自動車運搬船だ。

日本通運の「北海道-東京航路 2023年8月配船予定表」を見ると、「ひまわり8」は、8月8日に東京で積み込みを行い、8月10日には苫小牧に入港する予定になっていたようだ。
つまり、おそらくは台風のせいとはいえ、スケジュールが大きく変わってしまったということだろう。
それによって「ひまわり8」の運航に関連する事業者には損害も生じただろう。その損害の「穴埋め」や船のチャーター期間が延びた分の負担は、誰がどのように行うのだろうか。

今回の実弾射撃演習は米海兵隊の演習なのだが、この「104号線越え射撃訓練」の「訓練移転費」は、「SACO関係経費」や「特別協定による負担」という名目で日本政府が、日本で暮らす人びとから集めた税金を充てているようだ。
とすると、今回のチャーター期間延長の「穴埋め」も、最終的には日本政府が日本の税金で負担するのだろうか。それとも別の枠組みがあるのだろうか。

(RIMPEACE編集部 星野 潔)


今年6月15日付けで防衛省HPに掲載された、今回の実弾射撃演習の「お知らせ」。遅くとも同時期には横浜市に陸揚げの連絡があったはずだ


8月15日の時点での横浜市基地対策課のHP。今回の海兵隊実弾射撃演習に伴う横浜ノースドックへの陸揚げについて、何も情報が掲載されていない


2023-8-15|HOME|