米民間タグボートが揚陸艇を横浜NDに搬入


12月14日、揚陸艇LCU2025キングスマウンテン(「25」の番号が書かれた船)を米本土から曳航して
横浜ノースドックに入港したタグボート、パシフィックファルコン(上部が白い船)(23.12.14 星野 撮影)


パシフィックファルコンとLCU2025が接岸したのは、みなとみらい地区から見て反対側の、揚陸艇が並んで係留されているバースだ(23.12.14 星野 撮影)


パシフィックファルコンは、入港したその日のうちにLCU2025を切り離してノースドックのオモテ側に移動した(23.12.15 読者 撮影)


横浜ノースドックに停泊するパシフィックファルコン(23.12.16 星野 撮影)

12月14日の朝、米国船籍の民間タグボート、パシフィック・ファルコン(PACIFIC FALCON)が横浜ノースドックに入港した。

パシフィック・ファルコンは、現地時間の11月8日に米本土のオークランドを出港し、ハワイのホノルルに現地時間の11月20日から24日にかけて滞在した後、再び出港して横浜にやって来た。

今回、このタグボートは米陸軍ラニーミード級揚陸艇のキングスマウンテン(KINGS MOUNTAIN LCU 2025)を、米本土から横浜まで運んできた。
LCU 2025は、米陸軍輸送科の第481輸送中隊(481st Transportation Company (Heavy Boat))に属していたはずだが、所属が横浜ノースドックの部隊に変更になったということだろうか。

パシフィック・ファルコンは最近、横浜ノースドックに繰り返しやって来て、揚陸艇の米本土からの搬入や米国への搬出を行っている。
まず昨年11月16日に、ラニーミード級揚陸艇のパロ・アルト(PALO ALTO LCU 2032)を横浜に運んで来て、代わりにLCUモリノ・デル・レイ(MOLINO DEL RAY LCU 2029)を11月24日に米本土へと運び出していった。
このモリノ・デル・レイは、もとはクウェートに備蓄されていたLCUで、2020年11月にクウェートから横浜ノースドックに運ばれてきたのだが、結局は米本土に持って帰ることになってしまったのだ。

次にパシフィック・ファルコンは、今年3月14日にもアメリカから単独で横浜ノースドックにやって来た。
そして3月20日にLCUポート・ハドソン(PORT HUDSON LCU 2035)を曳航して一旦は横浜を出港したのだが、おそらく途中でトラブルが発生したようで3月24日にポート・ハドソンを押しながら横浜に戻ってきてしまった。
その後、4月17日に再びポート・ハドソンを曳航して横浜を出発し、今度は無事に米国まで運んでいくことができたようだった。

今回は、12月14日に揚陸艇LCU2025を1隻運んできて、12月19日の朝に出港していった。AIS(船舶自動識別装置)の情報によれば、目的地はホノルルだ。結局、キングスマウンテンの代わりに別の揚陸艇を米国まで曳航していくということではなかったようだ。


横浜ノースドックに搬入されて停泊するLCU2025キングスマウンテン(23.12.18 星野 撮影)

ところで、今回パシフィック・ファルコンが米本土から横浜に運んできた揚陸艇のLCU 2025キングスマウンテンは、ごく最近までマルバーンヒル(MALVERN HILL)という名前だった。つまり、最近になって艦名が変えられたのだ。

この改名は、米陸軍輸送科とその学校の公式ニュースレター「The Spearhead」の23会計年度第2四半期版(2ND QUARTER EDITION: FY23)の16頁から17頁にかけての記事「BATTLES OLD AND NEW」によれば、連邦議会が2021年米国国防権限法(2021 National Defense Authorization Act (NDAA))を制定して、この法律の中で南北戦争において奴隷制を支持した南部の「アメリカ連合国」(Confederate States of America: CSA)やそれにかかわる人物などを記念してつけられた名前を変えるように国防総省に勧告したことを受けたものだという。
米軍の基地や艦船などの名称に、白人至上主義と結びつく名前を冠することは適切ではないという認識にもとづく措置だ。多くの人びとの「Black Lives Matter」の声が政治に影響を及ぼした一つの事例だろう。

ちなみにこの法律は、退陣間際のトランプ大統領による異例の拒否権行使を覆して2021年1月に連邦議会の上院が再可決して成立したものだ。

上で引用した「The Spearhead」記事によれば、LCU 2025の「マルバーンヒル」は、南北戦争での南軍の戦いにちなんでつけられた名前だった。
LCU2025と同じラニーミード級揚陸艇のLCU 2004、LCU 2011、LCU 2022、LCU 2027も南北戦争における南軍の戦いにちなんだ名前が付けられており、LCU2025を含めて計5隻の揚陸艇が改名の対象となった。
これによってLCU2004は「ALDIE」から「STONEY POINT」に、LCU2011は「CHICKAHOMINY」から「WILSON WHARF」に、LCU2022は「HARPERS FERRY」から「CHATTANOOGA」に、LCU2027は「MECHANICSVILLE」から「VIGILANT WARRIER」に、それぞれ改名された。

これら5隻のうち、12月14日に横浜に運ばれてきたLCU2025を除くと、横浜ノースドックにはLCU2022とLCU2027が係留されているが、両艦ともに今年9月18日に、旧名が表示されていた艦橋側面のプレートが取り外されている。
プレートが取り外されたことは、艦名が変更されたことを示しているのだろう。

(RIMPEACE編集部 星野 潔)


5隻のLCUの改名とその理由などを説明する、米陸軍輸送科公式ニュースレター「The Spearhead」2023会計年度第2四半期版の記事の一部




揚陸艇LCU2027の9月17日(上)と9月18日(下)の写真。
「MECHANICSVILLE」と書かれた艦橋横のプレートが9月18日に外されたことが分かる
(23.9.17及び9.18 星野 撮影)




揚陸艇LCU2022の9月17日(上)と9月18日(下)の写真。
こちらも、艦名が書かれている艦橋横のプレートが9月18日に外されている。
ただし、9月17日の時点でもプレートから「HARPERS FERRY」の名前はほぼ消されていた(23.9.17及び9.18 星野 撮影)


9月17日の数日前の時点では、LCU2022の艦橋横のプレートに「HARPERS FERRY」とはっきりと書かれていた(23.9.13 星野 撮影)


2023-12-23|HOME|