燃料補給艦ビッグホーン、3たび三菱横浜に


12月2日、横浜ノースドックに入港した燃料補給艦ビッグホーン(23.12.2 星野 撮影)


12月7日のビッグホーン。横浜ノースドック入港後、工場に入るための準備作業が行われていた(23.12.7 星野 撮影)


12月11日、三菱横浜本牧工場に移動する前日のビッグホーン。入港時よりも少し喫水が上がったようだ(23.12.11 星野 撮影)


12月12日、雨の中、三菱横浜本牧工場に接岸したビッグホーン。マンション群の向こうにシルエットが浮かび上がっている(23.12.12 星野 撮影)


ビッグホーンは、これで通算3回目の三菱横浜本牧工場入りだ(23.12.18 星野 撮影)


12月24日のビッグホーン。ヘリ離着陸用の甲板である後部甲板に大きなテントが張られている。
三菱横浜工場には、海自の護衛艦「てるづき」(DD 116)や「もがみ」(FFM 1)も入っているのが見えるが、それらと比べてもビッグホーンが大きいことが分かる(23.12.24 星野 撮影)

12月2日、横浜ノースドックに米海軍燃料補給艦ビッグホーン(BIG HORN T-AO 198)が入港した。
この燃料補給艦は、全長約206メートルの巨大船だ。

ビッグホーンは横浜にやって来る前、11月10日に原子力空母ロナルド・レーガン(RONALD REAGAN CVN 76)への洋上補給を行っている。
11月半ばから11月21日にかけては佐世保に寄港している。

12月2日の横浜ノースドックに入港後、ビッグホーンは工場入りの準備を行い、12月12日の朝に三菱重工横浜製作所本牧工場に移動した。
三菱横浜工場で船体のメンテナンス工事を行うということだろう。

これまでビッグホーンは2021年6月24日から8月12日の間と、2022年1月30日から5月1日までの2回、三菱横浜工場に入っている。今回で3回目だ。

三菱重工横浜製作所本牧工場では、2019年4月から5月に横須賀配備の駆逐艦ミリウス(MILIUS DDG 69)が任務航海の帰りに弾薬を降ろすことなく接岸して緊急修理を行ったのを皮切りに、米軍艦船が当たり前のように使用するようになった。

当然のことだが、外国の軍隊が、仮に日本企業と個別に契約を結んだからと言っても、「軍隊」という組織の性質上、日本国内の施設を勝手に使用することは許されないはずだ。

米国は外国であり、米軍は外国の軍隊だ。
安保条約第6条に基づいて、日本の「施設及び区域」を使用することを許されているとされている米軍といえども、実際に個別の「施設及び区域」を使用するためには、日米地位協定に基づく手続きを踏まなければならない。
つまり、日米地位協定第2条第1項(a)によれば、米軍が具体的な個別の「施設及び区域」の使用を許されるためには、「個個の施設及び区域に関する協定」を、日米合同委員会を通じて日米両政府が締結しなければならない。

しかし、日米合同委員会において、三菱重工横浜製作所本牧工場を日米地位協定第2条に基づく「施設及び区域」、すなわち米軍基地にするという合意とそのための協定が締結されたという発表はなされていない。

また、三菱重工横浜製作所本牧工場での米軍艦船の整備工事は、日米ACSA(Acquisition and Cross Servicing Agreement)(正式名称:「日本国の自衛隊とアメリカ合衆国軍隊との間における後方支援、物品又は役務の相互の提供に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定」)に基づく「役務の提供」ではあり得ない。
というのは、日米ACSA第1条第5項で、「この協定に基づいて行われる後方支援、物品又は役務の要請、提供、受領及び決済については、日本国の自衛隊及びアメリカ合衆国軍隊(中略)が実施する」と規定されているからだ。
三菱横浜本牧工場が自衛隊の組織の一部であって、そこで働いているのが自衛隊員だということでなければ、日米ACSAを適用することはできない。

つまり、人道上やむを得ない緊急事態でもないのに、外国軍たる米軍の艦船が横浜の民間施設に居座って修理を受けている状態を、法的に正当化できる理屈は無い、ということではないか。

(RIMPEACE編集部 星野 潔)


米軍画像サイト、DVIDSに掲載された写真。今年11月10日、「フィリピン海」で原子力空母ロナルド・レーガン(RONALD REAGAN CVN 76)に補給を行うビッグホーン。
米軍画像サイトDVIDS記事「USS Ronald Reagan (CVN 76) conducts fueling-at-sea with USNS Big Horn (T-AO 198)」
https://www.dvidshub.net/image/8117928/uss-ronald-reagan-cvn-76-conducts-fueling-sea-with-usns-big-horn-t-ao-198より引用


2023-12-28|HOME|