貨物弾薬輸送艦、横浜ノースドックに入港


2月12日、横浜ノースドックに入港した貨物弾薬補給艦カール・M.ブラッシャー(24.2.12 読者 撮影)


カール・M.ブラッシャーは全長210メートルの巨大船だ(24.2.12 星野 撮影)


2月12日、カール・M.ブラッシャーの横から現れてゲートを出て行ったバス(24.2.12 星野 撮影)


横浜港のど真ん中の埠頭への貨物弾薬補給艦の接岸は、きわめて異例のことだ(24.2.12 星野 撮影)

横浜ノースドックでは2月8日に揚陸艇部隊の運用を開始する式典が行われたが(この揚陸艇部隊運用開始などについては、改めて別に記事を掲載する)、そのわずか4日後の2月12日の午前、埠頭先端部近くに貨物弾薬輸送艦が突然入港した。

米海軍ルイス・アンド・クラーク級貨物弾薬補給艦のカール・M.ブラッシャー(CARL M. BRASHER T-AKE 7)だ。

この貨物弾薬補給艦は横浜に出没する前には、2月5日に佐世保を出港し、2月8日に強襲揚陸艦アメリカ(AMERICA LHA 6)とドック型揚陸艦グリーン・ベイ(GREEN BAY LPD 20)に沖縄の東側で洋上補給を行っている。

カール・M.ブラッシャーは、全長210メートル、満載排水量42000トン以上の巨大船だが、弾薬を始め、食料品や各種の消耗品などの貨物、さらには燃料などの補給を行う機能を持っている。繰り返すと、弾薬を運び、海軍艦船に供給することが、カール・M.ブラッシャーの主要な任務の一つとなっているのだ。

ところで横浜市は、米軍の演習で横浜ノースドックに車両や物資の搬入が行われる際には、ノースドックに弾薬の搬入を行わないように求める要望を日本政府に申し入れてきた。
なぜか近年、以前は行っていた、この、国から米軍による車両や物資の搬入の通知があるたびごとの、弾薬の搬入を行わないようにという要請をしなくなっているが、横浜市基地対策課によれば、弾薬の搬入をしないように求める姿勢には変わりはないという。
 にもかかわらず今回米軍は、大量の弾薬の輸送を主任務とする巨大船を、敢えて横浜港に入港させたということになる。

 近年、米海軍給油艦や輸送艦などの米軍の巨大船が横浜ノースドックに入港するようになってはいたが、弾薬を大量に積む貨物弾薬補給艦の入港は、きわめて異例のことだ。
 米軍は、横浜市の方針を知らないわけではないだろう。知りつつ、それでも弾薬補給艦を入港させたということではないか。

ルイス・アンド・クラーク級貨物弾薬補給艦は、しばしば横須賀にやって来る。しかし、横須賀にやって来ても埠頭などには接岸せず、基地内にも入らず、錨地に沖泊まりするだけだ。
1月30日にも同級の貨物弾薬補給艦ワシントン・チャンバース(WASHINGTON CHAMBERS T-AKE 11)が横須賀に現れて2月14日の朝の時点でも居座っているが、この艦も基地内には入らず、錨地に錨泊を続けている。つまり、軍港ですら、貨物弾薬補給艦は埠頭に接岸せずに錨地に留まるのが通例だ。
にもかかわらず、今回カール・M.ブラッシャーはいきなり横浜港内に入り、大さん橋やみなとみらい地区の真ん前の横浜ノースドックに停泊した。一体どういうことなのだろうか。

ルイス・アンド・クラーク級貨物弾薬輸送艦は、米海軍艦船への洋上補給を任務とする艦船なので、陸軍揚陸艇部隊が横浜ノースドックで運用を開始したこととカール・M.ブラッシャーの寄港との間に関係があると言えるのかどうかは、今のところ分からない。

しかし、今回の寄港が、少なくとも結果として、弾薬を大量に積む輸送艦の横浜入港を既成事実化し、日本の地方自治体の方針などお構いなしに、やりたい時にやりたいことをすることを見せつける「効果」を持つものであることは確かだろう。それを米軍がどこまで意識しているのかは不明だが。

今回、貨物弾薬輸送艦の入港によって、横浜市はその対応を、米軍に試されているといえるだろう。

横浜市当局がこのまま何もせずに、弾薬輸送艦が横浜ノースドックに接岸したことを見過ごすならば、米軍は今後当たり前のように、横浜港のど真ん中で弾薬の搬入や搬出を行っていく可能性がある。

確かに今回寄港したカール・M.ブラッシャーが、実際に弾薬を積んでいるかどうかは分からない。
しかし、そもそも市民の日常業務や観光や生活の場である横浜港の中心部に巨大弾薬輸送艦が接岸したという市民の安全にかかわる重大事について、何らの情報も公開されていないこと自体が、受け入れがたい事実だ。
市民と港湾の安全を確保するために、港湾管理者たる横浜市は、カール・M.ブラッシャーの艦内への立ち入り検査を行うべきではないか。立ち入り検査を拒絶するのであれば、直ちに横浜港からの退去を求めるべきではないか。

今後、弾薬積載艦船が当たり前のように横浜に入港を繰り返し、横浜港のど真ん中で弾薬が取り扱われるようになってしまうのかどうか、重大な岐路を迎えているのではないか。
横浜市の対応が、今、問われている。

(RIMPEACE編集部 星野 潔)


1月30日、横須賀沖の錨地に現れた貨物弾薬補給艦ワシントン・チャンバース(24.1.30 星野 撮影)


錨地に停泊するワシントン・チャンバース。横須賀では、貨物弾薬補給艦は埠頭には接岸せず、錨地に滞在する(24.2.11 星野 撮影)


2024-2-14|HOME|