弾道ミサイル追跡艦、因島の民間工場に


2月28日、タグボートに引っ張られて横浜ノースドックを離岸する弾道ミサイル追跡艦ハワード・O・ロレンゼン


横浜ノースドックを出港するロレンゼン。後方に見える2隻の音響測定艦は、左がエイブル(T-AGOS 20)、右がエフェクティブ(T-AGOS 21)


横浜港内を進む弾道ミサイル追跡艦の横を、小さな港内遊覧船がすり抜けていく


ベイブリッジの下を通過するロレンゼン

2月24日からに横浜ノースドックに滞在していた弾道ミサイル追跡艦ハワードO.ロレンゼン(HOWARD O.LORENZEN T-AGM 25)は、2月28日の15時過ぎ、離岸し出港した。
約4日間の横浜滞在だった。

横浜を発ったロレンゼンが向かったのは、瀬戸内海だった。

3月1日の朝、ハワードO.ロレンゼンは因島のジャパンマリンユナイテッド因島工場に接岸した。

この米軍唯一の弾道ミサイル追跡艦は、因島で大規模な修理整備工事に入るのだろう。
ジャパンマリンユナイテッド因島工場は、海自艦船のみならず米軍艦船の修理整備拠点の一つとなっているのだ。

ちなみに、ハワードO.ロレンゼンは、ちょうど1年前の2023年の3月1日には、舞鶴のジャパンマリンユナイテッド舞鶴事業所に接岸している。
そして同年4月27日まで舞鶴で修理を行った。
今回の因島のJMU工場への接岸は、舞鶴での修理工事終了の日から数えると、1年に満たない時点での再びの修理工場入りだ。
今回のJMU因島工場接岸は、定期修理なのだろうか、それとも、何らかの不具合が見つかったということなのだろうか。

ところで、岸田内閣は2022年12月16日、「戦後の我が国の安全保障政策を実践面から大きく転換する」(「国家安全保障戦略」)ことを主張する「安保三文書」を、国権の最高機関(日本国憲法第41条)たる国会に議論も関与もさせずに、閣議決定した。
その「国家安全保障戦略」では、「自衛隊、米軍等の円滑な活動の確保のために」「民間施設等の自衛隊、米軍等の使用に関する関係者・団体との調整」を進めることがうたわれている。
しかし実際には、米軍による民間工場などの使用は安保三文書閣議決定以前から既に進んでいたのだ。

なお、日米地位協定の第2条によれば、米軍が日本国内の施設及び区域の使用を許されるためには、日米地位協定第25条に定められた合同委員会でその個個の施設及び区域に関する協定を両政府が締結しなければならない。
艦船修理工場はまさに施設であるから、米軍が使用を許されるためには、日米合同委員会でその使用に関する協定を締結しなければならないはずだ。
しかし、今回のジャパンマリンユナイテッド因島工場に限らず、米軍艦船が日本の民間艦船修理工場に入る際に、そのような協定が締結されたという情報は公開されていない。
つまり、米軍の使用についてどのような協定が結ばれているのかという内容どころか、地位協定の手続きを守って施設の使用に関する協定が締結されているのかどうかすら、確認ができないということだ。
これは「法の支配」という観点から見ても、由々しき事態ではないか。

(RIMPEACE編集部 星野 潔)(24.2.28 星野 撮影)


本牧沖を通過し、東京湾を南下するハワードO.ロレンゼン
手前に見える三菱重工横浜製作所本牧工場には、昨年12月2日から米海軍燃料補給艦ビッグホーン(T-AO 198)が入り、大規模な修理工事を行っている


2024-3-1|HOME|