陸自、横浜NDの米陸軍揚陸艇で荷役技能訓練(2)


2月12日の夕方、横浜NDの揚陸艇カラボザの脇にクレーンやフォークリフトが置かれ、コンテナが動かされた形跡があった(24.2.12 星野 撮影)


同じ2月12日、陸自が使用している建物の横にもクレーンが置かれ、コンテナを動かした形跡があった(24.2.12 星野 撮影)


2月13日、揚陸艇カラボザの横で行われた、陸自のコンテナ荷役技能訓練の様子(24.2.13 星野 撮影)




コンテナの上に隊員がのぼって玉外し作業をしている(24.2.13 星野 撮影)


フォークリフトでコンテナを動かす訓練も同時に行われていた。
クレーンでのコンテナ吊り上げなどの訓練は危険だからということか、訓練期間中は救急車が近くに待機していた(24.2.13 星野 撮影)




陸自が共同使用している建物の横でも、クレーンでコンテナを持ち上げて動かす訓練が行われていた(24.2.13 星野 撮影)


別の角度からみた、2月13日のコンテナ荷役技能訓練(24.2.13 読者 撮影)


車両には「中輸」と書かれている。陸自中央輸送隊所属の車両であることを表している(24.2.13 読者 撮影)


2月14日も訓練は続いた(24.2.14 星野 撮影)


この日も救急車が待機していた(24.2.14 読者 撮影)


コンテナを支えているのが陸自隊員たちで、それを遠巻きに眺めているのは米兵たちだ(24.2.14 星野 撮影)


クレーンの操縦席に指導役の隊員が張り付いて、手取り足取り操作を教えているようだ(24.2.14 読者 撮影)


この場所でも、クレーン訓練は行われていた(24.2.14 星野 撮影)


フォークリフトでコンテナを運ぶ訓練も続いていた(24.2.14 星野 撮影)




2月15日の訓練と撤収作業の様子(24.2.15 星野 撮影)


撮影日は不明だが、今回の陸自訓練期間中に撮影したものと見られる写真。
コンテナ上で作業しているのが陸自隊員。揚陸艇の甲板上にたむろしているのが米軍兵士だ。
在日米陸軍の「X」(旧ツイッター)の2月21日付けの投稿より引用
https://twitter.com/USARJ_PAO/status/1760208545889583117


上と同じ、在日米陸軍の旧ツイッター2月21日付けの投稿に掲載された写真
手前の白いヘルメットと、高いところにいる迷彩服姿が米軍兵士たち、奥の方にいる黒いブーツが陸自隊員たちだ

横浜ノースドックの揚陸艇カラボザの横や、陸自が共同使用している建物の横に、2月9日から運び込まれたコンテナに動きがみられたのは、2月12日以降のことだ。

2月12日の夕方、揚陸艇カラボザの横にクレーンやフォークリフトが置かれ、前日まで並べられていたコンテナの位置が大きく変わり、動かされた形跡があるのが確認された。
陸自が共同使用している建物の横にもクレーンが置かれ、並べられていたコンテナも、やはり動かされた形跡が確認された。
この日の日中から横浜ノースドックで、陸上自衛隊によるクレーンやフォークリフトを使った、コンテナの荷役作業のための基本技能を習得する訓練が開始されたということだろう。

2月13日からは、訓練の様子を実際に確認することができた。

コンテナの上に陸自隊員がのぼって玉掛けをして、クレーンで持ち上げて運び、陸自隊員が玉外し作業をする。
フォークリフトを使ってコンテナを移動させ、コンテナの上にコンテナを積み上げる。
そんな一見地味な技能訓練だったが、揚陸艇を実際に運用するためには、こうした技能の習得が欠かせないはずだ。
今回の横浜ノースドックでの陸自の訓練は、少なくとも2月15日まで続けられた。

そもそも2月8日に横浜ノースドックで運用開始されたのは、米陸軍の複合揚陸艇中隊(CWC: Composite Watercraft Company)である第5輸送中隊だが、自衛隊も「自衛隊海上輸送群(仮称)」と称する、同種の揚陸艇部隊を2025年3月までに呉に発足させることを発表している。揚陸艇の運用は、陸自が担当するという。
そして、陸自は2022年度以降、毎年度、各種揚陸艇を取得する予算を計上し、急ピッチで船艇を揃えつつある。

まず、2022年度予算には、「中型級船舶」(LSV)1隻及び「小型級船舶」(LCU)1隻を取得する予算が計上された。LSVとは米陸軍の保有する大型揚陸艦であるLogistics Support Vessel、すなわち兵站支援艦と同種の揚陸艦のことだ。
LCUとは、改めて書くまでもないが横浜ノースドックにも係留されている揚陸艇、Landing Craft Utilityのことだ。

2023年度予算には「小型級船舶」(LCU)2隻の取得予算が計上され、さらに2024年度予算には、「機動舟艇」3隻取得の予算が計上された。
「機動舟艇」については、防衛省はなぜかアクロニムを示していないが、米陸軍が導入を開始する機動支援艇MSV(Maneuver Support Vessel)と同等の舟艇のことだろう。MSVは、横浜ノースドックにも大量に「保管」されていた年代物の機動揚陸艇LCM(Landing craft mechanized)に代えて、米陸軍が開発した最新式の舟艇だ。

今回の横浜ノースドックでの陸自の訓練は、急ピッチで導入した揚陸艇を実際に運用できるようにするための、基本技能習得訓練の一環だったのだろう。

今回の訓練中にカラボザの脇に停車していた車両は、陸自中央輸送隊のものだった。横浜市保土ヶ谷区の横浜駐屯地に本部を置き、国内各地に5つの方面分遣隊などを持つ防衛大臣直轄部隊だ。
2025年には発足する自衛隊揚陸艇部隊、「自衛隊海上輸送群(仮称)」に配属される予定の隊員が、陸自中央輸送隊でその準備活動を行っているということではないか。

また、海自横須賀基地にも海自の保有する古い揚陸艇が1隻あるにもかかわらず、陸自が、揚陸艇の荷役作業の技能習得訓練をわざわざ米軍基地である横浜ノースドックで行ったということは、米陸軍揚陸艇部隊からの指導を受けるためだった可能性がある。
米軍としても、対中国戦争構想であるEABO(機動展開前進基地作戦)を、自衛隊に担わせることができるならば、大歓迎ということだろう。
横浜ノースドックの米陸軍揚陸艇部隊は、自衛隊の揚陸艇部隊の指導を行う役割も、事実上担うことになるのではないか。

(RIMPEACE編集部 星野 潔)



昨年8月31日、横浜ノースドックに入港した米陸軍LSV(兵站支援艦)「ブレホン・B・サマーヴェル大将」(GENERAL BREHON B. SOMERVELL LSV-3)。
米陸軍が保有する最大の揚陸艦だ。LSVは、普段はハワイよりも東側で運用されている(23.8.31 星野 撮影)


米陸軍が新たに開発し、導入する機動支援艇(MSV)。これと同種のものを自衛隊も導入するとみられる。
米陸軍HP2022年10月12日付け記事「New vessel class enters Army watercraft fleet with prototype launch」より引用
https://www.army.mil/article/260993/new_vessel_class_enters_army_watercraft_fleet_with_prototype_launch


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