因島から戻った弾道ミサイル追跡艦、衛星打ち上げの監視へ


5月16日の午前、横浜ノースドックに入港した弾道ミサイル追跡艦ハワード・O・ロレンゼン(24.5.16 星野 撮影)


5月24日、横浜ノースドック出港前日のロレンゼン(24.5.24 星野 撮影)

5月16日、弾道ミサイル追跡艦ハワードO.ロレンゼン(HOWARD O.LORENZEN T-AGM 25)が横浜ノースドックに入港した。

ロレンゼンは2月28日に横浜を出港した後、3月1日に因島のジャパンマリンユナイテッド因島工場に到着して、工事を行っていた。
因島で2ヶ月以上工事を行った後、5月14日に工場を出発して、横浜にやって来た。

ロレンゼンが整備工事に出発するのも、工事が終わった後に戻ってくるのも横浜ノースドックだったということは、横浜がこの米海軍の現役唯一の弾道ミサイル追跡艦の実質的な定係港、あるいは少なくとも活動拠点になっていることを改めて示している。

今回、5月16日に横浜に寄港したロレンゼンは、5月25日の朝、出港していった。
AIS(自動船舶識別装置)の情報によれば、その後、5月26日の深夜に大隅海峡を西向きに通過し、東シナ海方面に向かった。

5月27日未明に、日本の海上保安庁に対し、朝鮮半島で衛星を積んだロケットを発射するという事前通知があったことが報道されており、実際、その後、ロケットの発射が行われている。
ロレンゼンが5月25日に横浜を出港したのは、この衛星打ち上げの監視のためだろう。
朝鮮半島からの衛星打ち上げの軌道は日本海ではなく南の方向に向かうものであり、ロレンゼンが大隅海峡を通過して東シナ海方面に向かったことは、それと符合している。



ところで、ロレンゼンが因島のジャパンマリンユナイテッドの工場に入った時にも書いたことを、改めて以下に繰り返す。

日米地位協定第2条によれば、米軍による日本国内の施設及び区域の使用が許されるためには、日米地位協定第25条に定められた合同委員会でその個個の施設及び区域に関する協定を両政府が締結しなければならない。
艦船の修理工場はまさに施設であるから、日米合同委員会で事前に使用に関する協定を締結しなければ、米軍の使用は許されないはずだ。
しかし、今回のジャパンマリンユナイテッド因島工場に限らず、米軍艦船が日本の民間艦船修理工場に入る際に、そのような協定が締結されたという情報は公開されていない。
つまり、日米地位協定に違反する行為を米軍は行っており、日本政府もそれを黙認しているということだ。まさに日米両政府による「法の支配」の蹂躙だ。
日本国内における「法の支配」の回復が焦眉の課題となっている。

(RIMPEACE編集部 星野 潔)


5月21日、バージから補給を受けるロレンゼン。給油を受けていることを示す赤い旗がマストに掲げられている(24.5.21 星野 撮影)


バージから船体中央部にホースが伸ばされている(24.5.21 星野 撮影)


2024-5-28|HOME|