横浜NDに居座る陸軍兵站支援艦


7月6日、横浜ノースドックに居座り続けて2か月になった陸軍兵站支援艦「ブレホン・B・サマーヴェル大将」(24.7.6 星野 撮影)


5月6日、那覇軍港から横浜ノースドックに戻ってきて入港当日の「サマーヴェル大将」(24.5.6 星野 撮影)


5月6日以前の4月23日から27日にかけても横浜に寄港していたのだが、その時には、手前に並べられているコンテナや軍用車両を積んで那覇軍港に向かった(24.4.25 星野 撮影)


5月6日の入港後、翌7日には「サマーヴェル大将」の横に複数のコンテナが並べられているのが確認された(24.5.7 星野 撮影)


5月7日に確認された複数のコンテナは、5月8日の夕方から9日の午前中までの間に「サマーヴェル大将」に積み込まれた。写真は5月10日。甲板にコンテナが並んでいる。
なお、「サマーヴェル大将」とは無関係だが、右上にホークミサイル発射装置を始めとする陸自ホークミサイル部隊の装備や車両が集結しているのが見える(24.5.10 星野 撮影)

これまで横浜ノースドックに配備も「保管」もされていなかったはずの陸軍兵站支援艦が、2ヶ月以上に渡って横浜ノースドックに居座り続けている。

居座っているのは、米陸軍「フランク・S・ベッソン・ジュニア大将」級兵站支援艦(LSV: Logistics Support Vessel)の3番艦、「ブレホン・B・サマーヴェル大将」(GENERAL BREHON B. SOMERVELL LSV-3)だ。

「サマーヴェル大将」は、フィリピンのスービックから4月23日に横浜ノースドックにやって来て軍用車両やコンテナを積み込んだ後、同月27日に横浜を出港して5月1日に那覇軍港にそれらを運んだ。
そして、翌5月2日には那覇軍港を出港し、5月6日に再び横浜ノースドックに入港した。
ここまでの動きについては、既にこのHPの記事で紹介済みだ。

横浜寄港直後の5月8日の夕方から9日の午前中までの間には、複数のコンテナが「サマーヴェル大将」の甲板に積み込まれた。

しかし、その後、2か月が経過した7月6日になっても、この兵站支援艦は、甲板に積んだコンテナをそのままにしてずっと横浜に居座り続けている。

全長83メートルで全幅約18メートルの、米陸軍の保有する艦船としては最も大きな船である「フランク・S・ベッソン・ジュニア大将」級兵站支援艦は、これまでは原則としては、太平洋ではハワイよりも東側の海域で使われてきたようだ。

このクラスの兵站支援艦の2番艦「ハロルド C. クリンガー3等准尉」(CW3 HAROLD C. CLINGER LSV-2)が2016年9月に寄港したことはあったが、陸軍兵站支援艦が横浜に現れることはほとんどなかったようだ。
そして、パールハーバーを母港としていると見られる「ブレホン・B・サマーヴェル大将」も同様の使われ方をしてきたため、横浜寄港は少なくともここ20年ほどの間では昨年8月末の入港が初めてのことだったと見られる。

ところがその後、今年4月に再び横浜に現れ、さらに5月前半にもやって来て長期滞在を続けている。異例の頻繁な寄港と長期滞在だ。

米軍画像サイトDVIDSなどの情報によれば、今回、「サマーヴェル大将」は2024年の「オペレーション・パスウェイズ」(Operation Pathways)の支援のために、東アジア・東南アジア地域にやってきた。

「オペレーション・パスウェイズ」は、米陸軍がオセアニアから東南アジア、東アジアで「同盟国」と連鎖的に長期間演習を続ける軍事作戦だ。

「サマーヴェル大将」は、3月半ばにヒッカム統合基地で装備を積み込み、現地時間の3月19日にパールハーバーを出港し、4月12日から15日にかけてフィリピンのスービックに寄港したが、これは米比合同軍事演習サラクニブ24(Salaknib 24)のためだった。

その後、横浜にやって来て、居座り続けているわけだが、おそらくは、まだ続けられている「オペレーション・パスウェイズ24」の今後の演習で使う機会があるということなのだろう。
しかし、作戦行動のために横浜ノースドックで長期にわたって待機し続けるということは、実質的にはこの兵站支援艦が横浜を出撃拠点とするということでもある。

もしかしたら、「サマーヴェル大将」の最近の横浜への頻繁な寄港や長期滞在は、2024年の「オペレーション・パスウェイズ」の支援に限定された話では無く、米軍が兵站支援艦の使い方を変えようとしていることを示しているのかもしれない。
つまり、米軍は東アジア、東南アジア、西太平洋の島嶼地域での今後の軍事行動に、このクラスの兵站支援艦を投入しようとしているのかもしれない。
そして今回のように、アジア太平洋地域での軍事行動に陸軍兵站支援艦を投入する場合、横浜が実質的な出撃拠点として使用されることになるのではないか。

しかし、そうなれば、横浜ノースドックへの揚陸艇部隊(「第5輸送中隊」)新編にあたって日本政府が明言した、「新編に伴う船舶の増加なし(横浜ノース・ドックに配置済の船舶を使用)」という約束との整合性も問われる事態になる。

横浜ノースドックの返還を市是としているはずの横浜市は、兵站支援艦の長期滞在という基地機能強化を、静観するだけで良いのだろうか?

(RIMPEACE編集部 星野 潔)


5月20日には、ラニーミード級揚陸艇カラボザに搭載されているボートが海上に降ろされて、「サマーヴェル大将」の周囲にオイルフェンスを張り、
カラボザも「サマーヴェル大将」の周囲を航行するという奇妙な光景が見られた。何らかの訓練だったのだろうか(24.5.20 星野 撮影)


「フランク・S・ベッソン・ジュニア大将」級兵站支援艦は全長83メートル、ラニーミード級揚陸艇は全長53メートル。大きさはだいぶ違う(24.5.20 星野 撮影)


「サマーヴェル大将」と同様に「オペレーション・パスウェイズ24」に投入されている米国船籍の民間船「シーコア・リー」も6月9日から12日にかけて横浜ノースドックに寄港し、
並んで停泊した(24.6.9 星野 撮影)


「シーコア・リー」は6月10日、応急修理または整備のようなことを行っていた(24.6.10 星野 撮影)


3月15日、ハワイのヒッカム統合基地で「オペレーション・パスウェイズ24」の物資や車両の積み込みを行う兵站支援艦「サマーヴェル大将」。
米軍画像サイトDVIDS記事「Soldiers load up LSV3 in preparation for Operation Pathways [Image 2 of 20]」より引用
https://www.dvidshub.net/image/8298234/soldiers-load-up-lsv3-preparation-operation-pathways


4月13日、フィリピンのスービックで米比合同軍事演習「サラクニブ24」で使用する車両やボートなどの物資を陸揚げする「サマーヴェル大将」。
米軍画像サイトDVIDS記事「Salaknib 24 | Dive Team offload equipment from LSV 3 [Image 2 of 5]」より引用
https://www.dvidshub.net/image/8347242/salaknib-24-dive-team-offload-equipment-lsv-3


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