空軍ヘリ、横浜港で低空飛行訓練


9月10日、横浜市神奈川区の臨海部を低空で周回飛行する空軍UH-1Nヘリ。後ろの煙突はエネオス横浜製造所(24.9.10 星野 撮影)

9月10日、横田基地所属の空軍UH-1Nヘリコプターが横浜ノースドックに飛来して離着陸訓練を行い、さらにノースドック周辺の工業・流通業の民間事業所が立ち並ぶ臨海部の埋め立て地を含む横浜港で、低空周回飛行訓練を繰り返した。
15時過ぎに飛来したUH-1Nヘリの横浜港での訓練は、着陸していた時間も含めて約30分に及んだ。


横浜ノースドック(左下)から浮上したUH-1Nヘリ(24.9.10 星野 撮影)


横浜港内の海上を超低空飛行するUH-1Nヘリ(24.9.10 星野 撮影)


低空飛行のまま、埋め立て地の方向に飛行する(24.9.10 星野 撮影)


埋め立て地の上空付近で機体を傾けて大きく方向転換する(24.9.10 星野 撮影)


ヘリの向こうに見えるのは、浅野総一郎の銅像だ。浅野学園に立っている(24.9.10 星野 撮影)


出田町ふ頭付近の上空を通って、瑞穂ふ頭上空に入る空軍UH-1Nヘリ(24.9.10 星野 撮影)


横浜ノースドックの上空に戻ってきたUH-1Nヘリ(24.9.10 星野 撮影)


横浜ノースドックのグラウンドへと降下する(24.9.10 星野 撮影)




着陸するUH-1Nヘリ(24.9.10 星野 撮影)




ローターを回して着地している米空軍ヘリの横を、横浜市消防局の消防車が何事も起きていないかのように通り過ぎていく。
米軍基地横浜ノースドックの中では、横浜市消防局や神奈川県警が日常的に訓練を行っている(24.9.10 星野 撮影)






グラウンドから浮上するUH-1Nヘリ(24.9.10 星野 撮影)




再び低空での周回飛行訓練に入る(24.9.10 星野 撮影)




風力発電施設「ハマウィング」の横を通過するUH-1Nヘリ。横浜市の資料によれば、「ハマウィング」のローターのハブのところが地上78メートル、
ローターは直径80メートル。ローターが地上と垂直になった時、ローターの先端の頂点から地面までは118メートルだ。
つまり、このUH-1Nヘリは航空法上の最低安全高度よりもずっと低い高度を飛んでいるということだ(24.9.10 星野 撮影)






横浜港内で低空での旋回をするUH-1Nヘリ。市民を巻き込む事故を起こす危険性など、かれらの眼中には無いのだろう(24.9.10 星野 撮影)


再び「ハマウィング」の横を通過するUH-1Nヘリ。相変わらず超低空飛行だ(24.9.10 星野 撮影)








横浜港内で低空飛行を続けるUH-1Nヘリ。やがて東神奈川駅の方向に向かった(24.9.10 星野 撮影)

今回横浜ノースドックに飛来したUH-1Nヘリのシリアルナンバーは、「69-6645」だった。横田基地所属機だ。

このヘリは、9月10日の14時39分頃に東京都清瀬市下清戸付近の上空で、航空機の位置情報放送システムであるADS-B(Automatic Dependent Surveillance - Broadcast)の位置情報の送信(放送)を開始した。
位置情報の送信を開始した直後、このUH-1Nヘリは清瀬市と埼玉県新座市の市県境周辺の上空を600〜900フィート(182.9〜274.3メートル)という非常に低い高度で周回飛行をした。

これはつまり、このヘリが、横浜に現れる前には埼玉県新座市と東京都清瀬市にまたがって立地している米空軍基地である「大和田通信所」周辺で周回飛行訓練を行っていたということだ。
14時42分頃には、飛行速度がゼロキロフィートになっていたので、おそらくは大和田通信所のヘリポートに着地したのだろう。
大和田通信所も、米空軍ヘリの訓練場として使われているのだ。

その後、このシリアルナンバー「69-6645」の米空軍UH-1Nヘリは、14時50分頃には大和田通信所を離れ、南下を開始した。

15時3分頃には横浜港上空に到達し、既に述べたように、横浜ノースドックとその周辺の横浜港上空で30分近くにわたって周回飛行訓練と離着陸訓練を行った。

横浜ノースドックには飛行場もヘリポートも存在しない。したがって、今回のUH-1Nヘリの離着陸が日本の航空法第79条の趣旨に反する行為であることはいうまでもない(「航空法第79条 航空機(国土交通省令で定める航空機を除く。)は、陸上にあつては空港等以外の場所において、水上にあつては国土交通省令で定める場所において、離陸し、又は着陸してはならない。ただし、国土交通大臣の許可を受けた場合は、この限りでない。」)。

しかし、ノースドックへの離着陸だけでなく、横浜港上空の周回飛行も、日本の法令無視と安全軽視の姿勢が露骨な酷いものだった。
たとえば、15時3分18秒の時点で、横浜市神奈川区の埋め立て地、恵比須町の「レゾナック・セラミックス」(旧昭和電工セラミックス)横浜工場の上空を飛行しているが、その時の飛行高度は800フィート、つまり約243.8メートルだった。
もちろん、人口密集地の工場上空での、この高度(243.8メートル)での飛行は、日本の航空法上の最低安全高度に違反している。
この米空軍ヘリは、日本の法令に反する低空飛行訓練を横浜港内で行ったというわけだ。

また、15時10分51秒には、大さん橋の手前の海上の上空を通過しているが、この時の飛行高度は200フィート、約61メートルだった。まさに超低空飛行だ。海上とはいえ法令違反、横浜港のど真ん中でのきわめて危険な行為だ。

日本政府そして防衛省は、国会での答弁でも、自治体に対する説明でも、航空特例法の規定にかかわらず米軍機も日本の航空法の規定を順守していることを強調している。
しかし実際には、米軍機は航空法の安全規定を無視して危険行為を繰り返しており、市民の生活と生命の安全に対する現実の深刻な脅威となっている。
今回の危険行為を行った責任者の処分を行い、米軍の傍若無人な行為を止めさせ、「法の支配」を日本社会に取り戻さなければならない。
日本列島に暮らす人びと安全への深刻な脅威となっている米軍を規制しなければならない。それこそが日本社会における「安全保障政策」の差し迫った課題ではないか。

なお、横浜ノースドックや横浜港上空で飛行訓練を行ったUH-1Nヘリは15時32分前には横浜港上空を離れ、一旦は東神奈川駅や横浜市神奈川区台町上空方面に向かった後、南下を開始し、15時39分頃には鎌倉市の稲村ケ崎近くの海岸に到達した。
その後、ほぼ海岸線に沿って飛行し、15時46分頃に相模川河口付近から北上を開始した。 そして、16時2分頃に横田基地に帰着している。

(RIMPEACE編集部 星野 潔)


『横浜市防災計画 資料編』「航空災害対策関連用語解説」より引用
横浜ノースドックや横浜港の最低安全高度は、「ア」にあたるはずだ。


埼玉県本庄市のHPより引用。
https://www.city.honjo.lg.jp/soshiki/kikakuzaisei/hisyo/shichohenotegami/yoseraretagoikentokaito/3_seikatsukankyo_gomi_risaikuru_kogainado/heisei28nen/1481603976478.html
防衛省は、米軍機も「日米合同委員会合意により、航空法と同一の高度規制が適用されている」と自治体に説明していることが分かる。
つまり、今回の横浜港や大和田通信所周辺での空軍ヘリの低空飛行訓練は、日米合同委員会合意にも違反していることが明白だ。


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