横浜ノースドックで行われた陸自演習を振り返る(4)
10月28日、横浜ノースドックで警備訓練の配置につく陸自軽装甲機動車と隊員(右上)。左下は米陸軍の揚陸艇部隊所属と見られる兵士たち(24.10.28 星野 撮影)
場所は、2隻の揚陸艇が停泊していたノースドックのAバース付近だ(24.10.28 星野 撮影)
今年10月に横浜ノースドックで行われた陸上自衛隊の演習を振り返る連載の4回目。
前回3回目の記事では、陸上自衛隊が運用する高速輸送艦「ナッチャンworld」が10月17日に横浜ノースドックに接岸し、陸自の車両を多数陸揚げしたこと、他方、同じ10月17日の午前までに横浜ノースドックに並べられていた陸自車両は、18日には姿を消していたことまでを報告した。
しかし、10月の横浜ノースドックでの陸自演習はそれで終わりではなかった。
10月24日頃から、横浜ノースドック内の陸自が共同使用している建物の周囲に陸自トラックが普段よりも多く並び始め、10月26日になると、軽装甲機動車やトラックなど陸自の車両が横浜ノースドックの中の各所に配置されているのが確認された。軽装甲機動車には防弾チョッキを着用した陸自隊員も乗車しているのが見えた。
これは日米合同軍事演習「キーンソード25」の一環として行われた自衛隊による米軍基地警備訓練だったのだろう。
神奈川県大和市などが公表した防衛省の説明資料によれば、「キーンソード25」で「陸上作戦(共同/協同基地等警備訓練)」が横浜ノースドックでも行われ、陸自第18普通科連隊(真駒内)の約120名と米軍座間憲兵隊の約20名が参加するとのことだった。
とはいえ、横須賀基地で行われた同様の訓練を見ると、防衛省はすべての参加部隊を発表しているとは限らないのだが。
外から監視していた限りでは、10月28日まで横浜ノースドックに多数の陸自車両と重装備の陸自隊員たちが展開しているのが確認され、29日にはその姿が消えていた。
おそらく、10月28日で横浜ノースドックの基地警備訓練は終わったのだろう。
「キーンソード25」の、横浜ノースドックでの基地警備訓練は10月26日に本格的に開始されたようだ。上の写真は、埠頭先端部近くで配置についていた軽装甲機動車。
なお、軽装甲機動車の上側に見える黒い車は、自衛隊小型トラックに先導されて訓練を視察しているようだった(24.10.26 星野 撮影)
ノースドックの中央部付近で配置につく軽装甲機動車。その後ろにも陸自車両が待機している(24.10.26 星野 撮影)
10月26日、Aバース付近に配置された軽装甲機動車(24.10.26 星野 撮影)
これも10月26日の軽装甲機動車(24.10.26 星野 撮影)
ノースドックの、陸自が共同使用している2棟の建物の周囲に多数の陸自車両が並ぶ(24.10.26 星野 撮影)
10月27日も訓練が続けられていた(24.10.27 星野 撮影)
陸自トラックが並ぶ(24.10.27 星野 撮影)
これも10月27日(24.10.27 星野 撮影)
10月27日のAバース付近。これも陸自車両だ(24.10.27 星野 撮影)
10月28日。車両の間に防弾チョッキを着た隊員たちが見える(24.10.28 星野 撮影)
撤収作業をしているように見えた陸自隊員たち。上方には2人の米軍兵士の後ろ姿も見える(24.10.28 星野 撮影)
ところで、陸自などによる警備訓練実施中の10月28日15時53分頃に米陸軍ブラックホークヘリコプターが横浜ノースドックに飛来し、基地内中央部のグラウンドに着陸した。
これは同日15時41分頃にキャンプ座間を飛び立ち、小田急線沿線の玉川学園付近上空を経由して、横浜港に飛来した機体だ。
このブラックホークは、横浜ノースドックのグラウンドに5分間ほどローターを回したままとどまり、少なくとも私服姿の男性と女性と見られる人物2名を乗せた後、飛び立った。
対岸の民間施設の建物の真上をかすめるようにして浮上したブラックホークは、飛んできたルートをなぞるように飛行し、玉川学園付近を経由して16時9分にキャンプ座間に着陸した。
搭乗した人物たちや彼らを見送った米軍人たちは、ヘリ飛来の三十数分前にはノースドック内の陸自が共同使用する建物のすぐ近くで白いバスを降りて、陸自の建物の方に向かって歩いているのが目撃された。
とはいえ、彼らが横浜ノースドックに来ていた目的が、陸自の基地警備訓練の視察だったのかどうかは、今のところ分からない。
それはともかく、飛行場でもヘリポートでもない横浜ノースドックを飛行場のように使用することは、国土交通大臣の許可を得ない限り、日本の航空法では認められない行為だ。
この10月28日のブラックホークの離着陸の際には、近くに米軍消防車が待機していた。米軍も危険性を認識しているのだ。
しかし、横浜ノースドックにヘリが離着陸することの危険性は米軍基地内だけのことでは無い。
市民の生活と仕事と観光の場でもある横浜港で、米軍が航空法に反する危険な行為を繰り返していることは、人びとの安全を現実に脅かす極めて由々しき事態だ。
横浜市も神奈川県も日本政府も、この、市民の生命と生活の安全の危機を、傍観していてはならない。
(RIMPEACE編集部 星野 潔)
10月28日15時50分過ぎ頃、横浜港上空に飛来した米陸軍ブラックホークヘリコプター。港の上空を低空飛行している(24.10.28 星野 撮影)
そのままノースドックの上空へ(24.10.28 星野 撮影)
ノースドックの中央部のグラウンドに向かう(24.10.28 星野 撮影)
着陸態勢に入ったブラックホーク。機体の向こうには、到着待ちをしている人びとが見える(24.10.28 星野 撮影)
ブラックホーク飛来の三十数分前のノースドック。ヘリを待っていたのと同じ人びとが白いバスを降りて陸自の建物の方に向かって歩いている(24.10.28 星野 撮影)
ブラックホークに乗り込む私服姿の人びと。向こうの迷彩服姿の軍人は、「お見送り」だったのだろう(24.10.28 星野 撮影)
5分ほどで飛び立ったブラックホーク。地上には米軍消防車が待機しているのが見える(24.10.28 星野 撮影)
港湾関連施設の建物の上をかすめるように飛んでいく。きわめて危険な行為だ(24.10.28 星野 撮影)
基地警備訓練との関連は不明だが、10月28日には陸自ヘリも横浜港上空に飛来して周回飛行を行った(24.10.28 星野 撮影)
ただし、米軍ブラックホークヘリとは違い、それなりの高度での周回飛行だった(24.10.28 星野 撮影)
2024-12-30|HOME|