兵站支援艦が横浜ノースドックに入港


1月23日、横浜ノースドックに入港した陸軍兵站支援艦「ブレホン・B・サマーヴェル大将」(25.1.23 星野 撮影)


甲板上に複数のコンテナを載せて入港したようだ(25.1.25 星野 撮影)


昨年5月6日から7月26日まで横浜ノースドックに居座った時のサマーヴェル。船体の各所に錆が浮いていた(24.5.6 星野 撮影)


昨年7月18日、サマーヴェルの「お迎え」にプサンからやって来たタグボート「TNSディフェンダー」(24.7.18 星野 撮影)


7月19日、他のタグボートの助けも借りて、サマーヴェルを曳航していくための準備作業が行われていた。
サマーヴェルの後ろに見える兵站支援艦は「ウィリアム・B・バンカー中将」(LT. GENERAL WILLIAM B. BUNKER LSV 4)(24.7.19 星野 撮影)


7月25日、出港前日のサマーヴェルとTNSディフェンダー(24.7.25 星野 撮影)

陸軍兵站支援艦、「ブレホン・B・サマーヴェル大将」(GENERAL BREHON B. SOMERVELL LSV-3)が1月23日、横浜ノースドックに入港しAバースに接岸した。

サマーヴェルのノースドック入港は、昨年7月26日の朝に横浜を発って以来のことだ。
7月26日に横浜を出たサマーヴェルは8月1日に韓国のプサンに入り、その後ずっとプサンにいたようだ。
12月末と1月前半に試験航海と見られるプサンでの出入港を2回ほど行った後、1月19日にプサンを発って「サマーヴェル大将」は横浜に「戻って」きた。

昨年7月6日付けのリムピースの記事で紹介したように、もともとハワイを母港としているはずの「サマーヴェル大将」は、昨年4月23日にフィリピンのスービックから横浜ノースドックにやって来た。

その後、軍用車両やコンテナを積み込んで、同月27日に横浜を出港して5月1日に那覇軍港に入港したものの、5月6日に横浜に戻ってきてから、2ヶ月以上に渡って横浜に居座り続けていた。

ところが昨年7月18日になって、韓国のプサンからパナマ船籍のタグボート「TNSディフェンダー」(TNS DEFENDER)がサマーヴェルを迎えにやって来た。
このタグボートがサマーヴェルをワイヤーで引っ張って、7月26日に横浜を出てプサンに連れて行ったのだった。

サマーヴェルは、昨年5月6日まで7月26日まで2か月以上横浜に係留されている間、船体のあちこちに錆の浮いた汚れた姿を晒し続けていたが、それだけでなく、ブサンまで自力で航行できないほどの問題を動力部に抱えていたのではないか。

「サマーヴェル大将」は、米陸軍の保有する最大の艦級であるフランク・S・ベッソン・ジュニア大将級兵站支援艦の3番艦だ。
このタイプの兵站支援艦は、例えば米軍の主力戦車M1であれば15両を一度に運ぶことができるほどの運搬能力を持ちつつ、港湾の整備されていない海岸にも艦首部のバウランプから上陸させることができることを「目玉」とする船だ。

しかし、この「フランク・S・ベッソン・ジュニア大将」級の兵站支援艦は、1980年代に発注が開始された船だ。3番艦のサマーヴェルも1980年代後半に建造されたかなり古い船だ。
EABO(機動展開前進基地作戦)に代表される近年の米軍の対中国戦争構想に沿わせる形で、米陸軍輸送科としてはこのタイプの兵站支援艦を含む揚陸作戦用艦艇の「有用性」をアピールし、組織の維持拡大も図ろうとしていたのだろうが、「サマーヴェル大将」を動かしてみたら必ずしも思惑通りには動かなかったということではないか。

とは言え、今年1月23日に横浜に戻ってきたサマーヴェルは、一見すると真新しく見えるほど塗装されており、また、単独でプサンから横浜に航行してきたことからも、韓国で動力部を含む大規模な整備工事を行ってきたことがうかがえる。
今後もこの兵站支援艦を使おうというのだろう。

米陸軍が、今後もこの級の兵站支援艦を対中国戦争構想における当面の輸送手段として使えることをアピールし、実際に「活用」しようとし続けていくことは十分考えられる。

実際、米軍画像サイトDVIDSには、今年1月31日に米海兵隊第3海兵兵站群のケビン・コリンズ司令官を始めとする第3海兵兵站群の幹部が横浜ノースドックを訪問し、サマーヴェルにも乗り込んだことを伝える記事が掲載されている。
同記事によれば、横浜ノースドックでコリンズ司令官らは、陸軍第10支援群所属の第765輸送大隊と、第3海兵兵站群との訓練や統合の機会について話し合ったという。
陸軍第765輸送大隊は、横浜ノースドックの揚陸艇部隊である第5輸送中隊を指揮下に置く部隊だ。

「サマーヴェル大将」は2月17日になってもなぜか母港に帰らず、横浜ノースドックに居座っている。
もしかしたら米陸軍は兵站支援艦「サマーヴェル大将」を、このままなし崩しに第5輸送中隊の艦艇の一つとして横浜ノースドックを拠点にして使おうと考えはいないだろうか。

しかし、兵站支援艦は、2023年の揚陸艇部隊新編の発表以前には横浜ノースドックに配置されていなかった船舶だ。
揚陸艇部隊を横浜ノースドックに新編した際に米軍が防衛省を通じて横浜市に伝えた説明では、「新編に伴う船舶の増加なし(横浜ノース・ドックに配置済の船舶を使用)」とされている。

兵站支援艦は横浜ノースドックに配置されていなかったのだから、当然、横浜ノースドックの揚陸艇部隊に兵站支援艦を配置することはあり得ない話だ。
横浜ノースドックを兵站支援艦の拠点にすることは許されないのだ。

(RIMPEACE編集部 星野 潔)


1月31日、横浜ノースドックに停泊する兵站支援艦「サマーヴェル大将」の前に並ぶ海兵隊第3海兵兵站群の幹部と陸軍第10支援群第765輸送大隊の幹部
米軍画像サイトDVIDS記事「3rd MLG CG visits Yokohama North Dock [Image 5 of 5]」より引用
https://www.dvidshub.net/image/8868894/3rd-mlg-cg-visits-yokohama-north-dock


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