横浜NDで陸自が揚陸艇の荷役作業訓練


音響測定艦ビクトリアスの横にコンテナが並んでいる(25.1.18 星野 撮影)


1月18日、横浜ノースドックの埠頭先端部、Hバースに停泊中の音響測定艦ビクトリアスの脇にコンテナやフォークリフトが並べられているのが確認された(25.1.18 星野 撮影)


1月19日には、オレンジ色のクレーンがビクトリアスの向こう側に置かれているのも確認された(25.1.19 星野 撮影)


1月20日、クレーンを使った訓練が始まった(25.1.20 星野 撮影)


少しわかりにくいが、ビクトリアスの煙突の向こう側の埠頭上に、訓練を行う陸自隊員の姿が見える(25.1.20 星野 撮影)


陸自のトラックが埠頭上に並んでいる(25.1.20 星野 撮影)


1月21日も、クレーンを使って埠頭上での訓練が続いた(25.1.21 星野 撮影)


吊り上げられたコンテナを並んで眺める陸自隊員たち。クレーンにはUCHIMIYAのロゴが。東京の民間会社、内宮運輸機工だ(25.1.21 星野 撮影)


訓練の現場近くには、自衛隊員でも米兵でもない作業服姿の人影が。陸自隊員にクレーンの操作を教える民間会社のオペレーターではないか(25.1.21 星野 撮影)


荷役作業に当たる自衛隊員は色とりどりのカバーで覆ったヘルメットを被っている。今回の訓練では見当たらなかったが、荷役作業の米兵も同様の姿になる(25.1.21 星野 撮影)


コンテナの上に上って玉掛け作業をする自衛隊員(25.1.21 星野 撮影)


クレーンで高く吊り上げられたコンテナ(25.1.21 星野 撮影)


1月22日の訓練(25.1.22 星野 撮影)


1月22日には、クレーンを使ってコンテナを米陸軍揚陸艇フォート・マクヘンリーに載せる訓練が行われた。
すでに甲板上にいくつかコンテナが並び、フォート・マクヘンリーの艦橋上に陸自隊員が鈴なりになっているのが見える(25.1.22 星野 撮影)


1月23日も、米軍揚陸艇にコンテナを積み込む訓練が続いた(25.1.23 星野 撮影)


フォート・マクヘンリーの甲板上のコンテナの上に登って作業をする陸自隊員(25.1.23 星野 撮影)


フォート・マクヘンリーの近くに停められていた陸自トラックの脇には、なぜかテントが設営されていた(25.1.23 星野 撮影)

今年1月20日頃から23日頃にかけて、横浜ノースドックで陸上自衛隊が揚陸艇にコンテナを積み込むための、クレーンを使った荷役作業訓練を行った。

今回の陸自訓練で使われたコンテナは、1月18日にはノースドックの埠頭先端部に搬入されていた。また、1月19日までには、訓練で使用された民間会社のクレーンも訓練現場に置かれていることが確認でいた。

訓練そのものが行われているのを視認できたのは、1月20日からだった。
視認できた限りでは、1月20日から21日にかけてはまず、コンテナをクレーンで吊り上げて動かす技能の習得訓練が行われていたようだ。
使われたクレーンは、東京の民間会社、内宮運輸機工のもののようだ。
訓練の現場の近くには自衛隊員でも米兵でもない作業服姿の人影も見えたが、陸自隊員にクレーンの操作技術を教える民間会社のオペレーターだったのではないか。

1月22日から23日にかけては、コンテナをクレーンで吊り上げて埠頭上から米軍揚陸艇に積み込み、そして揚陸艇からコンテナをクレーンで下ろす訓練が行われた。
使用された揚陸艇は米陸軍ラニーミード級揚陸艇のフォート・マクヘンリー(FOROT MCHENRY LCU 2020)だった。

1月24日の午前11時過ぎ頃には、陸自隊員たちの姿は見えずコンテナもフォート・マクヘンリーの甲板上にはのせられていなかったが、代わりに米陸軍の小型タグボート(ST: Small Tug)が2隻、甲板上に並べられていた。
陸軍事前配備貯蔵(APS: Army Prepositioned Stock)の揚陸作戦装備として20年ほど前から横浜ノースドックに配置されているものだ。
24日は、よく見るとSTの周囲に米陸軍の兵士の姿が見えたが、STをフォート・マクヘンリーに積み込んだのが陸自だったのか米軍だったのかは分からない。

1月24日にはまだ、フォート・マクヘンリーの横に、陸自が訓練で使用したコンテナは並んでいたが、25日になるとコンテナはなくなっていた。また、25日には甲板に載せられていた2隻のSTのうちの1隻は海上に降ろされて、フォート・マクヘンリーの後部に横付けされていた。

その後、甲板上に残っていたもう1隻も降ろされたようで、1月27日には2隻とも訓練前に係留されていた場所に戻されていた。

自衛隊は近年、揚陸艇の購入を進めており、今年3月にも海上輸送群と称する揚陸艇部隊を呉に新設する予定だ。
しかし、揚陸艇を買ったからといって即「使える」ようになるわけではなく、今回のような荷役作業のためのクレーン操作や玉掛けなど、付随するさまざまな技能を習熟しなければ使うことはできない。
今回の訓練は、基礎的技能を習熟するための訓練の一環ということなのだろう。

しかし、そうした訓練をなぜ、自衛隊の基地ではなく米軍基地の横浜ノースドックで米軍の揚陸艇を使って行ったのだろうか。
海自横須賀基地には、すでに以前から海自が保有する揚陸艇があるにもかかわらず…。

横浜ノースドックで陸自が揚陸艇にかかわる技能習得訓練を行うのは、米軍揚陸艇部隊の「やり方」を自衛隊に身につけさせるべく、米軍の指導も仰ぐためではなかったのだろうか。
あるいは、米軍揚陸艇に、米海兵隊や米陸軍の代わりに陸自の装備や隊員を載せて戦場に送り込むために、米軍揚陸艇に自衛隊が慣熟するためではなかったのだろうか。

そもそも自衛隊の揚陸艇部隊は、琉球弧を戦場にするための装備を運ぶことを目的としたもの、つまり、琉球弧など日本列島を戦場にしようという米軍の戦争構想に加担追随するためにわざわざ作られるものだ。
米軍幹部にとっては、陸自に揚陸艇に関わる技能を習得させることで、かれらの構想する戦争、機動展開前進基地作戦(EABO)を米兵の血を流さずに自衛隊に戦わせて行うことができるならば、それほど都合の良い話はないだろう。しかも戦場にされるのは、米本土ではなく琉球弧をはじめとする日本列島や台湾、フィリピンなどだ。
しかし、本当にそれで良いのか?

また、今回訓練が行われた横浜ノースドックの埠頭先端部は、日米地位協定に基づく自衛隊の共同使用区域ではない。訓練のために一時的に共同使用するのであれば、日米共同委員会でその旨合意しなければならない。
しかし、公開されている日米共同委員会の合意を見る限り、今回の訓練のための合意が行われた形跡はない。

つまり、米軍基地で行われた今回の陸自訓練は、日米地位協定に定められた手続きを踏まずに行われた可能性が高い。もしもそうであるならば、横浜港のど真ん中で「法の支配」を踏みにじる行為が行われたということになる。

(RIMPEACE編集部 星野 潔)


1月24日の午前11時頃、陸自隊員やクレーンの姿は見えなくなっていたが、フォート・マクヘンリーの甲板上には2隻の米陸軍ST(スモール・タグボート)が載せられていた。
STの上や横には米兵の姿が見える。陸自訓練で使われたコンテナは、まだフォート・マクヘンリーの横に並んでいる(25.1.24 星野 撮影)


1月25日には、訓練で使われたコンテナも姿を消していた(25.1.25 星野 撮影)


前日にはフォート・マクヘンリーの甲板上に載せられていた2隻のSTのうち、1隻はまだ甲板上にあったが、向きは変えられていた。
もう1隻は海上に降ろされフォート・マクヘンリーに横付けされていた(25.1.25 星野 撮影)


1月27日には、STは2隻とも、もとの場所に既に戻されていた(25.1.27 星野 撮影)


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