横浜ベイブリッジに接近して飛行する海軍ヘリ



9月11日14時22分頃、横浜ベイブリッジに異常に接近して低空飛行する2機編隊のMH-60Sシーホークヘリ。2機目は赤丸のところを飛行している(25.9.11 星野 撮影)

9月11日14時22分頃、横浜港内に2機編隊の海軍ヘリコプターが超低空で進入した。

今回やって来た2機編隊の海軍ヘリは、いずれもMH-60Sシーホークだった。
MH-60Sは、厚木基地ではHSC-12(第12海上戦闘ヘリコプター飛行隊)が使用しているが、グアムに本拠があるものの厚木基地に分遣隊がしばしば展開しているHSC-25(第25海上戦闘ヘリコプター飛行隊)も使っている。

9月11日、2機のヘリが横浜港に入ってきたことに筆者が気がついたとき、両機はともにベイブリッジに異常接近していて、一瞬まるでベイブリッジの道路部分から横浜港中心部に向けてヘリが飛び出してきたかのように見えてしまうほどだった。

今回は2機のうちの1機が、航空機が自らの高度と位置情報を放送するシステムであるADS-B(Automatic Dependent Surveillance-Broadcast)を使用していたので、それに依ってこれらのヘリの実際の飛行経路を推定すると、どうやら2機は、斜張橋である横浜ベイブリッジのワイヤが張られている部分のすぐ横、南側を通って、横浜港の中心部に進入したようだ。

ADS-Bの情報に依ると、ヘリのベイブリッジの外側部分での飛行高度は675フィート(約205.7メートル)、ベイブリッジが横浜港中心部に入った山下ふ頭付近での高度は575フィート(約175.3メートル)だった。
しかし、目視した際には、2機のヘリはもっと低く、ベイブリッジの道路部分に近い高度で飛んでいるように見えた。
また、撮影した写真を見る限りでも、高さ175メートルのベイブリッジの塔よりもかなり低い高度を飛んでいるように見える。
とはいえ、仮にADS-Bの情報の通りの飛行高度だったとしても、「当該航空機を中心として水平距離600メートルの範囲内の最も高い障害物の上端から300メートルの高度」という航空法上の最低安全高度に完全に違反していることは言うまでもない。

2機は横浜港中心部に進入すると、高度をさらに下げて横浜ノースドックのある瑞穂ふ頭に接近していき、瑞穂ふ頭とみなとみらい地区の間の海上側から出田町ふ頭側の海上へと、瑞穂ふ頭上空を超低空で横断した。
ADS-Bの情報によると、ふ頭横断時の飛行高度は250〜350フィート(76.2〜約106.7メートル)だった。目視では、そのような高度よりももっと低空を飛んでいるように見えたが。

横断を終えると、進路を房総半島の方向に変え、徐々に高度を上げながら14時24分から25分にかけて大黒ふ頭上空を通過して、横浜港の外へと出て行った。
やはりADS-Bの情報に依るならば、大黒ふ頭を通過した時の高度は775〜800フィート(約236.2〜約243.8メートル)だった。これも最低安全高度違反だ。

2機編隊はそのまま飛び去って東京湾を南下し、観音崎の海側を通って三浦海岸の金田湾をなぞるように城ヶ島の方向に進んでいった。
横浜港内に進入していた時間は、約3分。短時間のごくカジュアルな横浜港上空での飛行訓練だった。
しかし、短時間であっても、2機の米軍ヘリが市民の安全を脅かす重大な危険行為を行ったことは紛れもない事実だ。

パイロットたちにとっては、訓練というよりもスリルを味わうための「ちょっとした遊び」のようなものだったのかもしれない。
しかし、スリルを味わうために、ベイブリッジを通過している車に乗った人たちを、一方的に勝手に危険に曝すことが許されるわけがない。
米軍には、自分たちの都合のためには日本列島で暮らす人びとの生命や安全を犠牲にしても許されるという感覚が、隅々まで行き渡っているのではないか。

なお、今回の米海軍ヘリ2機編隊のうちADS-Bを使用していた機体は、13時28分に相模総合補給廠を飛び立っていた。相模総合補給廠には、訓練飛行の途中で着陸していたのだろう。相模総合補給廠に飛来する前の飛行経路は不明だ。
その後13時48分頃から14時10分頃まで房総半島南部を飛行して、そこから東京湾を通って横浜にやってきた。
横浜を飛び去った後、東京湾を南下し、城ヶ島を経由して三浦半島の西側の海上を北上し、14時51分頃、厚木基地に着陸している。

(RIMPEACE編集部 星野 潔)


横浜港内を2機編隊で超低空飛行して瑞穂ふ頭の方向に向かうMH-60Sヘリ(25.9.11 星野 撮影)




横浜ノースドックのすぐ横の海上を超低空飛行する2機編隊のシーホーク(25.9.11 星野 撮影)



横浜ノースドックのある瑞穂ふ頭の上空を2機編隊で横断するシーホーク(25.9.11 星野 撮影)



下に見えるのは「バナナ埠頭」とも言われる出田町ふ頭だ(25.9.11 星野 撮影)


高度を少しずつ上げながら大黒ふ頭の方向に向かう2機編隊の海軍ヘリ(25.9.11 星野 撮影)


2機のヘリの向こうに見える2本の煙突は東京電力横浜火力発電所のもの。煙突の高さは200メートル。それよりも低く飛んでいるのだ(25.9.11 星野 撮影)


このシルエットは、米海軍MH-60Sシーホークヘリコプターであることを示している(25.9.11 星野 撮影)



大黒ふ頭上空を飛行する2機編隊のシーホーク(25.9.11 星野 撮影)


ベイブリッジの外側に出て東京湾を南下していった(25.9.11 星野 撮影)


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