海自の海洋観測艦、横浜NDに異例の入港

9月22日の午前、横浜港の中に入ってきた海上自衛隊の海洋観測船「にちなん」(25.9.22 星野 撮影)

「にちなん」は、横浜港内に入った後、なぜか2時間近くも新港埠頭の近くで漂い続けた(25.9.22 星野 撮影)

「にちなん」が港内を漂っている間、横浜ノースドックのBバースを見ると、普段はノースドックでは使われていない、海自の使う防舷材の設置作業が行われていた。
横須賀から運んできたのだろうか。このバースに、「にちなん」は接岸することになる(25.9.22 星野 撮影)

9月22日、横浜ノースドックのBバースに接岸した「にちなん」(25.9.22 星野 撮影)

「にちなん」の右に、米海軍海洋調査船ボーディッチ、さらにその右に海洋調査船オーシャン・インターベンションと、米日3隻の海洋調査船が並んだ(25.9.22 星野 撮影)
9月22日、横浜ノースドックに海上自衛隊の海洋観測船「にちなん」が突如入港した。
横須賀を母港とする同艦は、この日の午前9時台に横須賀を出港して、10時半過ぎには横浜港の中に入ったのだが、その後、なぜか2時間近くもみなとみらい地区や新港埠頭の前あたりの海上を漂っていた。
その後、昼の12時20分頃、横浜ノースドックのBバースに接岸した。
Bバースには直前まで高速輸送艦グアム(GUAM T-HST 1)が停泊していたのだが、「にちなん」に場所を譲るために横須賀に向かい、米軍横須賀基地の13号バースに接岸した。
海自の海洋観測艦の横浜ノースドック接岸は、初めてのことではないか。
これまでも、観艦式などのために海上自衛隊の艦船がたくさん東京湾にやって来た際などに、護衛艦や輸送艦が停泊場所の一つとして横浜ノースドックに接岸することはあった。
しかし、観艦式でもないのに、海上自衛隊の艦船が米軍基地横浜ノースドックに接岸するのも、きわめて異例のことだ。
ただし、近年の例外として、2023年6月に横浜ノースドックで陸自がクレーンを使って揚陸艇にコンテナを積み込む訓練をするために、海自の揚陸艇が接岸したということはあったが。
とはいえ、これまでの横浜ノースドックの使われ方から考えると、海自艦船の接岸自体、異例なことであることは間違いない。
今回の「にちなん」接岸は、これからの横浜ノースドックの使われ方という点から見て、かなり大きな出来事になるのではないか。
「にちなん」の米軍基地横浜ノースドックへの入港は、法的にはどのような根拠に依っているのだろうか。
ところで、当HPでこれまで指摘してきたように、横浜ノースドックは米海軍の音響測定艦や海洋調査船の活動拠点であり、米海軍の情報収集活動の一大拠点として使われている。
米軍の海洋調査船に限っても、9月22日の時点で、パスファインダー級海洋調査船ボーディッチ(BOWDITCH T-AGS 62)と、米国船籍の民間船でありながら米海軍が海洋調査船として使っているオーシャン・インターベンション(OCEAN INTERVENTION T-AGS)の2隻が横浜ノースドックに滞在している。
ボーディッチは9月10日から、オーシャン・インターベンションは9月19日からの滞在だ。
「にちなん」の横浜ノースドックBバース接岸後、オーシャン・インターベンションも停泊位置をわざわざ移動して、米日の3隻の海洋調査船で並んで停泊するようになった。
このことは、今回の海上自衛隊の海洋観測艦「にちなん」の横浜ノースドックへの接岸が、この基地が米海軍の海洋調査船の拠点であることと関連していることを示しているのだろう。
そして、海上自衛隊の海洋観測艦が、米軍の活動を担うことを象徴的に示しているのではないだろうか。
おそらくこれまでも海自の海洋観測船や音響測定艦は、米軍にデータを提供する活動をしていたものと考えられるが、それは公然とは行われていなかった。
しかし、今回の「にちなん」の横浜ノースドックへの接岸は、海自の情報収集船が米軍の実質的指揮下で、米軍の手下として活動することを隠さなくなった、ということを示しているのかもしれない。
別に記事を書いて紹介する予定だが、横浜で音響測定艦の動向を見ていても、最近は海上自衛隊の音響測定艦が米海軍音響測定艦の代わりに対中国監視活動のまさに最前線に立っているらしいことがうかがえる。
自衛隊が米軍のために、そして米軍の盾となって最前線に立つことをあからさまに示しても日本社会の世論は反発しない、と自衛隊幹部や米軍幹部は考えるようになったのかもしれない。
そのことは、米軍の望む戦争のために琉球弧をはじめ日本列島を戦場として米軍に提供し、そこで暮らす人びとの生命や暮らしを米軍の考える米国の利益のために犠牲にすること、そして自衛隊が米軍のために他国の人びとを「敵基地攻撃」の対象とすることをも意味しているのだが。
9月13日からなぜかボーディッチが満艦飾になっているが、これも「にちなん」の横浜ノースドック接岸やと何か関係があるのだろうか。それとも、無関係なのだろうか。
まさか、自衛隊が公然と米軍の盾となって活動することを歓迎してのこと、ということはないか。
(RIMPEACE編集部 星野 潔)

9月23日も引き続き横浜ノースドックのBバースに停泊していた「にちなん」(25.9.23 星野 撮影)

「にちなん」の手前に停泊しているのは、米陸軍兵站支援艦「ソマーヴェル大将」(25.9.23 星野 撮影)

左から「にちなん」、ボーディッチ、オーシャン・インターベンションの3隻の海洋調査船が引き続き並んでいる(25.9.23 星野 撮影)

9月13日から海洋調査船ボーディッチは満艦飾になっている。電飾もつけていて、暗くなるとその電飾を光らせている(25.9.13 星野 撮影)
2025-9-24|HOME|