横浜NDに兵站支援艦と陸軍部隊が追加配置


左側の兵站支援艦が、11月21日に横浜ノースドックのAバースに入港してからずっと同じ場所に係留され続けている「ウィリアムB.バンカー中将」。
右側は「ブレホン・B・サマーヴェル大将」(25.12.13 星野 撮影)


今年7月8日、翌日のオーストラリアに向けての出港を控えて補給を受ける兵站支援艦バンカー。マストに給油中を示す赤い旗が掲げられている。
兵站支援艦バンカーは、ハワイから7月6日に横浜にやって来て、同月9日にオーストラリアに向けて出港していた(25.7.8 星野 撮影)

米国国防輸送協会(The National Defense Transportation Association)HPの今年7月16日付け記事によると、米陸軍は兵站支援艦「ウィリアム・B.バンカー中将」(LTG WILLIAM B. BUNKER LSV-4)と第545ハーバーマスター分遣隊(The 545th Harbormaster Detachment)をパールハーバーから在日米陸軍に転属させた。

兵站支援艦バンカーと第545ハーバーマスター分遣隊は、6月20日にパールハーバーを出発して日本に向かったという。
兵站支援艦バンカーや第545ハーバーマスター分遣隊が6月20日にハワイを発って日本に向かったことは、ハワイに本拠を置く第8戦域維持コマンド(8th Theater Sustainment Command)の公式フェイスブックなどにもその旨の投稿が掲載されている。


陸軍第8戦域維持コマンドの公式フェイスブックに6月24日付けで投稿された記事。
「金曜日」(6月20日)に兵站支援艦バンカーと第545ハーバーマスター分遣隊が、日付変更線の西側での作戦。


確かに兵站支援艦バンカーは、7月6日に横浜ノースドックに入港した。
陸軍輸送科の艦船が配備される基地は、日本では横浜ノースドック以外に見当たらない。
つまり、兵站支援艦バンカーは横浜ノースドックに配備されたということだ。

7月9日にオーストラリアに向けて出港したものの11月21日にタグボートに曳航されて横浜に「戻って」きたのは、この兵站支援艦が今年の夏から横浜ノースドックに配備されたからだったのだ。

また、兵站支援艦バンカーが横浜にやって来たのとほぼ同じ時期の7月前半以降、横浜ノースドックの中央部陸地寄りにある舗装された野積み用のスペースに、トラックやハンヴィーなどの車両10台以上やトレーラーに乗せられた小型ボート、コンテナなどが搬入されて並べられている。

それらの車両やコンテナなどは、9月4日に向きを変える並べ替えが行われたが、その後も同じ野積みスペースに置かれたままとなっている。
搬入された時期からみて、これらの車両は第545ハーバーマスター分遣隊の装備ではないか。


7月7日、赤丸のところに車両やコンテナなどが搬入されていた。青丸のところにも車両が並べられているが、こちらは6月27日頃に搬入されたもの。
赤丸のところに搬入された車両やコンテナなどが、第545ハーバーマスター分遣隊の装備と見られる(25.7.7 星野 撮影)


車両やコンテナだけではなく、オレンジ色のボートも複数搬入されていた(25.7.8 星野 撮影)


違う角度から見ると、銃の射撃訓練の的のようなものも置かれているのが分かる。横浜ノースドックで射撃訓練をするつもりなのだろうか(25.9.3 星野 撮影)


9月4日には、車両などの並べ替えの作業が行われた(25.9.4 星野 撮影)


向きを変えて並べられた車両など(25.9.4 星野 撮影)


手前の、後ろ向きになっている車両やボートなどが、第545ハーバーマスター分遣隊の装備とみられるものだ(25.9.10 星野 撮影)


12月13日の様子。通信装置とみられるトレーラーも見える(25.12.13 星野 撮影)

キャンプ座閧フ第765輸送(ターミナル)大隊(765th Transportation (Terminal) Battalion (TTBn))の公式フェイスブックの自己紹介欄には、今年の夏から、配下の部隊として新たに545th Harbormaster Det(第545ハーバーマスター分遣隊)と163rd Transportation Det(第163輸送分遣隊)が、しれっと書き加えられている。
この2つの分遣隊のうち第163輸送分遣隊については、上記の米国国防輸送協会のHPの記事などでは触れられていないが、おそらく兵站支援艦バンカーの運航を担う陸軍水兵の部隊ではないか。
つまり、第765輸送(ターミナル)大隊公式フェイスブックの記述は、兵站支援艦バンカーの横浜ノースドック配備とともに、この第163輸送分遣隊も新たに配置され、第765輸送大隊の配下に置かれたということを意味しているのではないか。

第765輸送(ターミナル)大隊公式フェイスブックの同じ欄には、「Yokohama North Dock」とも書かれている。
第765輸送大隊そのものはキャンプ座閧ノ本部が置かれているはずだが、その傘下の実質的な任務を担う部隊は横浜ノースドックに置かれているということなのだろう。

つまり、横浜ノースドックにこの夏、兵站支援艦と、第545ハーバーマスター分遣隊と第163輸送分遣隊の2つの部隊が新たに配置されたということだろう。


今年5月前半の時点での、第765輸送(ターミナル)大隊の公式フェイスブックの自己紹介欄


11月末の時点での、第765輸送(ターミナル)大隊公式フェイスブックの自己紹介欄。
5月のそれと比べると、第545ハーバーマスター分遣隊と第163輸送分遣隊が書き加えられているのが分かる。
他方で、野戦給食小隊は消えている。

ところで、米陸軍HPに2021年5月24日付けで掲載された記事「Watercraft Sustainment: Navigating the Indo-Pacific to Strengthen the Force」に、陸軍揚陸艇部隊(複合揚陸艇中隊)(CWC: Composite Watercraft Company)の今後の編成の構想が示されている。

その構想は次のようなものだ。
「The current structure of the CWC will include 5 LCU’s, 2 Small Tugs, 4 MSV(L), as well as a harbormaster operations detachment tasked with providing maintenance support to both internal and external AWS organizations in the AOR.」(複合揚陸艇中隊の現在の構造に、5 隻の LCU、2 隻の小型タグボート、4 隻の MSV(L) に加え、AOR(= area of responsibility 責任エリア) 内の内外の AWS(陸軍艦艇)の 組織に保守サポートを提供する任務を負ったハーバーマスター分遣隊が含められることになる)。

つまり、2021年5月時点の陸軍揚陸艇部隊の構想によれば、ハーバーマスター分遣隊とは「ハーバーマスター」(港湾管理者)という言葉から推測される機能とは異なり、陸軍艦艇の保守サポート機能を担う部隊だという位置づけになっているようだ。そして、この部隊はCWC(複合揚陸艇中隊)のなかに含まれることになっている。

横浜ノースドックに新編されたCWCである第5輸送中隊(5th Transportation Company)は、2024年2月から既に運用が開始されているが、それにもかかわらず、今夏にCWCである第5輸送中隊とは別の部隊として第545ハーバーマスター分遣隊が横浜にやって来たのは、何を意味しているのだろうか。
横浜ノースドックに第5輸送中隊は、これまで上記の構想の意味でのハーバーマスター部隊の機能は持っていなかったということだろうか。

であるとすれば、今夏に横浜ノースドックにやって来た第545ハーバーマスター分遣隊は、第5輸送中隊の一部となるということなのか。
それとも、第5輸送中隊とはあくまでも別の部隊として横浜に配置されたということなのだろうか。

また、そもそも兵站支援艦(LSV)は、上記のCWCの構想には含まれていないが、横浜ノースドックに2隻も配備されてしまったのは、一体どういうことなのだろうか。

この間、地元自治体や市民に何の説明も情報開示も無く、次々と新しい艦船や部隊の横浜ノースドックへの配置が続められている。

兵站支援艦バンカーよりも先に横浜ノースドックに配備された兵站支援艦「ブレホン・B・サマーヴェル大将」(GENERAL BREHON B. SOMERVELL LSV-3)についても、そしてサマーヴェルを運航する部隊である第168輸送分遣隊(168th Transportation Detachment)の横浜配置についても、何の説明も無い。

そもそも横浜ノースドックに陸軍揚陸艇部隊が新編された時、防衛省は横浜市に対し「新編に伴う船舶の増加なし(横浜ノース・ドックに配置済の船舶を使用)」(2023年4月14日付け防衛省文書)と文書で約束していたはずだ。
その約束は平然と破られて次々と新たな艦船の配置が進められている。

(RIMPEACE編集部 星野 潔)


2025-12-15|HOME|