陸軍揚陸艇、横浜からタイへ


2月19日、横浜出港の3〜4時間前の揚陸艇キングスマウンテン。甲板上に車両やコンテナなどは載せられていないことが分かる(26.2.19 星野 撮影)


タイに向けて出港する2日前の2月17日には、横浜ノースドックの中で、小型軍用タグボートでキングスマウンテンを押して、
別の揚陸艇の側面に接舷させる訓練のようなことが行われていた(26.2.17 星野 撮影)


1月終わり頃の数日間、キングスマウンテンの周囲では潜水夫による潜水作業が行われていた。
マストには、「本船で潜水夫が活動中。徐速して通過せよ」の意味の国際信号旗が掲げられていた(26.1.28 星野 撮影)

2月19日、横浜ノースドックスから陸軍揚陸艇キングスマウンテン(KINGS MOUNTAIN LCU 2025)が出港した。

AIS(船舶自動識別装置)の情報によると、キングスマウンテンは南西方向に進み、2月末にはベトナム沖を通過し、3月3日にタイの海軍基地があるサッタヒープに入港した。この間、どこか別の港に立ち寄ることは無かった。

横浜を出港する3〜4時間ほど前のキングスマウンテンの甲板には、車両やコンテナなどは積まれていなかった。その後も出港時間までに何かを積んだ形跡はなかった。ということは、「空荷」の状態で横浜からタイまで行ったということだ。

横浜からサッタヒープまで、海路だと5000kmくらいのようだ。
ラニーミード級揚陸艇の航続距離は、12ノットで空船の状態で航行すると1万海里(約18520km)だという情報がある。その情報が正しいとすると、どこにも寄港せずに行くことは可能な距離だ。

では、LCUキングスマウンテンは何のためにサッタヒープまで出かけていったのだろうか。
自衛隊の統合幕僚監部の発表によれば、タイでは1月31日から3月6日までの日程で、「タイ、米国、インドネシア、マレーシア、韓国、シンガポール、オーストラリア、中国、インド等」に自衛隊も加わった多国間合同軍事演習「コブラ・ゴールド26」が行われている。
この演習とキングスマウンテンのサッタヒープ入港は何か関係があったのだろうか。
AISでサッタヒープ入港の際のキングスマウンテンの航跡を見ると、しばらく沖合で複雑な航跡を描いていた。この動きは演習と何か関係があったのだろうか。

あるいは、キングスマウンテンのサッタヒープ行きには、「コブラ・ゴールド」とは全く別の目的があるのだろうか。

ところで、キングスマウンテンは、2023年1月に日米2プラス2で横浜ノースドックに陸軍揚陸艇部隊を新編することが発表された後、同年12月にタグボートではるばる米本土から横浜に運ばれてきた揚陸艇だ。
だが、2023年3月3日付けで防衛大臣が横浜市長に対して送付した文書には、「部隊に編入される船舶13隻は、横浜ノース・ドックに既に配置されている船舶から編入される予定であり、新編に伴う船舶の増加はない」と明記されている。
にもかかわらず、その舌の根も乾かぬわずか9ヶ月後に横浜ノースドックに新たに搬入されたのが、キングスマウンテンだ。
つまり、キングスマウンテンは横浜に配備されていてはならない揚陸艇なのだ。

ところが、防衛省はこの明白な約束違反を指摘されても知らんふりを決め込んでいる。米軍に約束を守らせる気など始めからさらさら無かったのだろう。残念ながら横浜市も約束違反を追及しようとしない。

このように、横浜ノースドックの第5輸送中隊に配備されてはならないはずの揚陸艇キングスマウンテンだが、配備後は、横浜を拠点に各地に派遣されて使用されている。

昨年のキングスマウンテンの動きを振り返ると、まず2月後半に横浜を出港し、那覇を経由してフィリピンのスービックに行っている。その後6月までフィリピンで活動し、7月になってから那覇と韓国を経由して横浜に戻ってきた。

次に、9月に那覇とホワイトビーチに行き、9月の終わり頃に横浜に戻ってきた。おそらくこの時は、日米合同軍事演習レゾリュート・ドラゴンに参加していたのではないか。

さらに、昨年10月半ばにキングスマウンテンは再び横浜を出港し、ホワイトビーチを経由して10月終わり頃にシンガポールに入港したようだ。シンガポールには11月後半までいたが、何をやっていたのかは不明だ。横浜に戻ってきたのは、今年1月になってからだった。

(RIMPEACE編集部 星野 潔)


2025年6月、フィリピンで米比合同軍事演習「サラクニブ25」に参加した揚陸艇キングスマウンテン
米軍画像サイトDVIDS2025年6月22日付け記事「Joint Off Load [Image 1 of 7]」より引用
https://www.dvidshub.net/image/9196379/joint-off-load


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