横浜NDでハーバーマスター指揮統制訓練か

3月10日、ハーバーマスター分遣隊の訓練中の横浜ノースドック。
少しわかりにくいが、音響測定艦の向こうに、トレーラーに載せられたレーダーやドーム型のテントが設営されている。
停車している軍用車両も、ハーバーマスター分遣隊のものとみられる(26.3.10 星野 撮影)

トレーラーに載せられたレーダーとドーム型のテント。テントの中で訓練が行われているとみられる(26.3.10 星野 撮影)

レーダー(てっぺんの横棒)は回転している(26.3.10 星野 撮影)

時々、兵士の姿も見えた(26.3.10 星野 撮影)

揚陸艇パウルス・フック(左)とパロ・アルト(右)。この2隻もハーバーマスター訓練に参加したようだ。
この2隻は、3月6日に「みなとみらい地区」の反対側の揚陸艇の「たまり場」になっているバースからこの位置に移動していた。(26.3.10 星野 撮影)

揚陸艇パロ・アルト。3月10日にノースドックの「すべり」に着岸して前部のバウ・ランプから2台の軍用車両を甲板に載せた。
3月11日には再び「すべり」に着岸してバウ・ランプから2台の軍用車両を陸揚げした(26.3.10 星野 撮影)

揚陸艇パウルス・フック。3月11日に「みなとみらい地区」の前の海上を動き回った(26.3.10 星野 撮影)

3月9日夕方の横浜ノースドック。ハーバーマスター分遣隊の訓練のための設営作業が進められていた(26.3.9 星野 撮影)

トレーラーに搭載されたレーダーが運ばれてきた(26.3.9 星野 撮影)


マストが伸ばされてレーダーが高い位置に上った(26.3.9 星野 撮影)


ランプが点灯し、レーダーが回転を始めた(26.3.9 星野 撮影)

3月11日の光景。この建物も今回の訓練に使われていたようだ(26.3.11 星野 撮影)

えんじ色の旗は、米陸軍輸送科のマークの入った旗。旗の下には第5輸送中隊のエンブレムが置かれている。
エンブレムには、鳥居の絵と「5TH TC」(第5輸送中隊)、「CWC」(複合揚陸艇中隊)の文字が描かれている(26.3.11 星野 撮影)

3月11日の夕方には演習は終わっていた。レーダーも既に回転を止めていた(26.3.11 星野 撮影)




訓練の資材の撤収作業が進められている(26.3.11 星野 撮影)

これらの車両もハーバーマスター訓練に使用された(26.3.11 星野 撮影)
横浜ノースドックでは、3月9日から11日にかけて、ハーバーマスター分遣隊のものとみられるトレーラーに搭載されたレーダーや車両、ドーム型のテントなどが設営され、米軍の訓練が行われていた。
「ハーバーマスター分遣隊」の訓練だったようだ。
横浜ノースドックの埠頭の海寄りの場所にテントやレーダーなどが設営されたのは3月9日。
10日から11日にかけて実際の訓練が行われ、11日の夕方には撤収作業が始められていたようだ。
10日から11日の日中にかけては、横浜ノースドックに配置されている2隻の揚陸艇も連動した動きをみせていた。これも訓練の一環だったようだ。
今回の訓練で設営されたレーダーや車両などは、昨年7月前半に第545ハーバーマスター分遣隊(The 545th Harbormaster Detachment)がハワイから転属してきた際に横浜ノースドックに搬入されて並べられていたものの一部だ。
それゆえに、今回訓練を行ったのは第545ハーバーマスター分遣隊の兵士たちだったのだろうと推測される。
しかし、3月11日には、陸軍輸送科のマークの入った旗とともに「5TH TC」(第5輸送中隊)や「CWC」(複合揚陸艇中隊)の文字の入った同中隊のエンブレムが訓練会場近くに置かれているのが視認された。
ということは、今回の訓練は第5輸送中隊の訓練でもあったということではないか。
第5輸送中隊は、2023年に横浜ノースドックに新編された陸軍揚陸艇部隊だ。
米陸軍HPに2021年5月24日付けで掲載された記事「Watercraft Sustainment: Navigating the Indo-Pacific to Strengthen the Force」に示されている、陸軍揚陸艇部隊(複合揚陸艇中隊 CWC: Composite Watercraft Company)の編成構想によると、揚陸艇中隊にはハーバーマスター分遣隊が含められることにされている。
ということは、昨夏に横浜ノースドックに配置された第545ハーバーマスター分遣隊は、第5輸送中隊を構成する部隊になったということではないか。
ちなみに、「ハーバーマスター」を直訳するならば、「港湾管理者」というような意味になる。
しかし、「ハーバーマスター分遣隊」で想定されている「ハーバー」とは、平時の通常の民間港湾というよりも、戦地あるいは何らかの軍事活動が行われている場所に近接した海岸の、兵站物資の揚陸拠点のことだろう。
ところで、横浜ノースドックで今回行われた訓練が一体何の訓練なのかということについては、だいぶ古い資料だが、米陸軍HPに2011年9月19日付けで掲載された記事「Harbormaster provides logistics common operating picture from sea to shore」(「ハーバーマスターは海上から沿岸までの一元的な状況把握を兵站の面で可能にする」)や、米軍画像サイトDVIDSに2018年3月7日付けで掲載された記事「JOINT EXPEDITIONARY BASE LITTLE CREEK-FT.STORY, VIRGINIA, UNITED STATES」(「米国バージニア州リトルクリーク・フォートストーリー統合遠征基地」)の記述が参考になる。

米陸軍HP2011年9月19日付け記事「Harbormaster provides logistics common operating picture from sea to shore」に添付されている、
「ハーバーマスター指揮統制センター」のユニットの概念図。この図に描かれている装置の多くが今回、ノースドックに設営された。
https://www.army.mil/article/65577/harbormaster_provides_logistics_common_operating_picture_from_sea_to_shoreより引用

米陸軍HPの同上記事によれば、このレーダー装置が「ハーバーマスターTSP」だ。今回、同じ形のものが横浜ノースドックに設営された。
https://www.army.mil/article/65577/harbormaster_provides_logistics_common_operating_picture_from_sea_to_shoreより引用

米軍画像サイトDVIDSに掲載された「ハーバーマスターTSP」。2018年3月7日の演習で設営されたという。
米軍画像サイトDVIDS2018年3月7日付け記事「JOINT EXPEDITIONARY BASE LITTLE CREEK-FT.STORY, VIRGINIA, UNITED STATES」より引用。
同記事によれば「ハーバーマスターTSP」は海軍のトレーラー搭載型センサー・プラットフォーム・システム(TSP)を基にしたものだという。
https://www.dvidshub.net/image/4195079/us-army-reserve-harbormaster-extends-hydraulic-mast-coastより引用
これらの記事には、訓練で横浜ノースドックに展開されていたレーダーやテントなどが、どのようなものだったのかについての説明も書かれている。
まず、トレーラーに搭載されたレーダーは、「ハーバーマスターTSP」(トレーラー搭載型センサー・プラットフォーム・システム)であり、トレーラーに油圧式マスト搭載型レーダーとビデオカメラと赤外線カメラを設置したものである。
また、ドーム型のテントは、「トレーラー搭載型中型支援システム」(The Trailer Mounted Support System-Medium (TMSS-M))と呼ばれるもので、18キロワットの発電機と環境制御装置を搭載したトレーラーを備えたテントだ。
これらは米陸軍が2011年頃に導入したとみられる「ハーバーマスター指揮統制センター」(Harbormaster Command and Control Center (HCCC))のユニットの一部となっている。
HCCCのユニットは、海兵隊や陸軍が上陸作戦など沿岸での作戦を実施する際に、補給のための船舶や積み荷の物資の位置や状況を把握し、輸送の優先順位付けを支援することなどを通じて、兵站物資の供給の迅速化を図るシステムのようだ。
米陸軍HPの2011年9月19日付け記事によると、「HCCCのセンサーと通信機能は、船舶や陸上の物流状況を把握し、オペレーターが船舶の輸送や受領を指示することを可能にする。ハーバーマスターは、海上での現在および将来の作戦状況を把握し、その情報を活用して必要に応じて司令官に提供することができる」。
おそらくはTMSS-Mテントの中に、指揮統制センターHCCCが置かれるのではないだろうか。
また、米陸軍HPの同記事によると、装甲が強化されたハンヴィーに硬質壁シェルター(Rigid Wall Shelter (RWS))が搭載されていて、そのRWSに、陸軍の最高レベルで任務指揮を執り、統合システムとのインターフェースを提供する、グローバル指揮統制システム(GCCS)が入っているのだともいう。
同記事はRWSがHCCCの中核を成すというようなことを書いている。今回の訓練でそのRWSがどこにあったのかは把握できなかったが、今回は、こうした装置や機能を使った兵站の指揮統制訓練が行われたのだろう。
また今回は、図上での指揮統制訓練が行われただけではなく、2隻の揚陸艇、パロ・アルト(PALO ALTO LCU 2032)とパウルス・フック(PAULUS HOOK LCU 2033)を使った訓練も行われた。
パロ・アルトとパウルス・フックの2隻は、既に3月6日に、横浜ノースドックの普段係留されている場所から「みなとみらい地区」側のバースに移動して訓練のために待機していた。
訓練が開始されると、まず3月10日にパロ・アルトが「みなとみらい地区」側のバースから揚陸艇が普段係留されている側にある「すべり」まで移動して、軍用車両2台を積み込む作業を行い、その後再び「みなとみらい地区」側のバースに移動した。
3月11日には、パロ・アルトはまたもや「すべり」まで移動して、2台の軍用車両の陸揚げを行った。他方でパウルス・フックは、ノースドックと「みなとみらい地区」の間の海上で行ったり来たりの航行訓練を行った。
その後、2隻はともに、「みなとみらい地区」とは反対側の、普段揚陸艇が係留されているバースに移動して着岸した。揚陸艇を使った訓練はそれで終わったようだ。
HCCCから海上の揚陸艇に指示を与えて動かす訓練だったのだろう。
米陸軍HP2011年9月19日付け記事に引用されている指揮所システム統合(CPS & I)部門のプロダクトマネージャーを務める中佐の発言によると、ハーバーマスター分遣隊は「海岸で2番目に活動するグループ」なのだという。つまり、ハーバーマスター分遣隊は、海兵隊や陸軍部隊が確保した海岸に入って兵站活動の指揮統制を行う部隊だ。
同記事には、今回の訓練で展開された装置が導入されたことによって、戦地の状況の変化や輸送船や積み荷などの位置を把握し、陸軍、海軍、海上司令部などと協力しながら一貫性をもって指示を出すことができるようになる、という趣旨のことが書かれている。
つまり、今回横浜ノースドックで行われた米陸軍の訓練は、「第5輸送中隊」には、揚陸艇を運用する部隊だけではなく、戦地近くの海岸で兵站活動の指揮統制を行う部隊(ハーバーマスター分遣隊)も含まれていることを示すものだった、といえるのではないか。
(RIMPEACE編集部 星野 潔)

昨年7月前半に横浜ノースドックに搬入された、第545ハーバーマスター分遣隊のものとみられる車両などの装備(25.7.8 星野 撮影)

「ハーバーマスターTSP」が2セットあることが分かる(25.12.31 星野 撮影)
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