横浜NDの揚陸艇部隊、新型揚陸艇での高機動ロケット砲の島嶼展開・射撃演習に参加


2月25日、陸軍の最新型揚陸艇MSV-Lからハワイのベローズ海兵隊訓練場に自走で上陸した高機動ロケット砲ハイマース。
DVIDS記事によるとMSV-Lを運航していたのは、横浜ノースドックの揚陸艇部隊である第5輸送中隊だ。
米軍画像サイトDVIDS2026年2月25日付け記事、「25th Infantry Division Executes A Maritime HIRAIN In Support of Lightning Surge 2 [Image 4 of 4]」より引用。
https://www.dvidshub.net/image/9539257/25th-infantry-division-executes-maritime-hirain-support-lightning-surge-2


2月25日、第5輸送中隊の運航するMSV-Lのバウランプから海岸に上陸するハイマース。
MSV-Lの番号は「1」だ。試作艇として建造された1番艦だ。完成しているのはまだこの1隻だけだ。
米軍画像サイトDVIDS2月25日付け記事「In the Pacific, 25th ID Soldiers lead Army's push for faster, data driven capability」より引用。
https://www.dvidshub.net/image/9541678/pacific-25th-id-soldiers-lead-armys-push-faster-data-driven-capability


2月25日、上陸後に射撃態勢に入るハイマース。
米軍画像サイトDVIDS2月25日付け記事「25th Infantry Division Executes A Maritime HIRAIN In Support of Lightning Surge 2 [Image 2 of 4]」より引用。
https://www.dvidshub.net/image/9539252/25th-infantry-division-executes-maritime-hirain-support-lightning-surge-2


2月24日、パールハーバー・ヒッカム統合基地でMSV-Lに自走で乗り込むハイマース。この時MSV-に乗り込んだハイマースは2門だったようだ。
米軍画像サイトDVIDS2月24日付け記事「25th Infantry Division Executes A Maritime HIRAIN In Support of Lightning Surge 2 [Image 3 of 7]」より引用。
https://www.dvidshub.net/image/9539199/25th-infantry-division-executes-maritime-hirain-support-lightning-surge-2

今年2月後半、横浜ノースドックに配置されている陸軍揚陸艇部隊の第5輸送中隊が、新型揚陸艇で高機動ロケット砲ハイマースを海岸に上陸させて長距離精密射撃を行う演習に参加した。
場所はハワイだ。
演習の名前は「ライトニングサージ2」(Lightning Surge 2)だ。
これは陸軍第25歩兵師団を中心に行われた演習だが、米戦争省(国防総省)HPの3月2日付け記事「第25歩兵師団、データ駆動型能力の迅速化を推進」(25th Infantry Division Leads Push for Faster, Data-Driven Capabilities)によると、演習の目的は「陸軍の次世代指揮統制(NGC2:Next-generation command and control)のプロトタイプの評価」だった。

戦争省の記事や米軍画像サイトDVIDSの記事などによると、この演習は具体的には「群島環境」を想定した地点に揚陸艇を使って高機動ロケット砲ハイマースを迅速に上陸させて射撃位置につかせ、そのハイマースに通信装置を使って長距離精密射撃のためのデータを即座に提供し、それをもとに模擬射撃を行い、射撃終了後には迅速に射撃位置を「再配置」する演習だった。
言葉を変えるならば、ハイマースを揚陸艇で島に上陸させて長距離射撃を行い、「敵」が反撃してくる前に急いで再び揚陸艇に載せて別の場所に移動する演習だった。

つまりこれは、琉球弧からフィリピンに連なる島々を戦場にして対中国戦争を行うことを想定する海兵隊の「機動展開前進基地作戦」(EABO)と、同じコンセプトの戦争構想に基づく演習だ。

こうした作戦を構想する人びとにとってはハイマースなどの兵器と米軍兵士が「敵」からの反撃を受ける前に逃げることが大切なのであって、兵器と兵士がさっさと別の場所に移動した後にその島が反撃を受けて住民やその生活基盤に被害が生じてもそれは「知ったことではない」し、むしろ敵意を煽り自分たちの攻撃を正当化する宣伝材料として利用できるという魂胆なのだろう。

少し蛇足になるが、DVIDSの記事などによると、「群島環境においてハイマースを揚陸艇に載せて迅速に射撃位置へ展開させて攻撃を行い、再び揚陸艇に搭載して射撃位置を再配置する」作戦を、「ハイマース・ロレイン」作戦(Operation HIAMRS LORAIN)と呼ぶようだ。

DVIDSの記事によると、2月25日の訓練でハイマースの海上輸送を担当した揚陸艇部隊は、陸軍第7輸送旅団第765輸送ターミナル大隊の第5輸送中隊だった。これはまさに、横浜ノースドックに2023年に新編され配置されている揚陸艇部隊だ。
ちなみに第5輸送中隊が属している第765輸送ターミナル大隊は、キャンプ座閧ノ本部を置く部隊だ。

横浜ノースドックからハワイに出張って演習に参加した第5輸送中隊が今回使用した揚陸艇は、「機動支援艇」(MSV-L: Maneuver Support Vessel (Light))と呼ばれる、開発されたばかりの最新型のものだ。

MSV-Lは、老朽化した機動揚陸艇(LCM-8: Landing Craft Mechanized-8)に代わるものとして開発された(米陸軍HP、2022年10月12日付け記事「New vessel class enters Army watercraft fleet with prototype launch」を参照)。ただし、完成しているのは今のところまだプロトタイプ(試作艇)として建造された1隻だけだ。
他方、LCM-8は横浜ノースドックにも多数配置されていたが、既に2024年までにすべて撤去されている。

MSV-Lの全長は、35.7メートル。最高速度は30ノット。
米軍の主力戦車M1A2ならば1両、ストライカー装甲車ならば2両、ハンヴィーの後継の汎用軍用車両JLTVならば4両を運ぶことができるという。

現在、横浜ノースドックに備蓄されている揚陸艇の「主力」は、1980年代後半に発注されたラニーミード級揚陸艇だ。
ラニーミード級揚陸艇と比べるとMSV-Lは小さく、載せて運べる車両や資材の数量も少ないが、何といってもLCUよりもかなり速度が速く、機動性の高い艦船だ。老朽化もしていない。

今回の演習で米陸軍とりわけ陸軍輸送科には、新型の機動支援艦MSV-Lこそが対中国戦争におけるEABOに「使える」輸送手段なのだとアピールする狙いもあったのではないか。陸軍は昨年10月にも、無人地対艦ミサイル車両「NMESIS(ネメシス)」など海兵隊の兵器や車両をMSV-Lで運ぶ訓練も行っている。これもMSV-Lが「使える」というアピールではないか。

また、今回の演習で横浜ノースドック所属の第5輸送中隊にMSV-Lを運航させたのは、この横浜の揚陸艇部隊に今後MSV-Lを配置して、琉球弧での「ハイマース・ロレイン」などの対中攻撃の際の重要な輸送手段として使う、という構想が少なくとも陸軍内部にはあることを示しているのではないか。

ただし、そうしたアピールや構想を打ち出すことが、米軍幹部や米国政府首脳が東アジアにおいて(自衛隊員などではなく)わざわざ米兵を最前線に送って戦わせることを本気で考えていることを意味しているかというと、それは別の話だ。

とはいえ、こうした構想をアピールして演習をすること自体が、緊張を高める要因になることは確かだろう。「軍産学複合体」にとっては、軍事的緊張が「高まっている」ことにすればメシの種と組織を維持拡大できてカネが稼げるというのが本音なのだろうが。

なお、今回の演習の鍵となる輸送手段として使われた新型揚陸艇MSV-Lについては、近年、その建造計画に大きな変更が生じているようだ。建造される数は減らされる見込みだ。それについては、今後掲載する別の記事で紹介する。

(RIMPEACE編集部 星野 潔)


2023年9月27日、ラニーミード級揚陸艇から民間のクレーン付き台船を使って横浜ノースドックに陸揚げされたハイマース(23.9.27 星野 撮影)


2025年12月10日、横浜ノースドックの埠頭上から自走で自動車運搬船に乗り込むハイマース(25.12.10 星野 撮影)


2024年2月29日、貨物船に積み込まれる機動揚陸艇(LCM-8)。横浜ノースドックに配備されていたLCM-8はこの年の4月までに全て撤去された(24.2.29 星野 撮影)


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