音響測定艦エイブル、三菱横浜本牧工場に10日間入る


6月9日から19日の朝にかけて、三菱重工横浜製作所本牧工場にドック入りした音響測定艦エイブル(26.6.13 読者 撮影)


6月9日、三菱本牧工場に入ったエイブル。赤丸のところにマスト、青丸のところにレドームが見える。マストには星条旗が掲げられている。
エイブルの向こうの灰色の艦船は、海上自衛隊の護衛艦てるづき(26.6.9 星野 撮影)


三菱重工本牧工場に入って整備工事を行っている護衛艦てるづき(26.6.13 読者 撮影)



三菱本牧工場に行く前日、6月8日のエイブル(上)と三菱本牧工場から帰ってきた6月19日のエイブル(下)(26.6.8/26.6.19 星野 撮影)


昨年7月後半に、ジャパンマリンユナイテッド因島工場に向けて横浜を出港する前日のエイブル。船体がだいぶ汚れている(25.7.28 星野 撮影)


昨年10月17日、因島から戻ってきたエイブル(25.10.17 星野 撮影)


今年1月4日、航海から戻ってきたエイブル(26.1.4 星野 撮影)


2月1日から3日にかけての短期外洋航海から戻ってきたエイブル。この後、6月9日まで横浜ノースドックに居座り続けることになる(26.2.3 星野 撮影)


2月3日は、4隻の米海軍音響測定艦が横浜ノースドックに並んだ。
左から音響測定艦エイブル、兵站支援艦サマーヴェル、音響測定艦インペッカブル、同ロイヤル、タンカーのポハン・パイオニア、音響測定艦ヴィクトリアス(26.2.3 星野 撮影)


6月8日、三菱本牧工場に行く前日のエイブル(26.6.8 星野 撮影)

音響測定艦エイブル(ABLE T-AGOS 20)が、6月9日の朝から6月19日の朝にかけて三菱重工横浜製作所本牧工場に入り、ドックに入渠した。
米海軍音響測定艦が三菱重工本牧工場に入ったのは初めてのこととみられる。

エイブルは、横浜ノースドックを実質的に母港としている米海軍が現在保有する全5隻の音響測定艦のうちの1隻だ。
この艦の昨年後半からの動きを振り返っておこう。

昨年7月14日から29日まで横浜ノースドックに滞在していたエイブルは、8月1日から10月14日にかけて、瀬戸内海の因島にある、ジャパンマリンユナイテッド因島工場に入っていた。

10月17日の朝に横浜ノースドックに「戻って」きたあと、10月25日から27日の朝にかけて短期間外洋に出ていた。

その後、11月13日に横浜を出港して11月21日には沖縄のホワイトビーチに入港している。

ホワイトビーチを昨年11月25日に出港したあと、今年1月4日の朝にエイブルは横浜ノースドックに入港した。
11月25日から1月4日までの間、エイブルが南シナ海などで中国の原潜を監視する任務に就いていたかどうかは不明だ。
本格的な任務航海に就いていたとみるには、その期間が少し短いように思われる。
音響測定艦が任務地であろう南シナ海から、ホワイトビーチに立ち寄らずに1月4日に横浜に戻ってくるには、そのだいぶ前に任務を終えていなければならないはずだからだ。この時の場合だと、1ヶ月よりも短い期間しか任務地にいることはできなかったはずだ。
もしかしたら、一旦任務に就いたものの、船体に何らかの不調が生じて途中で戻ってきたのかもしれない。あるいは、この時は、中国の原潜の直接的な監視ではない、別の任務だったのだろうか。

1月4日に横浜ノースドックに入港したあとは、2月1日から同月3日にかけての短期間外洋に航海に出た以外は、三菱重工本牧工場に向かう6月9日の朝までずっと停泊していた。
やはり船体に何らかの不調があったのではないか。

三菱重工横浜製作所本牧工場でのドック入りはひとまず約10日間で終わったが、今後どうするのかは不明だ。
必要な整備作業をすべて終えて任務航海に復帰できるようになったのか、それとも、三菱本牧でのドック入りはあくまでも「応急処置」だったのか。外部の者には今のところ何も分からない。

ところで、既に述べたように、三菱重工横浜製作所本牧工場に音響測定艦が入って整備を行ったのはおそらく初めてのことだ。
近年、三菱重工本牧工場には、米軍の各種大型艦船が入るようになっていたが、今回のエイブルの入渠も、そうした横浜の民間工場の「米軍艦船の整備拠点化」の一環とみることができよう。

横浜のすぐ隣の横須賀基地には、米海軍の艦船修理廠(SRF:U. S. Naval Ship Repair Facility)があるにもかかわらず横浜の三菱重工の工場に入ったということは、横須賀の米海軍直属の工場だけでは、東アジア周辺の海域に配置している艦船の修理をまかないきれないことを示しているのではないか。

また、近年は、米海軍の音響測定艦の整備工事を瀬戸内海の因島にあるジャパンマリンユナイテッド因島工場で行うことが多くなっているが、今後は因島だけではなく三菱重工横浜本牧工場でも米軍の音響測定艦の整備工事をおこなうということなのだろうか。
それとも今回は例外的な緊急の修理での使用ということなのだろうか。

ジャパンマリンユナイテッド因島工場には現在、音響測定艦インペッカブル(IMPECCABLE T-AGOS 23)が今年3月31日から入っている。

2025年3月11日に、同じジャパンマリンユナイテッド因島工場からタグボートに曳かれて横浜ノースドックに戻ってきたまま、動くことなく横浜ノースドックに係留され続けていたインペッカブルは、今年3月27日に横浜を出て再び因島に向かったのだが、その際には自力で航行せず、民間のタグボート「清和丸」に引っ張られていった。


今年3月26日の音響測定艦インペッカブル。この翌日、因島に向けて横浜を発った(26.3.26 星野 撮影)


3月になってから、インペッカブルの艦上では、ドックに向かう準備とみられる作業が行われていた。写真は3月10日、煙突から大量の煙を出したところ(26.3.10 星野 撮影)

2001年に就役したインペッカブルは、それでも現在就役している米海軍音響測定艦全5隻の中では一番新しい艦だ。その艦でさえこの有様だ。

今回三菱重工本牧工場に入ったエイブルは、1992年の就役だ。エイブルを含むヴィクトリアス級音響測定艦の4隻は、いずれも90年代前半の就役であり、海軍の艦船としてはだいぶ「古い」部類の船になってきた。

そもそも音響測定艦とは、監視曳航アレイセンサーを使って、ライバル国の潜水艦を探知追跡し、その発する音のデータを収集する目的に特化した特殊任務船だ。そうしたデータを収集するのはもちろん、対潜戦に使用するためだ。任務の特性上、普段から南シナ海などのまさに「最前線」に投入されている。

米海軍は現在就役している全5隻の音響測定艦に代わる、7隻の新型音響測定艦を建造する計画を持っているが、米会計検査院のレポートによればその計画はだいぶ遅れている(新型音響測定艦の計画については別の記事で紹介する予定)。

古くなって故障をしがちになった艦も出てきたとは言え、米軍は当面、現在の音響測定艦を使い続けるつもりなのだろう。
さらに海上自衛隊の4隻の音響測定艦も、実質的には米軍の配下の艦として使っていくのだろう。

なお、以下は蛇足であるが、米海軍のかつての音響測定艦で、海軍音響測定艦を退いた後でも民間の調査船として使用されている船もある。

そうした船の1つに、現在はバハマ船籍の民間の調査船になったボールド・エクスプローラー(BOLD EXPLORER)がある。
ボールド・エクスプローラーはもともと、米海軍のストルワート級音響測定艦ボールド(BOLD T-AGOS 12)だった(就役当初はヴィゴロス(VIGOROUS T-AGOS 12)という名前だった)。ストルワート級は、かつての、双胴船ではなかったタイプの音響測定艦だ。
現在は、1974年にイギリスで設立された国際的な海洋地質調査会社のEGSサーベイ社がこのボールド・エクスプローラーを調査船として運航している(同社は、同じストルワート級音響測定艦だったテネイシャス(TENACIOUS T-AGOS 17)も、ゲオ・レゾルーション(GEO RESOLUTION)という名前の調査船として運航している)。

この、元米海軍音響測定艦の調査船ボールド・エクスプローラーは、日本周辺に現れることもある。

昨年、2025年の10月29日から11月10日にかけては横浜港の大黒ふ頭に入港していた。この時は、那覇を10月21日に出港して横浜にやって来たのだった。
横浜を出港したあとは、米国に向かった。

そして今年6月もまた、日本列島周辺で活動をしているようだ。

今回は、5月4日に米本土のサンディエゴを出港して、6月10日に苫小牧に入港した。
6月11日に同港を出港して日本列島の太平洋側を航行しているものとみられる。

(RIMPEACE編集部 星野 潔)


昨年10月29日から11月10日まで横浜港に滞在していた調査船ボールド・エクスプローラー。以前は米海軍ストルワート級音響測定艦ボールドだった船だ(25.11.4 星野 撮影)


ボールド・エクスプローラーが停泊していたのは、大黒ふ頭のP-1バースだ(25.11.7 星野 撮影)


2026-6-21|HOME|