対イラン軍事作戦の拠点ディエゴガルシアへの補給基地にされた横浜ND(1)

横浜ノースドックで、軍事作戦支援のための補給物資を大量に積み込んだ貨物船レディ・ヴィヴィアナ(26.5.7 星野 撮影)
この5月から6月にかけて、横浜ノースドックから2隻の民間貨物船が相次いでインド洋の米軍の最重要拠点であるディエゴガルシア島に向かった。
パナマ船籍の貨物船レディ・ヴィヴィアナ(LADY VIVIANA)と、リベリア船籍の貨物船パシフィック・インテグリティ(PACIFIC INTEGRITY)だ。
ディエゴガルシア島は、インド洋に浮かぶイギリスの植民地でありそこに置かれた米軍基地は、米国の対中東軍事戦略の死活的な重要拠点だ。
レディ・ヴィヴィアナは5月9日に横浜を出港して、AIS(自動船舶識別装置)の情報によれば5月29日にディエゴガルシアに到着した。
パシフィック・インテグリティは5月29日に横浜を出港して、6月16日にディエゴガルシアに到着した。
2隻はいずれも横浜ノースドックで多数のコンテナなど大量の物資を積み込んでいた。
米軍画像サイトDVIDSは、横浜からディエゴガルシアに向かった1隻目の貨物船レディ・ヴィヴィアナのノースドックでの積み込み作業について、その船名(レディ・ヴィヴィアナ)と行き先(ディエゴガルシア)を隠し、作業を行なった時期も曖昧にした上で、その作業の写真と以下の文を含む記事を5月13日になってから掲載している。
「Soldiers assigned to the 836th Transportation Battalion recently loaded vital Class I supplies ? including frozen provisions, dry goods and commercial vehicles ? onto a vessel at Yokohama North Dock in support of military operations.」
(「第836輸送大隊に所属する兵士たちは最近、軍事作戦を支援するため、冷凍食料品、乾燥食品、商用車両を含む極めて重要なクラス1物資を横浜ノースドックで船に積み込んだ。」)
この記事のタイトルは、「836th Transportation Battalion Soldiers conduct critical resupply operation at Yokohama North Dock」(「第836輸送大隊の兵士たち、横浜ノースドックで重要な補給任務を実施」)だ。
DVIDSには、さらに同じタイトルの1分56秒の動画も掲載されている。しかし、この動画でも船名や行き先は一切触れられていない。
ただし、同じ動画を紹介している米海軍軍事海上輸送司令部(Military Sealift Command)の公式X(旧ツイッター)の文章には、レディ・ヴィヴィアナにクラス1物資を積み込んだことが明記されている。
そもそも第836輸送大隊とは、横浜ノースドックに以前から常駐している部隊だ。陸軍配備流通コマンドに属する5つの旅団の1つである第599輸送旅団の傘下にある大隊だが、「沖縄を除く日本への出入国に関するすべての港湾業務と戦略的移動を担当」しているとされる(army.mil HP 2017年5月25日記事「836th Trans. Bn. works cargo and more from Yokohama」より引用)。
また、「Class I supplies」(クラス1物資)とは、米陸軍による補給品の10分類の1つめのカテゴリーで、食料や水など生存に必要な最重要品だ。
さらに、上記の記事に「in support of military operations」(「軍事作戦を支援するため」)という言葉が書き込まれていることは、要注目だ。
インド洋に浮かぶディエゴガルシア島の米軍基地は、今回のイランへの軍事攻撃の現地重要拠点として使われたはずだ。ゆえにイランからの反撃のミサイル攻撃の対象にもなった。
つまり、横浜ノースドックで第836輸送大隊がレディ・ヴィヴィアナに積み込んだ「軍事作戦支援」の物資とは、兵器そのものでは無いにしてもイラン攻撃作戦を支援するための補給物資だったわけだ。

米軍画像サイトDVIDSに5月13日になってから掲載された、「第836輸送大隊の兵士たち、横浜ノースドックで重要な補給任務を実施」というタイトルの写真と記事。
この記事には補給物資を積み込んだ貨物船の名前が出てこないが、写真からレディ・ヴィヴィアナであることが分かる。
米軍画像サイト記事「836th Transportation Battalion Soldiers conduct critical resupply operation at Yokohama North Dock」より引用
https://www.dvidshub.net/image/9682548/836th-transportation-battalion-soldiers-conduct-critical-resupply-operation-yokohama-north-dock


DVIDSに掲載された動画から、レディ・ヴィヴィアナの船倉に積み込まれた日産の商用車。米国政府保有車のナンバープレートが付けられている。
米軍画像サイトDVIDS動画「836th Transportation Battalion Soldiers conduct critical resupply operation at Yokohama North Dock」より引用
https://www.dvidshub.net/video/1006752/836th-transportation-battalion-soldiers-conduct-critical-resupply-operation-yokohama-north-dock

DVIDSに掲載された動画から、レディ・ヴィヴィアナへのドライコンテナの積み込み作業の様子

DVIDSに掲載された動画から、レディ・ヴィヴィアナに積み込まれる補給物資。
イラン攻撃に参加している駆逐艦ドナルド・クックと強襲揚陸艦トリポリに宛てたもののようだ

DVIDSに掲載された動画から、レディ・ヴィヴィアナに積み込まれる補給物資。
右の青い箱には扇風機が入っているようだ


DVIDSに掲載された動画から、ノースドックのふ頭上に続々と運び込まれ、レディ・ヴィヴィアナに積み込まれる補給物資

DVIDSに掲載された動画から、第836輸送大隊による補給物資の積み込み作業には、地元の民間企業も参加していることが分かる

DVIDSに掲載された動画から、レディ・ヴィヴィアナに積み込むために並べられた、リーファーコンテナとみられるコンテナ

米海軍軍事海上輸送司令部(MSC)の公式X(旧ツイッター)の6月5日付け投稿からの引用。
DVIDSの動画が、第836輸送大隊による横浜ノースドックでのレディ・ヴィヴィアナへの積み込み作業のものであることを明言している
https://x.com/MSCSealift/status/2062558203817112006
他方、貨物船パシフィック・インテグリティのディエゴガルシア行きについては、その目的を明示したHP記事などを見つけることは今のところできていないが、レディ・ヴィヴィアナと同様に大量の物資を横浜で積んで行っており、やはり軍事作戦支援の補給が目的だったとみることが妥当だろう。
だが、日米安保条約第6条は、米軍が日本の基地を使うことが許される使用目的を、「日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため」の2つに限定している。
ところが、ディエゴガルシア島は日本国ではないし、極東でもない。つまり、米軍の今回の行為は安保条約違反だ。
また、日米安保条約第6条の実施に関する交換公文(岸ハーター交換公文)では、「日本国から行なわれる戦闘作戦行動(中略)のための基地としての日本国内の施設及び区域の使用は、日本国政府との事前の協議の主題とする」と定めている。
ディエゴガルシアを拠点としてアラビア海やインド洋などで行われる軍事作戦の支援のために横浜ノースドックを使用する場合には、当然、日本政府との事前協議が必要不可欠だが、それが行われた形跡もない。
つまり、「法の支配」に著しく反する行為を米軍は横浜ノースドックを舞台として行ったということだ。そもそもイラン攻撃の軍事作戦そのものが、明らかに国際法に違反するものなのだが。
今回の米軍の違法な軍事作戦の拠点として使われたディエゴガルシア島は、報道によればイランからの反撃のミサイル攻撃の対象とされた。そのディエゴガルシア基地への重要物資の補給拠点となった横浜港も、場合によっては反撃の攻撃対象とされる可能性もあり得るということだろう。
以下、今回の記事ではレディ・ヴィヴィアナの横浜ノースドック入港と、補給物資の積み込み作業の経過を振り返っておく。
レディ・ヴィヴィアナは4月に横浜にやって来る前、3月15日に大阪港に入港し、18日に出港している。これはおそらく民間船としての業務だったのだろう。
その後4月2日に横須賀基地の沖の錨地に姿を現し、4月17日まで米軍の錨地で滞在を続けた。
4月17日の昼頃にレディ・ヴィヴィアナは横浜に移動してノースドックに入港し、ふ頭先端部のHバースに接岸した。
それよりも前の4月13日からノースドックのふ頭先端部近くには、白いワンボックスカーやトラックといった商用車が10数台並べられていたが、後になってこれらの商用車はレディ・ヴィヴィアナに積み込まれた物資の一部だったことが分かった。
さらに、4月20日頃からは、ノースドックの揚陸艇の係留場所側にある「すべり」近くの広場に、灰色のリーファーコンテナ(冷凍・冷蔵コンテナ)とみられるコンテナが多数どこかから運び込まれ、並べられるようになった。
海上コンテナのリース会社であるシーキューブ社のものとみられるそれらのリーファーコンテナは、ノースドックに運び込まれた後もクレーンやトレーラーを使って移動や並べ替えが繰り返されていたが、5月7日から8日頃にかけてレディ・ヴィヴィアナに積み込まれた。
これらのリーファーコンテナには、まさにクラス1物資の生鮮食料品や飲料品などが満載されていたのだろう。
さらに、それらのリーファーコンテナとは別に、4月27日頃には、「みなとみらい地区」側からは建物の陰となって見えづらい、ふ頭先端部近くの倉庫の向こう側に、えんじ色のドライコンテナがどこからか多数運び込まれ、並べられた。
これらのドライコンテナもシーキューブ社のもののようだったが、4月29日からオーシャン・ヴィヴィアンナの船倉に積み込まれた。
こうして、インド洋で行われる軍事作戦を支援するための死活的に重要なクラス1物資などを積み込んだ貨物船レディ・ヴィヴィアナは、5月9日の夕方に横浜ノースドックを出港し、遙かインド洋のディエゴガルシア島へと向かった。
横浜を発ったレディ・ヴィヴィアナは5月20日にシンガポールに達し、5月29日にディエゴガルシアに到着した。同島には6月1日まで滞在している。
なお、レディ・ヴィヴィアナはその後、現地時間の6月10日にシンガポールに入港した後、同12日に出港して、19日に再びディエゴガルシアに到着している。
つまり、おそらく6月はシンガポールで補給物資を積んで、再びディエゴガルシアに運んだということのようだ。
6月19日にディエゴガルシアに入港したレディ・ヴィヴィアナは、6月24日に同島を発ったようだ。
以上をまとめると、パナマ船籍の民間貨物船レディ・ヴィヴィアナは、ディエゴガルシアへの死活的に重要な補給品の輸送業務を担ったということであり、横浜ノースドックが日米安保条約に違反して、米軍の対中東軍事作戦の補給拠点として使われたということだ。
横浜からディエゴガルシアに向かったもう1隻の民間貨物船、パシフィック・インテグリティの動きについては、稿を改めて報告する。
(RIMPEACE編集部 星野 潔)

4月2日、横須賀基地沖の錨地に現れた貨物船レディ・ヴィヴィアナ(巨大クレーンを2つ搭載した貨物船)(26.4.2 星野 撮影)

レディ・ヴィヴィアナは4月17日の朝まで横須賀沖の錨地で待機していた(26.4.3 星野 撮影)

4月13日、横浜ノースドックのふ頭先端部近くに並べられた10数台の白い商用車。これらの車はレディ・ヴィヴィアナに積み込まれることになる(26.4.13 星野 撮影)


4月17日、横浜ノースドックに入港しHバースに接岸した貨物船レディ・ヴィヴィアナ(26.4.17 星野 撮影)

4月20日、ノースドックの「すべり」近くの野積み場にリーファーコンテナとみられるコンテナが運び込まれ、並べられはじめた。
なお、手前に見える軍用トラックは、陸上自衛隊のホークミサイル部隊のもの(26.4.20 星野 撮影)

野積み場に並べられたリーファーコンテナ。これらもレディ・ヴィヴィアナに積み込まれることになる(26.4.21 星野 撮影)



リーファーコンテナは野積み場に並べられた後も、動かしたり並べかえたりといろいろな作業が続けられていた(26.4.25 星野 撮影)

これは4月26日の作業(26.4.26 星野 撮影)

4月27日には、倉庫の建物の向こう側にえんじ色のドライコンテナが大量に運び込まれた。並べられているコンテナの天井部分だけが何とか確認できる(26.4.27 星野 撮影)

倉庫の建物のあいだから見えた、えんじ色のドライコンテナ(26.4.29 星野 撮影)

一方、白い商用車の群れは4月25日にレディ・ヴィヴィアナのすぐ横の後方に移動していた。積み込み作業の便のためだろう(26.4.25 星野 撮影)



4月29日から、レディ・ヴィヴィアナへのコンテナの積み込み作業が始まった(26.4.29 星野 撮影)

えんじ色のドライコンテナの積み込みは、途中、作業休業日も挟みながら5月5日まで続いた(26.5.5 星野 撮影)

ドライコンテナの積み込みが終わると、今度はリーファーコンテナの積み込みが行われた(26.5.7 星野 撮影)

積み込み作業にあたる、兵士たちと民間作業員(26.5.7 星野 撮影)

積み込みは、5月8日に終わったようだ(26.5.8 星野 撮影)

しかし、5月8日になっても、コンテナの間に入って作業を行う作業員や兵士の姿が見えた(26.5.8 星野 撮影)

5月9日の夕方、横浜ノースドックを出港して東京湾を南下し、ディエゴガルシアに向かうレディ・ヴィヴィアナ(オレンジ色のクレーンを搭載した船)(26.5.9 星野 撮影)
2026-6-28|HOME|