横浜NDに自衛隊輸送艦「ようこう」が初入港(1)最新の「兵站支援艦」


9月11日、横浜ノースドックに初入港した自衛隊海上輸送群の輸送艦「ようこう」(26.9.11 星野 撮影)


「ようこう」は全長が約120メートルとされる「兵站支援艦」だ(26.9.11 星野 撮影)


「ようこう型」の「中型級船舶」建造の際に防衛省がモデルにしたと考えられる、「フランク・S・ベッソン・ジュニア大将級兵站支援艦」の「ウィリアム・B・バンカー中将」。
米陸軍が保有運用する最大の艦種だが、「ようこう」よりも40メートル近く小さい。また、前後にランプウェイが付いているのも「ようこう」とは違う点だ。
そもそも横浜ノースドックに米陸軍揚陸艇部隊が新編されるまで、この基地に兵站支援艦は配備されていなかった。
米軍は揚陸艇部隊の新編の際、新たな艦船を配備しないと約束している。この船はここに配備されていてはならない船なのだ(26.9.11 星野 撮影)


「ようこう」(写真のもっとも右の船)と「ウィリアム・B・バンカー中将」(写真のもっとも左の船)(26.9.11 星野 撮影)


「ようこう」の艦首部と艦尾部にはランプウェイは設置されておらず、艦の右舷前方と右舷後方に設置されている。
横浜ノースドックで右舷後方のランプウェイを使って米陸軍車両の積み込みを行ったが、それについては次回の記事で詳述する(26.9.11 星野 撮影)


「ようこう」の右舷前方のランプウェイ。
なお、「ようこう」の手前に停泊している米陸軍揚陸艇(LCU)キングスマウンテンの甲板には高機動ロケット砲ハイマースなどが積まれている。
こちらについても、別の記事で詳述する(26.9.11 読者 撮影)


「ようこう」の右舷後方のランプウェイ。この時点では、まだ展開していない(26.9.11 読者 撮影)

9月11日の朝、自衛隊の輸送艦「ようこう」が横浜ノースドックに初入港し、Hバースに接岸した。

「ようこう」は、今年7月、南海トラフ地震への対処能力向上を掲げた2026年度「自衛隊統合防災演習」に参加するために海上自衛隊横須賀基地に初めて入港していた。しかし、横浜への入港は初めてだ。

この「ようこう」は、琉球弧への部隊や兵器の「迅速かつ確実な」輸送を目的に防衛省が直属の部隊として2025年3月24日に呉基地に鳴り物入りで新編した、「陸・海・空自衛隊の共同の部隊」である海上輸送群に所属している。
この海上輸送群のために、防衛省は2022年度以降、「各種輸送船舶」と称する揚陸艦艇の建造を推し進めてきた。
その「各種輸送船舶」のうち、「中型級船舶」の一番艦として2025年5月に就役したのが「ようこう」だ。

防衛省はその「ようこう」を「輸送艦」に分類しているが、同時に「LSV」という艦種記号を付与している。
「LSV」とは、「Logistics Support Vessel」(兵站支援艦)の頭文字を表す艦種記号だ。
米陸軍が現在保有し運用している最大の艦種であるLSV「フランク・S・ベッソン・ジュニア大将級兵站支援艦」をモデルとしている記号であることは、たとえば防衛省の2025年度概算要求の内容を説明する文書の、「中型級船舶」に添えられた写真などからも明らかだ。
自衛隊の「LSV」には、船首と船尾の部分にランプが設けられていないという「本家」米軍のLSVとの違いもあるが、「ようこう」の方が米軍LSVよりも長さで言えば40メートル近く大きく、それに見合って運搬能力もより高いものと考えられる。

何よりも、1980年代に設計され、多くが1980年代から90年代にかけて配備され老朽化が進んでいる米陸軍LSVと比べれば、自衛隊「兵站支援艦」は新しく建造されたばかりだという大きな違いがある。

9月11日の時点で横浜ノースドックに「しれっと」係留されている米陸軍LSV、「ウィリアム・B・バンカー中将」(LT. GENERAL WILLIAM B. BUNKER LSV 4)は1988年に就役した古参の船だが、昨年夏に演習に出かけた先であるオーストラリアで動力装置の故障を起こし、タグボートに引っ張られて横浜に曳航されて来た。
その前の年にも、別の「フランク・S・ベッソン・ジュニア大将級」LSVが、やはり演習先で故障を起こし、後に韓国の造船所での長期間のドック入りを余儀なくされている。

もちろん米陸軍輸送科としては、軍隊という「官僚制組織」の中での自分たちの組織の存続と拡大を図るために、老朽化した「フランク・S・ベッソン・ジュニア大将級」LSVであっても退役の時までその必要性と有用性を公式には主張し続け演習にも使用しようとし続けるだろうが、実際の戦争の際に、真っ先に使用するかどうかは疑わしいのではないか。派遣された先で故障を起こすような老朽艦では、危なくて仕方がないから。

むしろ「その時」には、自衛隊の新しい「兵站支援艦」に、米軍のLSVが担うとしてきた危険な仕事を担わせようとするのではないか。

今回、まさにその自衛隊の「兵站支援艦」が、米陸軍揚陸艇部隊が置かれていて、米軍が部隊を展開する際のRSOI(受け入れ、駐留作戦準備、前方展開、戦力統合)の拠点として位置づけている横浜ノースドックに、「鴨が葱を背負って」来たかのごとく、やって来たというわけだ。

そして実際に「ようこう」は今回、米軍のそうした「期待」に応えるような活動を、横浜ノースドックを起点に行っている。
その、「ようこう」が横浜ノースドックで行ったことについては、次回の記事で紹介する。

(RIMPEACE編集部 星野 潔)


今年7月、海自横須賀基地に初入港した際の「ようこう」。後方の護衛艦と比べてみるとその「大きさ」が分かる(26.7.26 星野 撮影)


7月は、自衛隊の南海トラフ地震への対応訓練ということで、「ようこう」は横須賀と神津島の間を往復した(26.7.26 星野 撮影)


2026-9-14|HOME|