PCBの運搬船GREEN COVE と米軍の関係



横浜ノースドックに入港するグリーンコーブ(04.4.2)(上)と船橋港に停泊する同船(04.3.31)(下)
MSP契約船は民間と軍の双方に顔を向けている。

在日米軍基地から出たPCB含有廃棄物を積んだ自動車運搬船グリーンコーブが、横浜ノースドックに戻ってくる。4月3日午前3時にノースドックを出たが、15時間ほど走ったところで主機関が故障して自力で動けなくなり、タグで曳航されてくる。横浜入航は9日午後の予定だ。
第3管区海上保安本部の発表によれば、機関故障船で国籍は米国(米軍傭船)とあった。米軍傭船という表現に、グリーンコーブと米軍の関係があらわれている。

MSP(Maritime Security Program)という制度が米国にある。米国運輸省のMSPのページによれば、米軍の海上輸送を支える3つの柱の一つだ。一つは、国防総省の保有する艦隊。いつ何時でも戦域に駆けつける態勢にある。もう一つが、米運輸省海運局が運用する船団。4日から20日の間に軍事物資を積み込める態勢にある。3番目がこのMSPの船団で、普段は船会社のもとで商業活動に従事している。しかし、国防上の要請があれば、軍事物資を運ぶ船に変身する。そういう契約を交わした船だ。
MSP契約船の一覧表を見ると、グリーンコーブが僚船グリーンポイントとともに載っている。

横浜ノースドックへの寄港について言えば、グリーンコーブは2000年9月から2001年11月にかけてが多い。それ以降はグリーンポイントがしょっちゅう寄港している。これらの寄港がMPS契約に基づいたものとは言いがたい。横浜、川崎、名古屋、船橋などで自動車会社の埠頭から自家用車を積みこむことが多い。そしてその合間というかついでに米軍車両の運搬のために、ノースドックや那覇軍港に立ち寄る。メインはあくまでも自動車運送の商業活動なのだ。

それにしても、軍にチャーターされることが多いのはなぜだろうか。推定の域を脱しないが、両者にメリットがあるからだろう。船会社(Central Gulf Lines,Inc)は、小口でも輸送契約が取れる。米軍から見れば、いざという時の米軍車両の輸送をかなりの頻度で訓練出来る。両者の思惑の一致から、グリーンコーブやグリーンポイントが米軍車両の搬出入をおこなっているのだろう。

昨年のイラク侵攻にあたって、これらの船は動員されたのだろうか。グリーンコーブについては、その可能性があり得る。
東京湾の「大型船入航予定情報」というページを、海上保安庁東京湾海上交通センターが公開している。過去2年半の入航船を調べたら、グリーンコーブは平均3ヶ月に一度、グリーンポイントは1ヵ月半に一度の割合で東京湾に入航している。行き先はノースドックの場合もあるが、大半は民間埠頭で、自家用車などの輸送が目的だ。
この期間に、寄港のインターバルが大きく空いているとすれば、その期間MSPの契約で軍事輸送に従っていた可能性がある。グリーンポイントには、そのような動きは無かった。しかし、グリーンコーブは2002年9月中旬の鶴見入港から2003年4月下旬の扇島入港まで、海上保安庁のデータによれば6ヶ月の空白期間がある。
米軍のイラク侵攻開始は日本時間で3月20日だった。攻撃開始以前の数ヵ月の準備段階で、隣接するクウェートなどに軍用車両を運び込む米軍の需要は大きかったと考える。グリーンコーブの「空白期間」は、ちょうどこの時期に重なっている。イラク戦争でグリーンコーブが動員された可能性はあると思う。


軍港に停泊する、もう一隻のMSP船グリーンポイント。(左)那覇軍港(03.11.15)、(右)横浜ノースドック(03.12.19)


民間の埠頭に停泊する、グリーンポイント。(左)横浜大黒埠頭(03.12.19)、(右)船橋港(03.9.25)

(RIMPEACE編集部)

<参照したサイト>
MSPについて(米運輸省)

MSP契約船の一覧表 この一覧表(47隻)の中には、相模補給廠から出されたテントキットを運んだ、APL SINGAPORE や APL KOREAの船名もある。


'2004-4-8|HOME|