横浜ノースドックから始まったオリエント・シールド演習 (3)

米軍装備を運んできた貨物船と6つの陸軍合同演習


9月8日午前、米国船籍の貨物船オーシャン・ジャズが、米陸軍の車両、物資、ヘリを満載してノースドックのHバースに入港した。満載された車両のなかには、ストライカー装甲車なども含まれている。このオーシャン・ジャズこそが、国が横浜市に説明した「米軍の車両とヘリコプターを積んだ米軍側の艦船」ということだろう。
オーシャン・ジャズは今回、タイの軍港、サタヒップ港を8月29日に出港して横浜にやってきた。

米軍の画像、動画等を公開するHP、DVIDSに掲載された記事によれば、オーシャン・ジャズは、米軍のMSC(Military Sealift Command、軍事海上輸送司令部)と契約し、チャーターされている米国船籍の民間コンテナ貨物船だ。

タイのサタヒップ軍港で、8月に行われた米軍とタイ軍の合同軍事演習ハヌマンガーディアンで使用された車両などの装備を回収して船積みし、その足で横浜にやってきたのだ。
 実は、タイのハヌマンガーディアン演習だけではない。7月に行われた米豪合同軍事演習タリスマンセイバーから始まり、米軍とシンガポール軍の合同軍事演習タイガーバーム、 8月に行われた米軍とマレーシア軍の合同軍事演習ケリスストライク、米軍とインドネシア軍の合同軍事演習ガルーダシールド、米軍とタイ軍の合同軍事演習ハヌマンガーディアン、 そして今回、9月の日米合同軍事演習オリエントシールドと、7月から9月にかけてアジア太平洋地域で実施される6つの合同軍事演習を渡り歩き、参加する米陸軍の各種装備の運搬を行ってきたのが、このオーシャン・ジャズだ。ちなみに、今年の米豪合同軍事演習タリスマンセイバーには、陸上自衛隊も参加している。

 実は、これらの一連のアジア太平洋地域各国で行われる合同軍事演習は、米陸軍にとっては、パシフィック・ペースウェイというひとまとまりの作戦ということでもあるのだ。
米太平洋陸軍のパシフィック・ペースウェイは、東アジア太平洋地域で複数の合同軍事演習を、それぞれの内容に合わせて部隊編成などを変化させつつ、連結して実施していくというものだ。日本の国内で行われる日米共同演習オリエントシールドに参加している米軍は、「在日米陸軍」などというものではなく、アジア太平洋地域全域を移動して部隊のユニットを随時入れ替えながら活動する米太平洋陸軍なのだ。

検疫態勢への疑問


 7月から9月まで続く今回のパシフィック・ペースウェイの一連の演習で、米太平洋陸軍は、貨物船オーシャン・ジャズが運ぶ車両やヘリ、物資などを使い回していったのだ。

 それゆえに、オーシャン・ジャズから横浜ノースドックに陸揚げされた米軍の車両には、泥が付いて汚れたままのものが見られた。そうした泥は、アジア太平洋地域の演習を渡り歩くなかで付着したものなのだろう。横浜への陸揚げにあたって、オーシャン・ジャズに満載された、そのような米軍の車両や物資、ヘリなどの検疫は、一体どのように行われたのだろうか。そもそも検疫自体、しっかりと行われたのだろうか。そして自治体は、今回のオーシャン・ジャズからの陸揚げ作業における検疫の状況を、把握しているのだろうか。

(RIMPEACE編集部 星野 潔)


貨物船から陸揚げされたばかりのストライカー。タイヤの側面や装甲板の継ぎ目付近が汚れている(2017.9.8 頼 撮影)


2017-9-13|HOME|