揚陸艦ラシュモア、相模湾でヘリを使った訓練を実施


4月4日から6日にかけて相模湾に滞在し、訓練を行ったドック型揚陸艦ラシュモア。

4月4日から6日にかけて、佐世保を母港とするドック型揚陸艦ラシュモア(RUSHMORE LSD 47)が相模湾に滞在していた。
ラシュモアは、相模湾でヘリコプターを使った訓練を行っていた。
4月5日には、大きな「何か」を吊り下げたヘリコプターがラシュモアの周囲を飛行したり、後部甲板を離着陸したり上空をホバリングしたりしている様子が確認された。



ラシュモアの周囲を、大きな「何か」を吊り下げたヘリが飛んでいる。


キャビンのドアを開けたまま、ラシュモアの後部甲板上を飛ぶヘリ。

4月5日、ラシュモアが相模湾で訓練していたのと同じ時間帯に、海上自衛隊の「空母」「いずも」も、ラシュモアから離れた、同じ相模湾に滞在しているのが視認された。さらにこの4月5日には、海自の護衛艦「くまの」も相模湾に現れたようだ。
とは言え、ラシュモアの訓練と、このような海自艦船の動きが関係しているのか、つまり共同で訓練が行われていたのかどうかについては確認できていない。

また、ラシュモアが浮かんでいた方角から対潜ヘリとみられるヘリが飛んできて、江ノ島の近くを通って厚木基地の方角に向かっていったのだが、逆光のためはっきりとは確認できなかったものの、海上自衛隊のSH60Kヘリのように見える外観をしていたことが気になるところだ。もちろん、このヘリとラシュモアの訓練との関連は全く不明ではあるのだが。


4月5日、ラシュモアからは離れた、相模湾上に浮かんでいた海上自衛隊の「いずも」。



4月5日夕方、ラシュモアが浮かんでいた方角から飛んできた対潜ヘリ。海上自衛隊のSH60kヘリのように見える。
米海軍MH60ヘリであれば機体の前方に突き出しているはずのFLIRターゲットが見当たらず、
胴体下部には円盤状のレーダーアンテナが付いていて、胴体側面には日の丸のような模様がかすかに見える。
江ノ島の近くを通り、厚木基地の方角に飛んでった。

さらに、ラシュモアの近くを海上保安庁の大型巡視船「あきつしま」が航行していて、近くをヘリが飛行しているのが見えたが、さすがにこれは、おそらくはラシュモアとは無関係の動きなのだろう。


ラシュモアの近くを、海上保安庁の大型巡視船「あきつしま」が横切っていった。上空にはヘリが飛んでいる。

4月5日、相模湾を航行する海上保安庁の大型巡視船「あきつしま」。

ところで、揚陸艦ラシュモアは、今回、相模湾で訓練を行っていたと見られるのだが、相模湾は「相模湾潜水艦行動区域」という名前の潜水艦の訓練海域として提供されているのは、その妥当性は別として、確かなことではある。
しかし、「潜水艦行動区域」の名前の通り、潜水艦の訓練のための区域であって、ヘリコプターや潜水艦以外の軍艦の訓練が認められている海域では無い。

4月5日には、ラシュモアの前をボートが横切っていく様子も確認されたが、このボートが、たまたま通りかかった民間のボートなのか、米軍のボートなのかなどは全く不明だ。しかし、相模湾は、ボートも含めた民間の船舶が普通に航行する海域だ。そのような海域で米軍艦船やヘリが勝手に訓練を行うことは、極めて危険な行為であることは間違いない。


ラシュモアの前をボートが横切っていく。たまたま通りかかった民間のボートなのか、米軍の訓練と関係のあるボートなのかなどは全く不明だ。

神奈川県渉外部基地対策課(当時)が1994年3月に発行した『神奈川の米軍基地』には、1984年4月26日に神奈川県が、同区域での訓練内容について外務省に照会した記録が紹介されている(同書,pp.168-169)。
それによれば、「外務省からは「横須賀に寄港する米原潜が、その寄港に際し、相模湾潜水艦行動区域を通過することはあるが、横須賀寄港と関連のないような演習等の行動は行っていない、ということについて は米側から、その旨の説明を受けている。」との回答があった」。

しかし、米軍による相模湾潜水艦行動区域の使用の実態は、この外務省の回答とは大きく異なっている。
まさに揚陸艦ラシュモアは、「横須賀寄港とは関連のないような演習等の行動」を行ったのだ。
にもかかわらず、今回に限らず米軍は平然と、相模湾で許されていない訓練を繰り返している。日本政府もそれを止めようとする気配すら無い。

先月、米軍提供施設区域外である沖縄の名護湾で、厚木基地所属のMH60Sヘリコプターが低空吊り下げ訓練を行ったことが問題となっているが、相模湾でも提供条件に違反した訓練を米軍は行っているのだ。

(RIMPEACE編集部 星野 潔)(2022.4.5 星野 撮影)


2022-4-12|HOME|