横須賀基地、原潜ホノルル出港時に放射能検出


横須賀基地に入港する原潜ホノルル(06年5月22日入港時)


ホノルルを追尾して放射能調査を行う海保の「きぬがさ」。このほか、接岸バースからも海水を採取する。

9月27日、横須賀に寄港していた米海軍の原子力潜水艦ホノルルから微量とはいえ放射性物質が海中にもれ出ていたことが明らかになった。
9月14日にホノルルが横須賀港を出港する際、科学技術庁が採取した海水の調査で確認された核物質は自然界には存在しないコバルト60とコバルト58だ。コバルト60は医療用あるいは非破壊検査用など民間でも使用されているが、検出値がより大きかったコバルト58は、半減期も短く(71日)、民間で使われているものではない。このコバルト58が検出されたということは、原子炉によって生成されたものと考えるのが自然だ。つまり横須賀基地に停泊していた原子力潜水艦から排出されたとしか、考え様がないのだ。

今回の事故の原因はこれから明らかになると思うが、現時点で想定できるのは一次冷却水の環境への漏出によるものだろう。
原潜など核動力艦が日本の港に入港する場合、日米の確認で原子炉を温態状態(臨界状態)で停止することとなっている。このことによって停泊中の原子炉内の冷却水が収縮したり膨張することを防ぎ、出港時にも冷却水が排出されることが無いように措置される。
しかし温態停止状態で停泊するという手順を怠った場合、再度原子炉の出力を上げるときに冷却水が膨張して海中に一部が排出されてしまうことがある。
米海軍の原潜の存在意義がが冷戦終結後「敵の消滅」により急速に失われる中、運用目的が敵の破壊から各種調査活動へと移る中、乗組員の士気の低下が問題になっていた。
2001年4月にハワイ沖で起きた漁業実習船「えひめ丸」と原潜グリーンビルの事件も士気の低下が背景にあった。
原潜の運用が緊張を欠く状態が続く限り、同様の事故は今後も佐世保や沖縄でも起こりうることだ。

もうひとつ今回の事故で明らかになったのは、米海軍の秘密主義により原因解明が遅れたことだ。
米海軍はこれまでも軍事機密として核動力艦に搭載している原子炉のタイプ及び使用している燃料の特性を明らかにしていない。このため核物質を確認してもその漏出源を特定することに時間がかかってしまう。
今回は発表までに14日かかったが、放射能による被害を最小限に防止するためには、原因とその放射能特性を速やかに把握する必要がある。

原子力潜水艦の入港情報が非公開になって5年たつが、「市民団体」という批判者の監視の目が届かない軍事組織に規律の怠慢や弛緩が生じている。
再発防止のためにはまず情報の公開が必要だろう。

(RIMPEACE編集委員・佐世保)


横須賀に入港するほとんどの原潜が停泊する浮き桟橋。手前側が11号バース、向こう側が10号バース


ホノルルが停泊していた10号バース。放射能漏れの現場だ(06.8.5 撮影)


'2006-9-28|HOME|