米原子力艦船上空の飛行規制についての質問主意書と答弁書

原子力潜水艦や原子力空母の上空飛行を制限する件で、衆議院議員阿部知子さんが10月11日に質問主意書を提出した。
これに対する答弁書が10月20日に日本政府から出された。
この答弁書の分析を行う前に、先ず質問主意書と答弁書を掲載する。(原文は縦書き)
答弁というよりも「飛行制限は行いたくない」という意見表明でしかない答弁書を、質問主意書と引き比べてじっくりと読んでほしい。

(RIMPEACE編集部)



米海軍原子力空母の安全性に関する質問主意書

右の質問主意書を提出する

平成十八年 十月 十一日

提出者  阿部 知子

衆議院議長 河野 洋平 殿

 

米海軍原子力空母の安全性に関する質問主意書

神奈川県横須賀市の米海軍横須賀基地を母港としている通常動力の航空母艦キティーホークが老朽化したことにより二〇〇八年に退役、その後継艦として原子力空母を配備したい旨、米国から申し入れがあり、日本政府も受け入れたことが明らかにされている。

しかし、横須賀基地はW14航空路が上空を通っており、羽田空港(東京国際空港)に近く、羽田発の大型民間機が頻繁に上空を通過している。さらに十二号バースから二海里以内に米軍や海自のヘリポートもある。

原子力空母の母港となれば、長期間原子炉を積んだ軍艦が横須賀基地に停泊することになる。原子力空母の安全性については、こうした航空機墜落の要素を考慮し、適切に対応することがきわめて重要であると考え、以下の点について質問する。

一 経済産業省の外郭団体である原子力安全・保安院は、原子力施設へ航空機が墜落することを考慮するかどうかは、同院の「実用発電用原子炉施設への航空機落下確率に対する評価基準」をもとに判断している。原子力空母への航空機落下確率は、この「評価基準」を用いるものと考えるが、いかがか。

二 米海軍横須賀基地の十二号バースに原子力空母が停泊していると仮定して、「実用発電用原子炉施設への航空機落下確率に対する評価基準」で計算した場合の原子力空母への「航空機の落下確率」を明らかにされたい。また、その計算の数値的な根拠を示されたい。

三 米軍原子力艦船(原子力潜水艦、原子力空母)は、運輸省航空局長通達「原子力関係施設上空の飛行規制について」(昭和四十四年七月五日付け空航第二百六十三号)、国土交通省航空局長通達「原子力施設上空の飛行規制について」(国空航第八百八十四号 平成十三年十月十六日)における「原子力関係施設」、「原子力施設」に該当すると考えるが、政府の見解を明らかにされたい。

四 三の「航空局長通達」が該当しないのであれば、原子力艦船上空の飛行についての制限の根拠となる法令を示されたい。

右質問する。




内閣衆質一六五第六六号

  平成十八年十月二十日

内閣総理大臣 安 倍 晋 三

衆議院議長 河 野 洋 平 殿

衆議院議員阿部知子君提出

米海軍原子力空母の安全性に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。

 

  衆議院議員阿部知子君提出米海軍原子力空母の安全性に関する質問に対する答弁書

一について

海上を航行するアメリカ合衆国(以下「合衆国」という。)軍隊の原子力推進型の空母(以下「米原子力空母」という。)に、御指摘の「実用発電用原子炉施設への航空機落下確率の評価基準について(内規)」(平成十四年七月三十日、平成140729原院第4号)の別添「実用発電用原子炉施設への航空機落下確率に対する評価基準」(以下「評価基準」という。)を用い、米原子力空母への航空機落下確率を計算することは適当ではないと考える。

二について

一についてお答えしたとおり、米原子力空母に対して評価基準を用いることは適当でないことから、お尋ねについてお答えすることは困難である。

三について

御指摘の運輸省航空局長通達「原子力関係施設上空の飛行規制について」(昭和四十四年七月五日付け空航第二百六十三号)にいう「原子力関係施設」又は国土交通省航空局長通達「原子力施設上空の飛行規制について」(平成十三年十月十六日付け国空航第八百八十四号)にいう「原子力施設」若しくは「原子力関係施設」については、同通達及び航空法(昭和二十七年法律第二百三十一号)第九十九条に基づいて国が発行する航空情報の一つである航空路誌において施設名が列挙されており、米原子力空母及び合衆国軍隊の原子力推進型の潜水艦(以下「米原子力艦船」という。)は該当しない。

四について

米原子力艦船の上空の飛行についての制限の根拠となる法令はないが、地上又は水上の人又は物件の安全及び航空機の安全を確保するための措置として、航空法第八十一条は、一定高度以下の高度での飛行を原則禁止している。


'2006-10-28|HOME|