原子力空母の火災に想う

東太平洋上を航行中の原子力空母ジョージ・ワシントンが艦内火災を起こした。艦尾の空調・冷凍、補助ボイラー室の周辺から出火した。 (米海軍発表)
艦内を通っているケーブルを通じて火が広がったという。

いくつかの写真が米軍の公式ページ、NAVY NewsStand に出ているが、一番衝撃的だったのは下に転載した写真だ。
飛行甲板と格納甲板をつなぐエレベーターの近くまで出てきた煙の出所に消火活動している。

空母は潜水艦などと違って外気にさらされているスペースが大きい。空母を横から見ると、エレベーターの昇降口がポッカリ口をあけて いるのが見える。
この中に、燃料を積んだヘリが飛び込んだら、炎がケーブルを伝わって艦内に広がることを示している。

原子力空母が横須賀の12号バースに停泊していても、日本政府は米海軍や海自のヘリポートの使用をやめさせる気はない。原発と同じ 原子炉の半径1.5キロ以内にヘリポートを作るに等しいことが横須賀で起ころうとしている。
大型民間旅客機の墜落のおそれもある。国の原子力防災基準から見て羽田の離発着機の墜落事故が起きることを前提として対処する必要のある 場所に、原子力空母が来ようとしている。

12号バースの近傍のヘリポートを使用するとか、真上をボーイング777などの大型旅客機が毎日50機近く通過するなどということが まかり通っていては、原子力空母についての防災対策は、前提からして間違っていると言うほか無い。

今回の火災は、乗組員をそろえた任務航海の途中で起きた。緊急事態に対応する人数は揃っていたのだろう。もし原子力空母が横須賀に いるときに起きたらどうなるだろうか。乗組員の多くは艦を離れたりしていて、火災への一次対応が遅れることはあっても、早くなるこ とは考えられない。

上記の海軍発表の記事には「海上での火災は重大な結果を招く」という文言が入っている。確かにそのとおりだと思う。ただし、もっと 恐ろしいのは、原子炉にかかわる事故が起こりえないという前提のもとに、原子力艦船の母港化を進めることだ。
艦内の火災が、弾薬庫や燃料庫に広がったときに、原子炉にダメージを与えないと責任持って言い切れる人がいるのだろうか。

(RIMPEACE編集部)


原子力空母の火災で消火活動する兵士(現地時間5月22日) NAVY NewsStand より転載 


'2008-5-25|HOME|