笑止な屁理屈、国交省が語る「コース変更理由」

上空飛行制限訴訟の原告団が横須賀で記者会見して、問題にしていた民間大型ジェット機の横須賀上空通過のルートが変わったことを 明らかにした。原子力空母の上空を民間大型機が飛ぶことの危険性を国も認めたためだ、と訴えたが、国交省は神奈川新聞の取材 に対して、次のように答えた。

『国交省航空局は、米軍が管制を行う「横田空域」が9月25日、日本側に一部返還されたことに伴う変更と説明。「返還空域の通過には 横須賀沖で飛行距離を延ばし高度を上げる必要があり、大回りルートに変えた」という』(08.12.25 神奈川新聞)
大回りして高度を稼ぐために、ルートを変えた。原子力艦船の上空を通過することが危険と考えたからルートを変えたのではない、という のが国交省の言い分だ。

9月25日に横田空域の一部返還があった。それに伴い羽田出発ルートなどに変更があり、横須賀VOR/DME通過の高度が引き上げられた。 空域が返還されたのに、大阪行きの出発ルートがなぜこれまでより高いところを飛ぶことになったのかは、原子力艦船上空飛行を避けた こととは別に、今後大きな問題として取り上げる。
ここでは、「高度をあげるために本当に飛行距離を延ばしたのか、また延ばす必要があったのか」という点にしぼって見ていく。


羽田発大型ジェット機が、木更津、TAURA、横須賀VOR/DMEをたどる出発ルートの、距離・最低高度
赤が新ルート、青が旧ルート。 最低高度の単位は100フィート。距離はノーティカル・マイル(NM、海里)

上の図を見れば、TAURA point の位置を約4キロ南に下げたのが、「飛行距離を延ばし高度を上げる」ためではないことは一目瞭然 だ。TAURA point から急上昇するのに、延ばした距離が0.3海里、つまり540メートルほどだ。上昇角度の減にほとんど寄与していない ことは明らかだ。
もし上昇角度を抑えるのなら、木更津から上昇率を変えねばならないが、その場合、TAURA point の位置をずらす必要はまったく なくなる。

要するに、TAURA point の位置を約4キロ南に下げたのは、高度を稼ぐためではなかったことになる。やはり、横須賀基地上空を 通過することを避けたのであり、原子力空母などの上空を飛行することの危険性を国も認識していたことに他ならない。

(RIMPEACE編集部)


'2008-12-26|HOME|