GW、工事切り上げ出港か

危険廃棄物運搬船チャーター計画、キャンセル


甲板の片づけが進む空母ジョージ・ワシントン。手前はシャイロー、その右奥にラッセン(2011.3.18 13時 撮影) 

原子力空母ジョージ・ワシントン(GW)の定期修理で出る危険廃棄物(放射性廃棄物のこと)を、4月10日過ぎに横須賀基地から米本国 ピュージェット・サウンドに送るための貨物船チャーターが、発注者のMSCによってキャンセルされた。
応募を要求するRFPが3月7日付けで出されて、そのキャンセルは3月17日付けだった。

GWがヨコスカに配備されてから毎年行われた横須賀での定期修理。過去2回とも修理の終了時期に、放射性廃棄物を横須賀から送り出す 貨物船がチャーターされ、今回もチャーター手続きに入ったところだった。
突然のキャンセルは、空母GWが少なくとも4月10日過ぎまで横須賀に留まっておれない理由が生じたからだ。

現在、本州北部の近海に多数の米艦船が展開して、東日本大震災の被災者を救援する "Operation TOMODACHI"(トモダチ作戦)が行われてい る。この作戦にGWも参加をするというのなら、チャーター計画のキャンセルはもっと早い時期に行われなければならない。
朝鮮半島やリビアに関連する軍事行動をGWが行うためだとしたら、厚木にいる艦載機がFCLPの実施に走るはずだが、艦載機には その動きはない。
唯一考えられるのが、13日から17日の間に事態が大きく悪化した福島第一原発の破局的な事態に備え、関東地方に住む米国人の緊急 退避のNCE(Non Combatant Evacuation)作戦に、GWの飛行甲板とその収容力を使うことだ。

3月18日昼過ぎのGWの飛行甲板は、片づけが進んでいた。近日中に海に出る可能性が強い。
巡洋艦シャイローは海上探索レーダーをまわし、煙突から白煙を上げ、すぐにでも出港しそうだった。残る1隻の常駐艦ラッセンにも2基 の大型クレーンが取り付き、修理を切り上げている。

被災者救難のために米軍が行っている作戦で使用する艦船やヘリなどを使えば、そのまま非戦闘員退避作戦を行うことが出来る。 「トモダチ作戦」から、いわば「ミウチ作戦」にスムーズに移行できるのだ。
修理を終えたばかりでその後の訓練を行なっていない 空母でも、退避者を収容して運ぶことは出来る。GWは、短い試験航海のあといったん横須賀に戻り、出港命令を待つと推定される。
GWを巡るあわただしい動きは、福島第一原発の状況の悪化と連動している、とみるのが一番素直な見方だろう。

軍隊はさまざまな危機に備えて、準備を進めるものだ。
空母が緊急出港の動きを見せることが、福島第一原発で大規模な放射能の放出が起きることに直結する、とまでは言えない。
それでも、空母の修理スケジュールを変えて、大変な費用をかけて空母を動かすのは、それだけNCE作戦を実行する可能性がここ数日で 強まったことの証ではないか。

(RIMPEACE編集部)


2011-3-18|HOME|