公開されない「武器等防護」の実態−急速に進んだ日米軍事一体化(1)

 2015年9月に成立し翌16年3月に施行された安保法制。その中に、自衛隊法95条の2として新設された「武器等防護」がある。「合衆国軍隊等からの要請」があり、「防衛大臣が認めた時」 に、自衛隊が米軍等の艦艇や航空機を警護し、「事態に応じ合理的に必要と判断される限度で武器を使用することができる」というものである。

 最初の適用は施行1年後の2017年5月2日、アメリカ軍の貨物弾薬補給艦リチャード・E・バード(全長210m、満載排水量40,000トン)を、ヘリ空母「いずも」(全長248m、満載排水量 26,000トン)が、横須賀から九州までの太平洋側の海域で警護するというものであった。
「太平洋側」を選んだのは、米艦防護はそんなに危険なものじゃありません、と印象づけるねらいからだったのだろうか。しかし、マスコミは報道したが、防衛省の公式発表は何もなかっ た。その状態が現在まで続いている。

2017年は朝鮮(DPRK)が弾道ミサイルを連続して発射し、米軍の空母やイージス艦と自衛隊艦艇との「共同巡航訓練」がかつてないほどに増加した。また、この年の3月から航空自衛隊の戦闘 機が、米軍の爆撃機と「編隊飛行」をする日米共同訓練がはじまった。
しかし、2017年はまだ「調整期」で、「武器等防護」の発動は「共同訓練中」の艦艇1回、航空機1回にとどまった。

以来、2年余が経過し発動回数は増加した。しかし、防衛省から発表されているのは年間の発動回数と、艦艇か航空機かの区別、情報収集・警戒監視活動中か共同訓練中かの区別のみで ある。

●「武器等防護」件数 防衛省が毎年2月に前年分をまとめて発表
2018年 艦艇6回(情報収集・警戒監視活動中 3回、共同訓練中 3回)
航空機10回(共同訓練中のみ)
2019年 艦艇5回(情報収集・警戒監視活動中 4回、共同訓練中 1回)
航空機9回(共同訓練中のみ)

 これだけでは、自衛隊と米軍がどこでどんな軍事行動をやっているのか、まったくわからない。日本海なのか東シナ海なのか太平洋なのか、海自は何隻出動したのか、警護の相手は空母 なのか、イージス艦なのか、補給艦なのか。
私たち市民はもちろんのこと、国会にも報告されない。「武器を使用」するかも知れない任務なのに、どこで、どういう状況なので警護すると判断したのか、その判断は適切であったのか 検証もされない。

安保法制の施行から4年余り、日米共同訓練は増加し、実任務での共同作戦も増加した。海と空で日米軍事一体化は急速に進んだ。

(木元 茂夫)


20.8.15 フィリピン海を航行する空母レーガンと「いかづち」(DD107)(US NAVY CTF-70 の広報ページより)


2020-9-13|HOME|