公開されない「武器等防護」の実態−急速に進んだ日米軍事一体化(2)

海自、活動海域拡大と米艦防護
 海自と米軍の艦艇が行っている情報収集・警戒活動は、朝鮮の領海に接近した海域や、排他的経済水域の日中中間線を越えた海域、中国海軍の艦隊基地に近い海域で活動すれば、相手の 対抗策を引き出してしまうだろう。
アメリカ海軍のHP等に掲載される写真を見ていると、海自艦艇の活動海域は日本海から東シナ海に、さらに南シナ海へとシフトしつつある。

 具体例をいくつかあげておきたい。
2019年8月19日に各紙が「中国機海自艦標的に訓練」という見出しで「複数の日本政府関係者が証言した」として、「日中中間線の中国側にあるガス田周辺海域で」「複数の中国軍のJH7 戦闘爆撃機が、海自護衛艦2隻に対艦ミサイルの射程範囲まで接近」「中国機は射撃管制レーダーの「ロックオン」をしなかった」という記事を掲載した。
ここまでは日本の防空識別圏内に入ってきた軍用機に空自がスクランブルをかけるのと変わらない。

ところが、「中国機が発する電波情報を分析した結果、政府は空対艦の攻撃訓練だったと判断した」である。事実ではなく「判断」である。怖い話だ。
「電波情報」が公開されていないから、政府の判断が正しいかどうか検証できない。

 もう一つは、2020年3月30日夜間のミサイル護衛艦「しまかぜ」と中国漁船の衝突事故である。
防衛省・統合幕僚監部はこの事故を、「東シナ海の公海(屋久島の西方650km)」と発表した。しかし、中国側から見れば、浙江省寧波市の中国東海艦隊の舟山基地の東方100kmということに なる。

さらに8月15日から17日まで横須賀配備のイージス駆逐艦「マスティン」(DDG89)と海自の「すずつき」(DD117・佐世保)が東シナ海で共同訓練を行い、翌18日に「マスティン」は台湾海峡 を通過した。
19日に中国政府は通過に抗議している。となれば、米艦防護は、発動海域によっては中国海軍との衝突を引き起こしかねない。

空自、大規模化する米爆撃機の警護飛行
 一方、航空機の警護は「共同訓練中」に限られている。

2018年を見ると警護回数は10回なのに、公開されている訓練は4回、2019年は警護回数9回なのに、米軍との共同訓練の公開はなく、オーストラリア軍との共同訓練が1回公開されているだ け。

2018年6月、2019年2月、6月とトランプ政権は歴史的な米朝首脳会談を3回開催した。安倍内閣は政治的な配慮から日米共同訓練の公開を控えたのだろうか。しかし、実際には警護回数以上 の共同訓練が行われているのに、私たちは知らされなかったということである。

安倍内閣は2020年になって姿勢を転換し、1月から8月までに10回の訓練を公開したが、もっと訓練回数は多いようだ。

 空自と米空軍の共同訓練、2017年3月、米軍のB1爆撃機2機と自衛隊のF15戦闘機2機ではじまったこの訓練は、2020年2月には、自衛隊機45機が出動する大規模訓練となった。
自衛隊戦闘機が16機前後出動するのが基本となり、8月18日の訓練ではこれまでの「編隊航法訓練」に、「防空戦闘訓練」が加わった。
これも、防空識別圏の朝鮮よりの空域でやっているのなら、極めて刺激的で攻撃的な訓練になる。

 米軍の艦艇と航空機の警護がはじまって3年あまり。実施地域は拡大し、大規模なものになった。日米軍事一体化は、かなり危険な方向に急速に拡大し続けている。
しかも、件数のみしか公表されていないのである。日米軍事行動の実態は国会にも、私たち市民にも、正確に公開され、検証にさらされなければならない。

(木元 茂夫)


20.8.17 東シナ海を航行するマスティン(DDG89)と「すずつき」(DDG117)(US NAVY フォト・ギャラリーより)


2020-9-13|HOME|