海賊対処の「おおなみ」、中東情報収集の「むらさめ」、マラバール2020に参加


インド洋でのマラバール2020演習で実弾砲撃訓練を行う「おおなみ」


インド海軍補給艦シャクティから燃料補給を受ける「おおなみ」


オーストラリア海軍フリゲート・バララットと並走する「おおなみ」(海幕の広報ページより)

11月24日、海賊対処第36次隊として、ソマリア沖やアデン湾で活動してきた護衛艦「おおなみ」が215日間という長い航海を終えて帰港した。

第37次隊の「ありあけ」が佐世保を出港したのは9月13日、9月末にはアデン湾に到着したはず。常識的に考えれば、「おおなみ」は10月後半には帰国できたはずである。

それが215日と海賊対部隊の長期航海記録を10日も更新することになったのは、11月3日から6日までインド洋のベンガル湾で実施された日米印豪共同訓練マラバール2020への参加という、 まったく別の任務が加わったからだ。新型コロナのため、寄港はしても上陸できない状況の中で7ケ月の任務は、乗組員にとってあまりに過酷である。

マラバール2020は異例の2部構成で、前段は11月3日から6日までインド洋東方海空域、後段は11月17日から20日までアラビア海北部海空域で行うと海自は発表した。

前段の訓練に、アメリカ海軍は横須賀配備のイージス駆逐艦「ジョン・S・マケイン」を、オーストラリア海軍はフリゲート艦パララットを、インド海軍は駆逐艦、フリゲート艦、潜水 艦、補給艦の4隻を参加させた。

訓練項目は、対潜戦、対空戦、対水上射撃、対空射撃、洋上補給となっており、4ケ国連合艦隊の戦闘訓練である。「おおなみ」は127ミリ砲の射撃訓練や、インド海軍補給艦からの洋上 補給訓練を行った。


アラビア海でのマラバール2020演習で、米空母ニミッツ、印空母ヴィクラマディチャ、豪フリゲート・バララットなどと密集して進む「むらさめ」
(海幕の広報ページより)

後段の訓練には、アメリカ海軍は原子力空母ニミッツ、イージス巡洋艦プリンストン、同駆逐艦ステレット、インド海軍は空母ヴィクラマディチャ(満載排水量45,500トン、全長284m、 乗組員1,680名、艦載機固定翼21機、ヘリ約14機)と3隻の水上戦闘艦、潜水艦と補給艦を、オーストラリア海軍は前段と同じパララットを、海自は情報収集任務で中東に派遣中の 「むらさめ」を17日の1日だけ、参加させた。

米印豪の艦隊は19日までアラビア海で訓練を続け、20日にインド洋に移動した。空母ニミッツは25日にはアラビア海にもどり、12月6日現在、同海域で活動中である。

この訓練、空母ニミッツの航行スケジュールに合わせて組まれたのか、という気もする。通常、インド洋で行われることが多いマラバール演習がアラビア湾にまで、訓練海域を拡大し たことに危惧を感じる。

「むらさめ」の参加を1日だけにとどめたのは、「中東での情報集のための日本独自の派遣」という建前を崩さないためか。
今後、アメリカ海軍との共同訓練を繰り返せば、「独自の派遣」は崩れ去ってしまう。「むらさめ」の今後の動向は要注意である。

(木元 茂夫)


215日の航海で横須賀に帰港した「おおなみ」と、出迎える海自高官たちの車(2020.11.24 木元 撮影)


吉倉桟橋で「おおなみ」から降ろされたミサイルを運ぶトラック(12.8 木元 撮影)


2020-12-11|HOME|