海自練習艦隊、南シナ海で原子力空母レーガン、イージス艦マスティンと共同訓練


南シナ海中心の練習航海(海自の発表資料より)


「ロナルド・レーガンを見送る実習幹部」(防衛省ホームページより)

 海自は毎年、幹部候補生過程の修了者約190名をのせて、遠洋練習航海を行っている。航海日程は160日前後と長期間、訪問国はアメリカ合衆国を含む南北アメリカ、ヨーロッパ、アフリ カ、そしてアジアで年度により異なる。以前は「諸外国を訪問させることにより、派遣員の国際感覚の涵養に資する」とあっさりした「目的」だったが、2018年から「外国の軍事施設、 教育訓練状況等を研修させる」が加えられた。練習艦「かしま」(TV3508)は全長143m、満載排水量5400トン、76ミリ砲と魚雷を搭載、「しまゆき」(TV3513)は全長137m、満載排水量3050 トン、対艦、対空、対潜ミサイル、魚雷と通常の護衛艦の武器をすべて搭載している。

 今年は新型コロナの影響から、航海期間を分割して実施している。前期は6月9日から7月22日までの44日間。訪問予定国はなく、シンガポールで補給を実施するとある。

 練習艦隊は6月9日、呉基地を出港、一方の原子力空母レーガンは、奇しくも同じ6月9日に横須賀を出港した。6月22日に南シナ海でシンガポール海軍のフリゲート艦と「親善訓練」、 続いて23日にはアメリカ海軍の沿海域戦闘艦ガブリエルギフォースと共同訓練を実施、その後、マラッカ海峡を北上してインド洋へ出て27日、インド海軍の駆逐艦等と「親善訓練」を実施 した。

練習艦隊はインドネシアのジャワ島とスマトラ島の間のスンダ海峡を抜けて南シナ海にもどった。海自の発表した日程によれば7月5日と6日は、シンガポールのチャンギ港に入港して補給 の予定になっている。

一方の空母レーガンは、横須賀出港後、フィリピン海で訓練した後、空母ニミッツとともに7月3日にフィリピンの首都マニラのあるルソン島とサマール島の間のサンベルナルジノ海峡を抜 けて、4日南シナ海に入った。随伴艦としてイージス巡洋艦アンティータム(CG54)と同駆逐艦マスティン(DDG89)が同行している。南シナ海にはいってからも艦載機の離発着訓練を繰り返し ていた。

 そして、7月7日。空母レーガンとイージス駆逐艦マスティンと、海自練習艦隊は共同訓練を行った。海自は「戦術運動、通信訓練」とし、アメリカ海軍は“PASSEX”(パセックス−2国の 海軍間で行う戦争や人道的救済にそなえた通信、協力訓練)と発表している。

 この日、1937年7月7日は、北京郊外の盧溝橋で駐屯していた日本軍と中国軍が衝突し日中全面戦争につながっていった盧溝橋事件から83周年の日であった。中国海軍は7月1日から5日ま で西沙諸島で軍事演習を、東シナ海でも臨検と拿捕の訓練をおこなった。米中間の対立はまた一歩深まった。

 2回の日米共同訓練を組み込んだ今回の練習航海は、アメリカの軍事戦略に組み込まれていくという極めて危険な要素を含んでいる。

(木元 茂夫)


訓練中の沿海域戦闘艦ガブリエルギフォースとかしま、しまゆき(USINDOPACOMのNEWSページより)


2020-7-10|HOME|