8月から9月、連続した日米英蘭の共同訓練 その1

空母クイーンエリザベスは7月27日にマラッカ海峡を通過して南シナ海に入った。ここで中国海軍の潜水艦に追尾されたと英紙は報道している。8月6日にグアム島に寄港し、14日頃出港 した。以後、東アジアを舞台に、空母QEが参加したものも、参加しなかったものも含めて、9月9日まで一連の日米、日米英蘭の共同訓練が繰り返された。これに対抗して中国軍の動きも 活発になった。詳細は一覧表(その3参照)に示したとおりである。主な動きを整理してみる。


洋上給油を受ける英空母クイーン・エリザベス(21.7.29 NAVY.MIL より)

米軍ラージ・スケール演習
 8月20日に米軍主催の「大規模広域訓練」(LSGE21)が沖縄東方海域で行われ、空母QEと強襲揚陸艦アメリカが参加した。2隻ともF-35Bステルス戦闘機を搭載しており、相互離発着訓練を 実施している。24日には海自のヘリ空母「いせ」と護衛艦「あさひ」も参加した。陸自の水陸両用戦部隊である水陸機動団も参加しているが、人数は公表されていない。ヘリ空母「いせ」 の甲板にCH-47JA輸送ヘリとAH-64D対戦車ヘリ各1機を搭載した写真が公開されている。これは上陸作戦の態勢であるが、実施したかどうかは、残念ながら確認できなかった。

パシフィック・クラウン演習 TとU
 翌25日からは「パシフィック・クラウン」と名付けられた日米英蘭の共同訓練が4回連続して行われた。
1回目は8月25日〜26日、訓練内容は通信訓練とされている。この両日、中国軍は情報収集機などを訓練海域である沖縄南方上空に派遣している。
2回目は27日〜28日、訓練内容は「各種戦術訓練」とあるだけで詳細は不明。26日には大型補給艦「おうみ」と米沿岸警備隊の巡視船マンローの洋上補給訓練(ILEX21)も実施され、翌27 日、マンローはイージス駆逐艦キッドとともに台湾海峡を通過した。この訓練は政治的には非常に微妙である。台湾海峡を通過する、あるいは台湾周辺で作戦行動する艦船に、海自が補給 することが日常化すれば、中国から見れば、日米は一体となって行動していると見られるだろう。

日本海で英米韓の共同訓練
8月26日、原子力空母カールビンソンと空母クイーンエリザベスの艦載機がフィリピン海で空中給油訓練を実施。カールビンソンは28日に横須賀に寄港、31日に出港した。
8月30日から9月01日まで、日本海で英米韓の共同訓練が実施された。空母QE、イージス駆逐艦ザ・サリバンズが参加。韓国海軍は強襲揚陸艦「独島」、イージス駆逐艦「柳成龍」などを 参加させた。
韓国の「中央日報」(電子版8月30日付)は、「韓国国防部は人道主義的支援と災害救護中心の演習としているが、参加戦力の規模が相当なものという点で演習の様相は多様だと予想される」 と批判的に紹介し、朝鮮(DPRK)の外務省が「英国がアジア太平洋地域に軍艦まで動員して情勢を激化させようとしている。英国空母戦団の朝鮮半島域内進入計画は挑発」と反発したと報道 している。
海自はこの訓練に参加しなかったものの、航空自衛隊が8月31日に日米共同訓練を「日本海、東シナ海で及び沖縄周辺海域」で実施した。参加したのは、米軍のB-52戦略爆撃機1機、空自は 北から千歳、百里、小松、築城、新田原、那覇のF-15戦闘機及びF-2戦闘攻撃機計19機である。海上に空母とイージス艦、上空にB-52では、「武力による威嚇」ではないのか。
しかも、この訓練では1995年の安保関連法で追加された、自衛隊法第95条の2による「米艦艇・航空機の防護」が発動された可能性が高い。(その2に続く)

(木元 茂夫)


2021-9-19|HOME|